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長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

連載「チラシ・ニュースづくりの基礎知識」 (6)

ブログ連載

第6回「ニュースの役割―組織者・継承者」

 

【ニュース・機関紙は草の根メディア、運動の組織者】

 

 今回より、ニュースづくりのポイントを解説していきたいと

思います。まず、その役割から押さえましょう。

 

 言うまでもなく、日本はマスメディアの影響力が特別おおきく、

「マスメディアによる世論づくり」が社会変革のおおきな壁として

立ちはだかっています。

 わたしたち運動の側でも、マスメディアにまともな報道をする

よう働きかけていくと同時に、独自のメディアをつくり、育てる

必要があります。ニュースや機関紙、最近ではブログやSNSも、

「草の根メディア」の役割をもっているといえます。

 草の根のメディアをつくり、広げ、育てること。このことの意義

は特別強調しておきたいと思います。なぜなら、組織や運動の

仲間たちも、日々マスメディアの膨大な情報をあびており、その

影響を受けているからです。運動の情報、大切な事実、そして

現場の運動や声を伝える「草の根のメディア」がなければ、私

たちの活動の団結はだんだんと壊されてしまいます。

 

 「でも、自分は素人だしなあ、草の根のメディアと言っても…」と

思われる方がいるかもしれません。たしかに、私たちは「伝える」

素人かもしれませんが、自分がコツコツと実践している仕事や

活動においては、『プロ』ではないでしょうか。じつはそのことが大事

なのです。

 2011年に出版された『メディアをつくる-「小さな声」を伝える

ために』という岩波ブックレットのなかで、著者の白石草さんは、

こう述べられています。

 

「テレビ局を辞めたばかりの頃、私は『素人の制作した映像

など、見るに堪えないのではないか』と思っていた。しかし、私が

『素人』と思い込んでいた人は、『素人』ではなかったのだ。彼ら

は、生活や仕事など様々なフィールドで活躍する『プロ』であり、

問題に向き合う姿勢は、一時的に『ネタ』として取材するプロの

ジャーナリストに比べ、より真剣である場合が少なくない。

…地に足をつけて日々、自分の分野でコツコツ仕事をしている

人たちの知識や経験に学ぶことがあまりにも多いことに気づいた

のである。

…ジャーナリズムの語源は、『日々書く日記』だと言われる。

個人個人が尊重される、より公正で平等な社会を目指すには、

国益を優先しがちなマスメディアに頼るのではなく、社会を構成

する個人が自ら情報の担い手となり、情報の多様性を確保する

しかない。

…映像のみならず、まさに『日記』であるブログを含め、多くの

個人が日々を記録し発信することこそ、権力から距離を置いた

新たな『ジャーナリズム』が実現できる」

 

そのとおりだなと思いました。私たちは、自分のフィールドでは、

「プロ」です。経験・学習の積み重ねがあり、他の人たちよりも問題

意識は高い。だからこそ生みだされる言葉、表現がある。それを

伝えていくのが、草の根メディアです。

定期的に発行するニュースや機関紙、インターネットを活用した

発信。自分たちの仕事や活動、必要な情報・知識を広報する手段を

もち、ねばり強く、大きくしていくための努力をおしまないようにした

いものです。

 

 ニュースや機関紙は、運動の組織者でもあります。必要で大切な

情報が1人ひとりの構成員に伝わる。現場の声、1人ひとりの声が

組織に届く。ニュースや機関紙は、ただ一方的に「発信」するだけ

でなく、現場の実態や声を集める「組織者」でもあります。双方向の

血液循環のようなものです。ですから、ニュースや機関紙をみれば、

組織の元気度がわかるともいえます。創造的で元気な運動をして

いる組織には、かならず「読まれるニュース・機関紙」があります。

さまざまな人が登場するニュースや機関紙は、それだけ幅広い人

たちに支えられているということでもあります。

 自分たちの運動のひとつのバロメーターとして、ニュースや機関紙を

位置づけてみてください。

 

【書き残すことの大切さ】

 

ニュースや機関紙は、書き言葉で構成されています。話し言葉は、

基本的には話した瞬間から消えていくのに対して、「書く」という行為

は、言葉が自分の体から離れて、文字が時間をこえて残っていきます。

ですから、ニュースや機関紙は、みんなで同じ情報を共有することが

できると同時に、次の世代のため、運動の継承にとって、大きな役割を

果たすのです。

たとえば、みなさんが、何か集会や学習会、取り組みを行ったとし

ます。その結果、成果や教訓がたくさん生まれた、あるいはあまりうま

くいかなかった、いろいろあると思いますが、それをニュースや機関紙

に「書き残す」ということが大事です。

集会や取り組みをやりっぱなしで、何も書き残さなければ、それに

参加した人、取り組んだ人は、「体験」しているので、ある程度わかる

わけですが、それに参加できなかった人、あるいは次の世代の人は、

それを学ぶ手段がありません。その取り組みは、その瞬間で消えて

いくのです。

 これは、個人も組織もそうなのですが、活動を記録する、体験を記

録するということは、その活動・体験を整理し、まわりの人に読んでもら

うことによって伝えるという意味があるのと同時に、「次の世代」の学ぶ

可能性をつくるためでもあるのです。歴史や活動をふりかえることが

できる、「継承」されるための手段を残すことなのです。

 いまつくられているニュースや機関紙が、10年後、20年後、あるい

はもっと後に、「いまはまだ見ぬ人」によって読まれ、学ばれるかもしれ

ないのです。

 

個人でも、組織的にも、機関紙やニュース、ブログやSNSなどで

どんどん「書き言葉」を残していきましょう。さまざまな活動をこまめに

書き残し、それを「誰でも読める」ようにしておくことを、ぜひ心がけて

ください。それは、いま活動している「私たち」のためだけではないの

です。未来の「継承者たち」のためでもあるのです。