年末年始に、『沖縄島 』上・下巻(霜多正次、新日本文庫、1977年)を読み終える。いわゆる民主文学。
3人の主要人物を通して沖縄戦以後約10年間の占領下の人々の苦悩を描いた小説。
端的に言ってとても重たい。
「地獄の地上戦」「他国に占領された島」「祖国に切り捨てられた立場」という幾重にもわたる複雑で容易には解けない苦難からくるものであることが、読む側につきつけられる。
あしかけ27年間の米軍占領下において、じっさいに沖縄の人びとが置かれていた立場や思いというのは、なかなか想像しづらいものだけれど、それがよく伝わってくる。
そして、60年代に本格化する島ぐるみ闘争、祖国復帰運動の萌芽も描かれている。
ちなみに、人民党の瀬長亀次郎が別名で登場するのだが、「翁長亀吉」となっていて「おおっ」と唸った。
「沖縄を欠落させたままで日本の戦後現実の総体はとらえたということにはならないのだ、という、霜多の確固とした時代認識の表出」(解説)に、共感する。
沖縄を欠落させたままでの日本の社会変革は、これもなしえない。