遅くなりましたが、報告です。
4月14日、岡山県学習協主催の「2013哲学がっこう」が
行われ、20名が参加しました。
講師は、関西勤労者教育協会副会長の中田進さん。
午前中は「事実から出発する唯物論」、
午後は「変化をとらえる弁証法」ということで、
合計4時間半にわたる講義と、
グループ感想交流を行いました。
中田進さんの、ユーモアをまじえた、
そしてわかりやすい講義に、参加者は聞き入りました。
哲学は人間や社会の根本をつかむ学問であり、
すべてのベースになります。その魅力とあわせて、
参加者のそれぞれの悩みや問題関心にかみあう
かたちでの哲学講義は、圧巻でした。
中田進さんの講義の骨子と、参加者の感想文を掲載します。
【中田進さんの講義の骨子】
事実から出発する唯物論
一 科学的にとらえるには・・事実を
1 人間とは・・知性・労働・社会性・・集団労働で言葉を獲得、
言葉の力で考える。理性の力。
言葉・・谷川俊太郎の詩「言葉は」。
労働のなかで・・道具の製作 「かたち」へのこだわり。
美的感情を獲得。感性の力理性の力・・科学
感性の力・・芸術。もちろんどちらも理性・感性がとけあって・・。
歴史のなかで蓄積
2 認識とは
① 意識は脳の働きに依存。その働きは外界の反映。感覚器官をとおして。
認識の内容と外界の関係・・一致すれば真理。「ありのままにみる」
一致しているかどうかの検証は・・実験実践。
② 認識に与える条件・・反映のプロセスが・・何をどのように
誤りの原因・・全体でなく部分、表面、一時的。
主観的。思い込み。早とちり・独断
社会的立場が・・支配するものされるもの。意図的に誤った情報を。
ゆがめる。隠す。部分の強調。
利害がからみ。巨大マスコミの「力」
雇うもの雇われるもの。組織のリーダー。その一員。
二 唯物論の哲学とは
1 真実に近づく努力
事実から出発・直接の認識。直接見た・聞いた・・
しかし間接の場合・・情報の発信を確かめる努力が
広く深く
認識の目的は・・なんのために、なにを、どのように
変革の立場に立ち・・大きな広い精神。
2 哲学の根本問題
物質と意識の関係をめぐって……世界の根源はなにか
物質が根源、意識は二次的………唯物論
「物質が大切」と誤解してはダメ
意識が根源、物質は二次的………観念論
唯物論は科学と一致。
唯物論は意識は外界・物質の反映とみる立場。
実践のうえで意識の持つ能動性を重視。
だからこそ内容を確かめる。
観念論に陥る原因。意識の能動性を誇張。
主観的観念論。客観的観念論。人間の自由とは。
必然性の認識が自由の前提。学ぶことは自由への道
変化をとらえる弁証法
一 科学的にとらえるには・・変化を・・
1 世界のあり方をどうとらえるか
連関、運動、発展……生きた姿をとらえる……展望。
バラバラ、静止、くりかえし……固定的にみる・絶望
2 どんなものごともすべてつながりの中にある
自然のなかのつながり・・宇宙・地球。地球上の生物
社会のなかのつながり・・資本主義のもとで。
雇用関係・経済関係。政治的関係
3 つながりが相互作用を。そこから運動・変化
移り変わりの過程。境界はない。
4 運動のなかで新しいものが生まれてくる……発展。
発展の原動力としての「矛盾」。
発展の姿は・・量的変化と質的変化。
古いもを捨て新しいものへ。
5 なぜ誤ったものの見方が
バラバラ、静止、くりかえし・・と見てしまうのは
原因【その1】……ものごとをくわしく知ろうとすると。専門バカ。
自分の分野しか。部分をしっかり見る必要が。
止めて、ばらして、分けて。認識過程に原因が。
たしかに部分的に、相対的に、一時的に静止。
【その2】……私たちを支配している階級がひろげるから。
その方が都合がよい。世の中なんか変わらない。
なるようにしかならん。人間なんてしょせんバラバラ。
がんばってもいっしょ。結局はくりかえし。仕方がないの。
二 弁証法の哲学
1 古代ギリシャで誕生・・弁証法
2 近代科学の力・・分析。「木を見て森をみない」機械論に
3 分析ししかも連関・運動・発展・・弁証法に
4 どうすれば弁証法的にとらえることができるか
目先だけをみない、もう少し先をみる、そして先を読む。
実践上の焦り。困難な局面
「木を見て森を見ない」のではなく、木も森も見よう。
表面だけでなく、内面をみよう。
一時的でなく、長期的にみよう。
部分だけでなく、全面をみよう。
生活も仕事も運動も……ひとの意見を謙虚にきく。
なぜ意見が違うか・・根源をみんなでとことん話し合う。
生き生き討論。民主主義こそ力……真理への道。
世の中そう簡単には変わらない。
だから・・運動の成果が見えないとき、苦しくつらい。
そのとき視野が狭く、展望・確信も揺らぐ
人間を豊かにとらえる。人が人らしく豊かに生きる。
一人ひとりの個性が。尊厳を大切に。文化を大切に。
科学的な指導力
学ぶことは認識の力を高める・・強い意志・熱い情熱・
不屈の実践力・仲間への愛
めざせ! 哲学活動家!
【参加者の感想を以下】
◆事実をありのままに見ることは、結構むずかしい
事だと思っています。ゆがんだ情報が多い中、
引っぱられないようにするには、毎日、発信元を
確かめて、正確に事実をとらえること。でもこれが
本当にむずかしいです。
生活のなかで、弁証法的に考えられず、どつぼに
はまる時があります。そういう時は、何をすれば抜け
ることができるのだろうかと、考えながら聞いてい
ました。でも今日のお話を聞いて、もっとおおらかに、
まわりの人に接してゆこうと思いました。人間らしく、
たたかう。
◆社会を変えるには、ものの見方がやっぱり土台
ですね。いつも「スキルを身につける」的な学習に
違和感を覚えます。どうしたら多くの方に哲学を
学ぶことが大事だと伝えられるのか、むずかしさを
感じています。今日は皆さんの話を聞いて少し前向
きになれたかもしれません。
◆唯物論は、学習するたびに、奥が深いなと感じ
ます。そして、自分がいかに無知かということも知
れました。大人になって初めて学ぶことの楽しさを
感じています。いろんな視点で、物事が見れるように、
『学ぶ』ことで成長できたらと思います。
◆物事のまちがっていることを正すためにも、人に
社会のおかしな仕組みを気づかせるためにも、事
実を知るってことが本当に重要なのだと改めて感じた。
学習する姿勢と無知であるという自覚を大切にした
いと思います。中田先生の講義のおかげで、頭の
中が整理されました。谷川俊太郎の詩が心に響きました。
◆今日の講義で、学習する楽しさを思い出しました。
また時間をつくって参加させてもらおうと思います。
◆久しぶりの中田先生の講義! 楽しかったです!!
哲学的にものをみるのは難しいなー・・・。うっかりしてい
ると、「木」ばっかりみてしまっているなーと。哲学活動家
めざして日々がんばりまッス!!
◆哲学は変革のためにあるという先生の言葉が突き
ささりました。本当にそうですよね。評論家ではいけない。
結局私たちは自分の人生を自分で引き受けなければ
ならない。社会もそうですね。社会から逃げることはで
きない。引きうけて、変えていかなければ!