長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

ストライキの取り組み方

きのう(8日)は20時から
全医労岡山地区協議会の執行委員会へ。後半の学習会講師。

内容は、前回(12月)「ストライキのそもそも」の続編、
「ストライキの方法論」。
20分講義して10分ほど感想交流。

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日曜日の福祉保育労の学習会では、
「組合がストライキを構えて交渉しないと、ほんとの
ところで使用者と対等にはなれないし譲歩を引き出せない」
と強調。でもどうしても「ウチではできない」という
感想がでます。気持ちはわかりますが。

でも必要不可欠な権利を労働者の側から放棄しないでほしい。
そこから1歩、議論をすすめてほしいと思います。

「ウチではストライキは無理」と考えるのではなく、
「どうしたら労働組合の特別な権利である争議権を
活用できるか、どんな方法があるか」と議論できないでしょうか。

権利は議論し使わなければ錆びつくし
最悪の場合奪われてしまいます。
日本では公務員のスト権は
なんと約70年も不当に奪われている。異常なことです。

きのうの学習会でも、
「じっさいに出来るかどうか」ということが少しですが
話しあわれました。
もちろん団結力がなければストライキは逆に危険です。
でもほんとうに切実な要求を実現するためには、
ストを構えることは必要不可欠だと思います。


以下、きのうの講義概要、後半のみ紹介します。

一。簡単にストライキのそもそもについて振り返り(省略)

二。医療労働者もストライキの歴史あり(省略)

三。労働法ではストライキをどうあつかっているか
 
◇労働争議とは
  *労働関係の当事者間において、労働関係に関する主張が一致
   しないで、そのために争議行為が発生している状態又は発生
   するおそれがある状態をさす(労働関係調整法6条)。
 ◇争議行為とは
  *同盟罷業(ストライキのこと)、怠業(サボタージュ)、作業
   所閉鎖(ロックアウト)その他労働関係の当事者が、その主張
   を貫徹することを目的として行う行為及びこれに対抗する行為
   であつて、業務の正常な運営を阻害するもの(労働関係調整法7条)。
 ◇届出義務
  *争議行為が発生したときは、その当事者は、直ちにその旨を
   労働委員会又は都道府県知事に届け出なければならない(労働
   関係調整法第9条)。
 ◇公益事業での争議行為の届出
  *次にあげる事業においては、争議行為を行う日の少なくとも
   10日前までに労働委員会及び厚生労働大臣または都道府県知事
   に通知しなければならない。1.運輸事業。2.郵便または電気通信
   の事業。3.水道、電気またはガス供給の事業。4.医療または公衆
   衛生の事業。(労働関係調整法37条)

 ◇批准投票
  *ストライキを行うためには、組合規約にしたがって組合員(又は
   代議員)の直接無記名投票を行い、その過半数の賛成を得て
   開始する(労働組合法第5条)。
 ◇刑事免責
  *正当な争議行為について刑事罰を科すことはできない(労働
   組合法第1条第2項)。
 ◇民事免責
  *正当な争議行為を行ったことによって使用者に損害を与えても、
   使用者は労働組合又はその組合員に対し損害賠償を請求する
   ことはできない(労働組合法第8条)。
 ◇不当労働行為制度による保護
  *使用者は正当な争議行為を理由に組合員に不利益な扱いをして
   はいけない。たとえば、使用者は正当な争議行為を指導したり
   参加したりしたことを理由に、組合役員や組合員を解雇する
   などの不利益な取扱いをすることはできない。また、組合が
   ストライキをするかどうかといった重要な決定をしようとして
   いるときに介入してはいけない(労働組合法第7条)。そして、
   そのような使用者の行為があれば、労働委員会による救済の道
   が開かれている(労働組合法第7条、労働組合法第24条など)。

 ■「正当な」争議行為とは
  *正当性の判断基準は、争議行為の主体、目的、手段、開始時期・
   手続、態様等によって個々の事案ごとに判断される。(1)労
   働組合が主体となって行う争議行為であること(一部の組合員
   が組合の正式な了承なく勝手に争議行為をするのはダメ)。
   (2)争議行為の目的が、労働組合の目的(労働条件の維持・
   改善)に沿う正当なものであること。(3)手段、態様が正当
   であること。暴行や傷害等の暴力行為はどんな場合においても
   正当ではなくなる(労働組合法第1条第2項)。
  *政治ストライキは争議行為の内容によって正当性の判断が分か
   れる。スト権投票などの手続きをふまなかった場合や予告なし
   に行われる場合、正当性を疑われる根拠となる。

四。労働組合としてのストライキの構え方・取り組み方
 
1。ストライキをじっさいに構えるうえで配慮する点
  ◇団結力を背景にしなければ、ストライキは成功しない
   *スト権投票などで圧倒的に賛成がなければ、そもそも行う
    こと自体が厳しい
  ◇そのために、ストライキの目的・要求項目を、組合員全体のものにする
   *要求の切実さ、実現性をみんなのものに。
   *職場集会・討論が大事。「これだけは譲れない」要求の意思統一も。
   *ニュースやチラシなどの宣伝活動を徹底しておこなう
   *患者さん・利用者さんへの配慮や理解、管理職・非組合員
    などの支持を得ることも大事

    「ストライキはいつでも成功するとはかぎらない。これは労働者
    と資本家とのあいだの1つの階級闘争であって、両者の力関係に
    よって、成功することもあれば失敗することもある。これを規定
    する労働者側の条件とすれば、なにより団結の固さいかんである。
    団結が弱ければ、足もとをみすかされて、資本の譲歩をかちとる
    ことはできない」(藤本正『ストライキ』新日本新書)

 2。ストライキの形態について
  ◇全面スト→組合員全員参加のストライキ
  ◇部分スト→企業のある部分においてのみ行われるストライキ。
  ◇指名スト→特定の職場の特定の組合員を指名して、その人だけに
   ストライキを行わせる。
  ◆ストライキの実施時間
   *時間的な範囲を制約する法令はない。争議の解決まで継続して
    行う「無期限スト」、一定の期限を定めて行う「時限スト」
    などがある(15分、1時間、半日、8時間、24時間、3日間、
    1週間etc)。
  ◇スト形態・時間にもよるが、保安要員を配置するのが一般的
   (不足の事態を避ける理由)

 3。妥結に関して
  ◇力関係を見極める
   *労使の力関係(組織率、要求の切実度、団結の度合い、組合
    周辺の支持など)も分析して妥協点をさぐることも大事。執
    行部の思いだけでは勝てない。
  ◇組合員の気持ちを大切に
   *争議中に組合員がまだ納得していないのに早々と妥結すると、
    組合員が「裏切られた」などの挫折感や執行部不信をもつ
    こともある。交渉団は何よりも組合員の気持ちを大切に、
    討議も重ね、ねばり強い交渉で少しでも要求が前進するよう
    にたたかう必要。

 4。たたかううえでの基礎的力は
  ◇労働組合の役割、ストライキのそもそも論をみんなの認識に
   高める学習活動
   *日本ではストライキが激減しており、「迷惑」「そこまで
    しなくても」などの認識が一般的。「労働組合の正当な手段」
    であり、「ストライキなしには対等の立場で交渉できない」
    という、そもそも論を組合員の共通認識にすることが大切。
  ◇そして団体交渉の場がなにより大事。団結の度合いがもっとも
   あらわれる場のひとつ。