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長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

「旅と読書」 『友』10月号へのミニエッセイ

『学習の友』10月号に寄稿した
ミニエッセイ「旅と読書」です。


 「旅がしたい」との思いが頭を支配するのは、たいてい
仕事がたてこんでいるとき。知らない土地、目にしたこと
のない自然や文化、予想もしないような出会い…。日常の
なにげない「繰り返し」のなかにも素敵なことはたくさん
ありますが、旅はそうした日常とはまた違う、そこを飛び
出したヨロコビがあります。
 でも時間もお金もなかなかキビシイ…。そんなときは、
小説やら旅エッセイなどの本を読みます。日常からのプチ
飛躍です。
 『大使が見た世界一親日な国・ベトナムの素顔』(坂場
三男、宝島社、2015年5月)というおもしろい本を最近
読みました。著者は駐ベトナム大使をつとめた方で、情報
量・質ともに抜群。ベトナムの歴史から、経済、外交、人
々の暮らし、日本との関係…。ベトナムの「いま」に触れ、
少し、ベトナムを旅した気分になりました。

 加藤周一さんは、「旅と読書は似ている」と書かれてい
て、納得です。
 「読むことと旅をすることのあいだには、いかにも深い
因縁があります。旅は私たちを、いつも見慣れた風景や、
知人の顔や、生活や、またある程度までは、いつも経験し
ている心配ごとや、希望からさえも、多かれ少なかれ切り
離して、見慣れないもう一つの世界へ連れていきます。同
じように、本を読むということは、活字を通していくらか
の想像力を働かせ、私たちの身のまわりの世界から、多か
れ少なかれ違う別のもう一つの世界へはいって行くことで
す。(略)旅へ出かけること、本を開いて最初のページを
読むことは、身のまわりの世界からの出発です。旅と読書
はそもそものはじめから、気分のうえでよく重なっている
のです」(『読書術』岩波書店)

 読書は、「過去」へも入って行けます。私の好きな池波
正太郎の時代小説なら江戸時代へ。ギリシャ哲学なんて、
2000年以上前にタイムスリップ。書き言葉はずっと残
ります。本をひらけば、いつの時代、どこの国・地域へも、
私たちは飛びだせるのです。こんなスグレモノ、ほかにあ
るでしょうか。
 自分が関わったことのない職業の人が書いた本も、おも
しろい。世の中にこんな仕事が、という発見。出会いの刺
激。著者に会えなくても、その人の経験や考え方を聞くこ
とができます。
 本を開くことは、新しい世界をひらくこと。世界が自分
の手のなかで、おおきく広がります。