12日(木)の夜は、
第86期岡山労働学校「超入門! 資本論教室」の
第10講義(最終講義)でした。18名となかなかの参加者。
今期も、学ぶ意欲のある受講生のみなさんに支えられての
労働学校でした。
さて、最後の講義のテーマは、
「労働者の団結の意味」。
マルクスは誰のために
『資本論』を書き、なにを伝えたかったのか。
そんなことも話をしてみました。
以下、概要です。
はじめに:あらためて、『資本論』は誰のために書かれたのか
一。労働者のたたかいの意味―労働組合の役割
1。資本の拡大追求(搾取強化)にたいして団結の力で対抗
「万国の労働者、団結せよ!!」…とマルクスは言ったが
◇団結するとは・・・ひとつになること、手をつなぐこと
*でも、労働者は違いがいっぱい。というか違いだらけ(とくに日本)。
・民間と公務、正規と非正規(さらに形態も細分)、大企業と中小企業、
ブルーカラーとホワイトカラー、資格のあるなし、男性と女性、
賃金、職種も仕事内容も。
・違いは目につきやすい(分断を仕組みやすい)。共通点は見えにくい。
*ひとつひとつの具体的な「違い」を取り除いていくと…
・最後に残るのは、「自分の労働力しか売るものがない」という労働者の「立場」
◇共通性をもとに、つながる。
*労働者にとっての「共通性」
―自分の労働力を時間決めで売る存在(雇われ組)
*かけがえのない唯一の「売り物」
*通勤して「生産手段」のもとに出勤。タイムカードで労働時間を把握・制限。
*労働力を売り続けなければ生きていけない(40年前後)
*労働力商品は、自分の生命活動と一体。健康で安全に労働力を再生産。
*安売りNO! 酷使NO! アクシデントがあっても生きていける道YES!
◇現代日本における「労働条件・労働環境悪化」の要因
*森岡孝二『過労死は何を告発しているか』(岩波現代文庫)より
①グローバル化の進行による低価格競争、資本移動による国内産業の空洞化。
②情報通信技術の発達。時間節約、時間競争、仕事のスピードアップ。携帯や
タブレット、ノートパソコンにより個人を束縛。仕事が追いかけてくる状況。
③消費社会化。過大な広告。利便性やスピード。背景となる労働者の犠牲。
④雇用の非正規化。派遣労働の自由化。
⑤金融化。株主のための経営。短期的利益のためにリストラ・合理化。
◇労働者の立場が“ものすごく”弱くなっている日本
*資本家は、雇用する側(選ぶ側)であり、雇われる側のよりも圧倒的に
強い立場に。企業の横暴を規制するはずのルールが政治によって次々
緩和。競争圧力がもろに。労働力のバーゲンセール状態。ブッラク企業の
基盤を生んでいる。
*「働かなくても食っていける道」や、「ヒドイ働き方は拒否する道」をつくる
たたかい。ブラック企業であっても勤めざるをえない。失業給付と社会保障
の充実。競争の制限を→労働組合に入ってたたかわなければ資本の
奴隷状態。殺される。
*安倍政権の「雇用改革」は、ブラック企業大国を助長するものに。
◇労働者として生きていく覚悟(マルクスの呼びかけの核心だと思う)
*自分の労働力を大切にする
(自己責任でなく制度的・法律的・組織的に保障する)
*おなじ「宿命」を背負わされた労働者階級と生きる。団結をひろげる。
2。競争を制限させる力ー労働運動
◇労働者は数が多い
*じっさいに会社(生産手段)や社会を動かしているのは労働者
◇伝家の宝刀はストライキ…対等な交渉力の担保
*みんながいっせいに「労働力売らないぞ」。「どうだ、困るだろう」。
3。憲法が私たちに呼びかけていること
◇つくれ(団結権)・要求せよ(団体交渉権)・行動だ!(団体行動権)
*なぜ憲法28条で「労働三権」が保障されているのか。
憲法のかかげている理念や基本的人権の実現のために
必要不可欠な労働組合。その活動。特別に保障する。
*人間らしさを求める「たたかい」の主役
◇憲法28条と21条の結合―労働組合民主主義の実践
*集まる、組織を大事に、話しあう、書きあう、表現しあう!
◇憲法28条と13条の結合―かけがえのない1人ひとりの生命・自由・幸福追求
*ひとりも見捨てない職場。ひとりも見捨てない地域。ひとりも見捨てない社会へ。
4。「労働組合 その過去・現在・未来」を読む(マルクス、1866年)
◇その過去
「資本は集積された社会的力であるのに、労働者が処理できるのは、
自分の労働力だけである。したがって、資本と労働力のあいだの契
約は、けっして公正な条件にもとづいて結ばれることはありえない。そ
れは、一方の側に物質的生活手段と労働手段の所有があり、反対の
側に生きた生産力がある一社会の立場からみてさえ、公正ではありえ
ない。労働者のもつ唯一の力は、その人数である。しかし、人数の力
は不団結によって挫(くじ)かれる。労働者の不団結は、労働者自身
のあいだの避けられない競争によって生みだされ、長く維持される。
最初、労働組合は、この競争をなくすかすくなくとも制限して、せめて
たんなる奴隷よりはましな状態に労働者を引き上げるような契約条件を
たたかいとろうという労働者の自然発生的な試みから生まれた。だから、
労働組合の当面の目的は、日常の生活をみたすこと、資本のたえまな
い侵害を防止する手段となることに、限られていた。一言でいえば、賃
金と労働時間の問題に限られていた。労働組合のこのような活動は正
当であるばかりか、必要でもある。現在の生産制度がつづくかぎり、こ
の活動なしにはすますことはできない。反対に、この活動は、あらゆる
国に労働組合を結成し、それを結合することによって普遍化されなけれ
ばならない。
他方では、労働組合は、みずからそれを自覚せずに、労働者階級の
組織化の中心となってきた。それはちょうど中世の都市やコミューンが
中間階級〔ブルジョアジー〕の組織化の中心となったのと同じである。
労働組合は、資本と労働のあいだのゲリラ戦にとって必要であるとす
れば、賃労働と資本支配との制度そのものを廃止するための組織され
た道具としては、さらにいっそう重要である」
*世界で最初に資本主義が発展したイギリスでの、労働者の状態の悪化
*個人的抵抗から出発した―『盗み』と言う抵抗。犯罪として処罰。
*集団的な暴動-その典型は、機械うちこわし(ラダイト)
*ストライキの発明―集団的な仕事放棄。資本家には、これが一番痛かった。
*しかし、ストライキのときだけの団結では、効果のあるたたかいが
できないことを学び、恒常的な団結の組織、労働組合の結成に到達していく。
*1799年「団結禁止法」。ストライキと労働組合を禁止し、犯罪として
取り締まる。*それでも、イギリスの労働者は屈することはなかった。
敗北をくり返しながらも、ついに1824年には団結禁止法を廃止させる
歴史的勝利を勝ち取る。
◇その現在
「労働組合は、資本にたいする局地的な、当面の闘争にあまりにも
埋没しきっていて、賃金奴隷制そのものに反対して行動する自分の
力をまだ十分に理解していない。このため、労働組合は、一般的な
社会運動や政治運動からあまりにも遠ざかっていた。だが、最近に
なって、労働組合は、自分の偉大な歴史的使命にいくらか目ざめ
つつあるようにみえる。それは、たとえば、イギリスの労働組合が
近年の政治運動に参加していること、合衆国の労働組合が自分の
役割についていっそうひろい見解をいだいていること、さらに最近
シェフィールドでひらかれた巨大な労働組合代表会議が次のよう
な決議をおこなったことからみて、明らかである。
『本会議は、すべての国の労働者を一つの共通の兄弟のきずなで
結びつけようとする国際協会の努力を十分に評価し、全労働者の進
歩と福祉にとって協会が必要欠くべからざるものであることを確信し
て、本会議に代表を送った各組合に、国際協会への加盟を心から勧
告する』」
*資本の横暴を規制する法律をつくるために
・労働者自身の政治組織が必要という要求が高まってくる
*イギリスのチャーティスト運動・・・労働者にも選挙権を!(普通選挙権を)
*全国的なたたかい、すべての国の労働者の連帯を
◇その未来
「いまや労働組合は、その当初の目的以外に、労働者階級の完
全な解放という広大な目的のために、労働者階級の組織化の中心
として意識的に行動することを学ばなければならない。労働組合は、
この方向をめざすあらゆる社会運動と政治運動を支援しなければ
ならない。みずから全労働者階級の戦士、代表者をもって自認し、
そうしたものとして行動している労働組合は、非組合員を組合に参
加させることを怠ることはできない。労働組合は、異常に不利な環
境のために無力化されている農業労働者のような、賃金のもっとも
低い業種の労働者の利益を細心にはからなければならない。労働
組合の努力は狭い、利己的なものではけっしてなく、ふみにじられた
幾百万の大衆の解放を目標とするものだということを、一般の世人に
なっとくさせなければならない」
*今日の労働組合運動への指針となる言葉
*労働組合は、「自分たち」のための組織であると同時に、「すべての
労働者」「社会正義実現」のための組織。だからこそ、憲法でその
活動が保障されている。
*ひとりひとりが、労働者として、主権者として、成長する。まわりの人と
つながりあえる言葉をもつ(みがく)。
「知識は力なり」!(フランシス・ベーコン)。
二。あらためて、『資本論』を学ぶ意味を考える
◇本質を知る―学ばなければ現象にふりまわされる
*苦しさの原因を知る。まちがった認識の「原因」だと実践もまちがう。
*本質を学べば、生き方に自信がつく。見通しをもった生き方。
*自分たちの今いる「時代」「社会」を知る―「どう生きるか」を考えるベースに。
*資本主義は永遠ではない。どこに矛盾があるのか。どう変えればいいのか。
◇私たちの歴史的役割を知る
*労働者の団結を広げる。ひとりひとり。量から質への転化。社会変革。
*労働者として生きることの辛さや喜び。未来を引き寄せることに人生を重ねられる。
◇労働者階級の苦しみを代弁した書。たたかいの書。変革の書!
ありがとうマルクス!
【今後、さらに学びたい人のために―テキスト189・190ページの参考文献を!】
おつかれさまでした!
以上。
感想文を少し。
◆団結することが難しいなと思う今日この頃。仲間どうし
でも、言葉を交わしてないと団結するのはなかなか。
でも労働者の本質をみんなでつかむと団結できる可能性
が見えるなーと思う。
◆組合活動をがんばりたい!!とあらためて思った。
ストライキが権利として認められるまでに100年かかった
というのにびっくり! ほんとにすごいおくりものを私たち
はもらっているんだなあと思いました。
◆「労働者」としての教育って、学校でも社会に出ても
教えられない(働く権利のことや労働組合のことなど)。
ビジネスマナーとか、会社の研修はみっちりやるのにね。
私は労組で働きだしてわかったけど、学校にいる時と
社会に出たときに全員に教えるべきだと思った。
ゼネストは、みんないっせいにストライキだなんて、想像
できない・・・!けどやってみたい☆ イギリスで団結禁止法
を廃止させたように、日本でも秘密保護法を廃止させられ
ないうだろうか・・・。がんばる!
◆労働者の本質を忘れずにいたい。そうすることで分断を
のりこえて団結するきっかけになる。低賃金で教育も医療も
金かかるし、失業の恐怖からガマンを強要される状況を
脱却せねば。
◆労働組合もストライキも日本では憲法で保障された
権利なのに、敬遠されているのは、もったいないなあと思う。
私も、労働者としてつながっていかなきゃなあ。