長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

子どもにかかわる仕事、超訳マルクス

最近読み終えた本。

労働学校が始まったので、『資本論』に

くびったけ。読書ペース急減してます。

 

 

『子どもにかかわる仕事』(汐見稔幸、岩波ジュニア新書、2011年)

 

 

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診察室で、学校で、地域で、子どもたちの命や育ちに

寄り添ってきた13人の仕事観、教育観、子ども観。

 

とても励まされるし、学ぶことが多い。

大人の関わり、生き方の大事さ。

子どもたち、すてきな大人に出会ってな。

 

 

 

 

『超訳 マルクス―ブラック企業と闘った大先輩の言葉』

(紙屋高雪訳/加門啓子イラスト、かもがわ出版、2013年10月)

 

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「リンちゃん、こんにちは!

大統領に再選されたって? おまえをまた選んだ

アメリカ人ってスゲエと思う。おめでとう!」

 

これ、リンカーンへの、

マルクスからの手紙の書き出だし。

 

精訳を読むと、

「拝啓 私たちは、あなたが大多数で再選された

ことについて、アメリカ人民にお祝いを述べます」

である。

どこにも、「こんにちは!」はない。
(あ、拝啓が、こんにちは、か)

 

でも、それでいいのである。

おもしろいので一気に読んだ。

 

紙屋さんが「超訳」したのは、

マルクスの5つの文章で、

『インタナショナル』(不破哲三編・解説、新日本出版社)

という本にすべて載っているので、じっさいの訳と、

紙屋訳を読み比べてみると、よりおもしろいだろう。

 

マルクスの言葉は、やっぱり難しい、と思う。

ぼくみたいにマルクスに日常的に親しんでいる

人間でも、複雑な言い回しや当時の社会状況などへの

知識不足があって、なかなかとっつきにくい。

 

そこで、この紙屋訳である。

まあ、好き嫌い分かれる訳だとは思うけど、

「ここまでくだけちゃえるんだ」と

喝采を送りたい気分である。パチパチパチだ。

そして、日本の「働いているおまえら」を

まさに念頭においた内容になっている。

ぜひ手にとってほしい。

 

ところで、

「くだける」というのは、とても難しいのだ。

「くだけた」結果、もとの文章のポイントや熱が

伝わらない、ということはよくある。

内容の正確さを損なわず、

「わかりやすく言い換える」

「要点をひとことで言っちゃう」

というのは、高い水準の対象理解と、

「センス良い、くだけよう」をつくりだす

感性が必要だ。

 

豊かな表現を紡ぎだすには、

そのものへの深く愛情のこもった

「認識」が必要だと、改めて思う。

 

「さすが紙屋さん」と、

何回も読みながらうなったり、

「ぷっ」と笑ったりしながら、本書を読んだ。

 

ぼくも講義などで、

「別の言葉で言うと・・・」

「ひらたく言うと・・・」

「ヒトコトで言うならば・・・」

と、できるだけ、自分の言葉で語るように

心がけているし、そのことをいつも考えている。

 

だから、マルクスの「超訳」はすごく

刺激的だった。

 

やっぱ、表現するって、楽しいな。

人に伝える営みって、おもしろいな。