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長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

日本国憲法と労働組合(講義概要・上)

今月、倉敷医療生協労組の
お昼休みろうどうくみあい入門講座の6回目で講義した
「日本国憲法と労働組合」の概要をメモ的に残しておきます。

*   *   *   *   *   *   *   *

 人間らしさ、とは何でしょう。それを考えるのが人間でも
あります。動物にはあまり「~らしい」とは使いませんね。
「らしい」を辞書でいくと、「・・・といわれるだけの諸条件
を十分に備えている様子」(三省堂『新明解国語辞典』第7版)
と説明されています。つまり人間らしいとは、人間といわれる
だけの諸条件を備えている状態、ということです。
 労働基準法の第1条でも、「労働条件は、労働者が人たるに
値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければなら
ない」と規定しています。つまり人間に値する生活がある、
という認識です。逆に、人間に値しない生活とは何か、それを
具体的に考えなければなりません。

 このように、人間は、人間らしさを問うてきたし、人間で
ない「あり方」「状態」を改善されるべき課題である、と認識し
それを克服してきたのです。たとえば、自由にものがいえない
ということ、これは人間にとってとっても苦しいことです。
移動できない、生まれながらにして人間がランク付けされて
いる、人がモノのように売り買いされるなど、人間としての
「諸条件」を奪われている状況を「不自由」と自覚し、自由を
獲得するために努力を積み重ねてきました。人間の歴史は自由
拡大の歴史と言っていいと思います。

 「人間らしく生きる」内容を、1つひとつ「人権」として確定
させてきて、それは何者によっても奪えない、こういうものとして
憲法に結晶させました。日本でいえば、日本国憲法がそれにあた
ります。人間らしさの目録の結晶が日本国憲法です。
 憲法97条にそのことが書いてあります。「この憲法が日本国民
に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力
の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試練に堪え、現在
及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託
されたものである」。
 ぼくはこの「信託」という言葉が好きです。信じて託された。
それは人類の先輩たちが100年、200年、300年とかけて「人間ら
しさの諸条件」を1つひとつ確定させ勝ち取り、私たちにそれを
託してくれたのです。これを使っていくんだよ、と。そしてそれは
当然「将来の国民」にも手渡していかなくてはいけないものです。
人権というのは奪われてきた歴史も持ちますから、私たちの努力
なしに、それは手渡されないのだと思います。

 憲法の基本的人権について、全部はお話しできませんが、主な
ものについては述べておきます。13条は「個人の尊重」「生命・
自由・幸福追求」です。1人ひとりがちがう人間であり、命はひとつ、
人生は1回です。だから、生命・自由・幸せを追求する権利があって、
それは国政のうえで最大の尊重を必要とします。誰もがかけがえが
ない生を生きている。こういう認識です。14条「法の下に平等」は
人種とか信条、性別、社会的身分などによって差別してはならない、
という条文です。15条「公務員の選定権」。選挙で代表を選ぶ権利
です。16条「請願権」も大事な人権です。ひらたくいうとお上に
もの申せる権利です。署名を集めて国会に請願にいく。消費税を
あげるのやめてくれ、看護師増やしてくれ、こういう意見を私たちは
お上に対して言う権利があります。
 18条「奴隷的拘束を受けない」。だれの奴隷にもならない。19条
「思想及び良心の自由」。なにを考えなにを正しいと思うかは個人の
自由であり、国家や他人がそれに介入したり強制したりしてはダメだ
というものです。20条「信教の自由」、なにを信じるのか(信じない
のか)も個人の自由です。この自由は歴史的にもよく弾圧されてきた
もののひとつです。21条「集会、結社、言論、出版、その他一切の
表現の自由」。伝えあう自由です。民主主義の前提となるもので、
基本的人権のなかでもとりわけ大事なもののひとつと言われています。
22条「居住」「職業選択の自由」。どこに住むのか、なにを職業と
するかも自由。23条「学問の自由」。なにを学ぶのか研究するかも
自由。24条「両性の本質的平等」。両性は平等であり誰と結婚する
かは本人たち次第です。
 25条から28条までは社会権といわれていて、国民の「人間らしく
生きる権利」を国が支えなさい、というものです。25条「健康で
文化的な最低限度の生活」。誰もがゆとりのある生活をおくる権利が
あり、国家が責任をもって国民ひとりひとりの生活を保障していく
義務がある、という条文です。26条「教育をひとしく受ける権利」。
ひとしく教育を受けられる権利ですが、残念ながらこれも日本では
実現されていません。高等学校の学費が異常に高く、学びたくても
お金がなければ教育を受けられない国になっています。27条「勤労の
権利」。人間らしく働ける権利です。働けなければ所得が入りません
ので、人間らしい生活は営めません。だから働くことは権利であって、
国の責任として失業対策や雇用保険、職業紹介、職業訓練の機会を
整備することが必要です
 そして28条です「団結権・団体交渉権・団体行動権」。13条から
ずっと説明してきて、労働基本権がこの位置あります。つまり人間
らしさを実現する組織として、労働組合の活動におおきく期待して
いるのが憲法なんです。そして労働組合自体が、私たちが人間らしく
生きるために欠かせない、人権として保障されなければならない
組織だということです。
 最後に9条「武力の行使の放棄」「戦力の不保持」。あまり説明
はいらないと思いますが、人間らしい生活の土台は平和であること
ですから、それを担保するものとして9条があります。
 このように、憲法は、私たちが人間らしく生きるために「欠かせない、
奪ってはいけない諸条件」を1つひとつ掲げています。これを私たちが
しっかり知る、身につける必要があるわけです。

(後半につづく)