長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

自民党の改憲案「前文」比較(2005年版と2012年版)

先日、自民党の2005年版「新憲法草案」を読んで

びっくりした話は書きました。

以下に紹介する「前文」だけでも、その違いは明らかです。

 

 

2005年版は、5つの段落のうち4つまで、

書き出しの主語が「日本国民」。

全体の内容の問題はありますが、
「主権者として、ここに新しい憲法を制定する」とあり、

憲法制定主体は明確。

2012年版は、書き出しが「日本国は」「我が国は」

「日本国民は」「我々は」と、あいまいに。

憲法制定主体があいまいになっています。

 

2005年版は、「不変の価値」として

「国民主権」や「基本的人権の尊重」「平和主義」などを確認。

また、「国際協調」「国際平和」「価値観の多様性」

「自国のみならず」と、国際的な視野を一定もつ表現。

2012年版は、ほとんどそうした視点はなくなり、

日本の「固有の文化」「伝統」「郷土」「国土」を強調。

せまい一国主義におちいっています。

 

 

 

自民党 新憲法草案(2005年10月28日発表)

 

【前文】

日本国民は、自らの意思と決意に基づき、主権者として、ここに新しい憲法を制定する。

 象徴天皇制は、これを維持する。また、国民主権と民主主義、自由主義と基本的人権の尊重及び平和主義と国際協調主義の基本原則は、不変の価値として継承する。

 日本国民は、帰属する国や社会を愛情と責任感と気概をもって自ら支え守る責務を共有し、自由かつ公正で活力ある社会の発展と国民福祉の充実を図り、教育の振興と文化の創造及び地方自治の発展を重視する。

 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に願い、他国とともにその実現のため、協力し合う。国際社会において、価値観の多様性を認めつつ、圧政や人権侵害を根絶させるため、不断の努力を行う。

 日本国民は、自然との共生を信条に、自国のみならずかけがえのない地球の環境を守るため、力を尽くす。

 

 

自民党 日本国憲法改正草案(2012年4月27日発表)

 

【前文】

日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家であって、国民主権の下、立法、行政及び司法の 三権分立に基づいて統治される。

我が国は、先の大戦による荒廃や幾多の大災害を乗り越えて発展し、今や国際社会において重要な地位を占めており、平和主義の下、諸外国との友好関係を増進し、世界の平和と繁栄に貢献する。

日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り、基本的人権を尊重するとともに、和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する。

我々は、自由と規律を重んじ、美しい国土と自然環境を守りつつ、教育や科学技術を振興し、活力ある経済活動を通じて国を成長させる。

日本国民は、良き伝統と我々の国家を末永く子孫に継承するため、ここに、この憲法を制定する。

 

 

 

*こんどの2012年版「日本国憲法改正草案」は、その前文に、

自民党の憲法観・国家観が凝縮されて表現されています。

そして、それは、2005年版からも大きく後退し、

恐るべき復古調の表現、憲法観の大転換の色彩をおびています。

こうした内容をしっかりと広げていく必要があると思います。