きのう(21日)は、第18期倉敷労働学校の
プレ企画があり、10名が参加しました。
講演がほんとうに素晴らしかっただけに、参加が少なくて残念無念・・・。
第18期倉敷労働学校は、10月に開校するべく、
取り組みをすすめていきます。
倉敷近辺のみなさんのご協力を、ぜひともよろしくお願いいたします。
さて、きのうの学びは、
「自分の不安と向きあって―働くこと・学ぶこと」というテーマで、
沢山美果子さん(岡山大学大学院客員研究員)に講師をしていただきました。
わたし、昨年の岡山労働学校の同じテーマの講演も
聞いていて、2回目だったんですが、
やっぱり素晴らしい。ほんとうに素敵な講演内容でした。
前回お話されなかったことも、いくつかありましたね。
(『天空の城ラピュタ』のパズーのこととか)
(朝井リョウさんの『何者』のこととか)
沢山さんご自身の生き方や、学生さんたちとのなかで
培ってきた包容力やものの見方が、聞いている参加者
ひとりひとりの現在と未来にエールとなって響いたと思います。
(感想文をご覧下さい)
講演後の感想交流も、それぞれの受けとめや
感動が伝わる内容で、とても充実の時間でした。
参加されたみなさん、ありがとうございました。
以下、講演の概要です。
・かけがえのない自分の人生。だから、今を大事に。
・長いスパンで考えることで、柔軟な視点と心の余裕を持って。
1、学生たちの不安と、その背景
・学生レポートに見る最近の一つの特徴
就職や働くことへの不安感の早期化、強まり、格差(=将来の見えなさ)
・不安の社会的背景(森岡孝二『就職とは何か』岩波新書)
非正社員比率の増加
就職率の低下(新卒採用に失敗→フリーターへという不安)
「就活」をめぐる不安
(「就活のかたち 1 疲弊する学生たち」『朝日新聞』2012.5.17)
・希望はどこにあるのか?
朝井リョウ(1989年生)『何者』 「痛くてカッコ悪い自分」とどう向きあうか
(『赤旗』日曜版 2013年5月12日)
学ぶとは? 学ぶことと働くことの密接なつながり
2、働くこと・学ぶこと
・岡山大学での講義の試み:「ジェンダーと生きることー働く未来にむけて」
⇑
1997年「男と女の過去と未来」:就職氷河期(→ロストジェネレーション)
→ニート・フリーター・格差問題
2001年~2007年「ジェンダーと働くこと」←生きることの課題が「働くこと」に集中
→『働くこととジェンダー』(講義録) 2007年
学生へのメッセージ「あした働く君たちへ」
出来るだけ広い視野で、出来るだけ長いスパンで、
現実の問題を歴史的に考える
前向きに多面的に
「フリーターもありなのだ」
身近な人間関係をみつめる→働く場、働き方、働く意味を考え直す
・働くことは生きること
働き方は生き方の問題
安野モヨコ『働きマン』の多様な働き方
→働き方に悩む→自分はどう生きたいか
⇓
2008年~「ジェンダーと生きること」
これからの人生60年を生き抜く力を養う
→じっくり考える、原則的に考え物事の本質をつかむ
3、働くこと・学ぶこと―私の場合
・選びながら生きる:生きること=選択の積み重ね
26年目の選択:正社員からフリーターへ
自由とは「本人が価値をおく理由のある生を生きられる」こと
(アマルティア・セン/後藤玲子『福祉と正義』7頁)
・学生たちから学んだこと:原点としての20代
「何になるか」ではなく「何をしたいか」
←マイナスをプラスにできる可能性
・仕事も家庭も子育ても:あたり前の人間らしい生き方を求めて
←自信のなさがバネに
→自立のとらえ直し(宮川ひろ『おかあさんのつうしんぼ』1979年)
・自分のなかの違和感や迷い、居心地の悪さ、正当な不安感を問いに
→問う主体は自分自身、大事なのは考え続けるプロセス
→「生きること」を主体的に選択する力に繋がるのでは?
おわりに
・仲間とのネットワークを大切に(自立≠孤立)
→「助けを求める力をつけよう」
・あがきながら、他人との関係の中で、理想に自分に近づく
(「みんなそれをわかっているから、痛くてカッコ悪くてたって
がんばるんだよ」(『何者』)
以下、参加者の感想文です。
◆講演のタイトルでは想像できない、引きこまれるお話でした。
こんなに引きこまれるのは何でだろうと理由をさぐりながら
必死に「言葉」を書き込む100分間でした。頑張りすぎる自分、
周りが見えなくなってしまう自分、思いあがってしまっている自分、
それらも全部問いなおしながら、まわりみちをたくさんしながら
模索していくその生き方、かかった時間、まるまる包みこんでくれる、
そんな姿勢が心に響いたんだと思います。自分は、しっかりと
話のきける人になりたいです。
◆仕事を探している自分にとって「働くことは生きること」「何に
なるかより何をしたいか」などタイムリーな話が多かった。
◆以前も沢山さんの同じテーマの講義をきいたのですが、聞く
たびにまた新たな発見がありました。「ダメな自分と向きあうと
落ち込むけど、ひとりで何とかしようとするのではなく、仲間と
いっしょに助けをかりながら成長していく」という話は、とても
元気づけられました。私もひとりであっぷあっぷするので・・・。
「助けて」と言うことを大切にしたいです。
◆働くことをしたいことだとは思えず、したいことのために働い
ていると思っていました。でも学生の時勉強することが、あまり
嫌いではなかったと思い出しました。仕事のために勉強する
のではなく、楽しみながら勉強し、仕事に生かしていきたいと
思います。
◆自分のやりたいことを深く考えていこうと思います。今までは、
仕事中心でしたが、来年定年を迎えるので、それまでいろいろ
考えたり相談したりしていきたいです。仲間を大切にしたいけど、
だんだんと考え方が違ってきてる人もいて・・・。心を広くもつこと
が必要なんでしょうか。
◆現代社会を分かりやすく解説してくださり、また、そのような
時代だからこそ人との繋がりや心の余裕を持つことの大切さを
学ぶことができてよかったです。今日から、明日からの私の
生き方に活かしていきたいと思います。貴重な講演を本当に
有難うございました。
◆沢山先生の生き方に感動しました。講演の中で印象に残った
のは、「問いに対して答えをだすまでが大切」だということ、立ち
どまって考えることが大事ですね。「何になるかではなく何をした
いか」。これは自分の仕事や生き方の中でも問い続けていきたい
と思います。同時に、いろいろな生き方や考え方を認め合い、
成長していけるような集団や社会になってほしいと願っています。
◆「不安」ということにネガティブなイメージをもっていましたが、
よく考えたり成長するために大切な感覚なんだと分かりました。
自分の就活を振り返ったとき、(沢山さんが紹介されていたような)
自分をよく見せたり、激しく競争することにとても不安で居心地が
悪く、結局就活をやめた時期がありました。ときどき、そのことに
ついて後悔したり、自分は弱すぎたのかな、と考えることがあった
のですが、講義を聞いて、やっとそのことは自分にとってやっぱり
よい選択だったな、と整理できました。子育てのお話とてもおもしろく
励まされました!! 沢山さんの体験にもとづいたお話ですーっと
心にしみました。
【追記】
今朝、事務所でメールをひらいたら、昨夜講演をしてい
ただいた沢山美果子さんからメールが届いていました。
「真面目に、悩みつつ生きている方たちの感想も聞かせて
いただき、講義を聴いてくれた学生さんが立派な社会人に
なっている姿にも出会えて、私のほうが、励まされ、新鮮な
気持ちになりました。なんだか、夜間学校のような温かい
雰囲気、良かったですね」
講師をしていただいた方から、こんなに丁寧なメールを
いただいて、ほんとうに感激です。
沢山さん、2月に『近代家族と子育て』(吉川弘文館)という
新著を出されています。まだ未読ですが、近々読んで、
この本をベースにした講座を企画したいと思っているところです。