長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

学びは続くよどこまでも

昨夜(22日)は倉敷医療生協労組の
「超入門!ろうどうくみあい講座2」の8回目。
テーマは「仲間がいるからがんばれる」。
講義30分感想交流40分と理想的配分。

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この講座、月イチでほぼ2年間続いていて、
青年部役員の継続的な学びの場になっています。
きのうもみんなの感想がすばらしく、おじさん嬉しいかぎり。

この日は2クルー目の最後の講義で、
つぎはまた5月頃からするかなあーと思っていたら、
「この前の青年部の会議で3月4月と2回かけて戦争法の
学習会がしたいとの話になったのでお願いします」と。
おじさんビックリ嬉しいです。学びは続くよどこまでも。


以下、参加者の感想文です。

■労働組合、青年部をどんな場にしたいか、あらためて
考える機会になりました。1回1回の集まる場で、思いを
言える、困っていることを言いあえる、そんな場に
したいと思っているのですが、聞き出すのが難しい・・・。
そこをこれからがんばりたいです。

■青年部の中ではやっぱり「楽しい」をつくることから
していかなくてはならないと思いました。関心を皆が
もっていけるよう、皆で企画を考え実行に移していけたら
と思います。労働組合に興味を持つ人が増えるように
青年部活動を行っていきたいです。ありがとうございました。

■実際、ひとりで何かアクションをおこそうと思ったら
勇気がいるし、しにくかったりするけど、仲間と団結
することで自分も頑張れるし、挑戦してみようという気に
なるので大切だと思いました。「たのしさ」を味わえる
活動にするのは難しそうだけど、たたかうことで得られる
こともたくさんあると思うのでそれ目標にして頑張ると
楽しくなってくるのかなと思いました。

■今まで社会に対して流してきたので、こういう場が
あるということはとても貴重なことなんだなと思いました。
改めて労働組合の大切さを学ぶことができました。

■労働組合の認識や、政治的な認識もあまり多くなく、
少しでも自分の中で視野を広げていけるように、
たまたま、青年部の活動に誘われた機会を大切に
していきたいと思いました。



以下は、講義の概要です。


一。たまたまの労働組合論
 
◇労働組合のある職場だった
  *「労働組合があるから倉敷医療生協を選んだ」という人はいますか?

 ◇ユニオンショップ協定を結んでいる
    (労働組合に入るかどうか考える機会がない)
  *ユニオンショップ協定とは、その労働者が使用者に雇われて
   いるあいだは、労働組合に加入しなければならないと労使間で
   協定を結ぶこと。加入しなかったり、脱退させたれたときには
   使用者はその労働者を解雇しなければならない(実際にそんな
   ケースはほとんどないが)。
  *「組合に入る・入らないは個人の自由。おかしくないか?」
   という疑問は自然だが。
  *団結権は、使用者との関係において、労働者の立場を強化する
   ために保障されたものであり、その目的を達成するために加入
   強制などは一定認められるというのが考え方。個人の自由に制
   約をかけてもやむをえないという価値判断に立っている特殊な
   ケース。つまり日本国憲法は、立場の弱い労働者が「団結権」
   を行使して使用者と対等の立場に立つことを最大限重視している。

 ◇こうした条件のなかで、「労働組合活動に当事者意識をもつ」と
  いうのは簡単ではない
  *先輩たちが築いてきた労働条件・職場環境のうえに立っている。
   労働条件ムチャクチャ、人権侵害のオンパレード、などという
   ことは基本的にはない。
  *したがって、活動の主体者になるきっかけは「たまたま」となる。
   逆にいえば「たまたま」がなければ、当事者意識は持てにくい。
   だから「たまたま」をたくさん準備する。


二。「たまたま」から、労働組合への認識を前進させる
 
1。あやふやな認識にはあやふやな実践が対応
  ◇労働組合への認識は「部分」からはじまる
   *世間一般の労働組合への認識はとても偏っているし部分的。
   *職場でも「いまの姿」しか見えなく、「劇的に労働条件がよく
    なるわけでもなく…」。
   *人間は部分でだいたいの判断をする。そして部分認識では、
    問題意識も中途半端に。
  ◇労働組合への認識を広げたり深めたりすることが大事。集まる
   こと。学習と議論。
   *労働組合ってなんのためにあるの?
         ―人間らしい(ゆとりのある)生活のため。
   *労働条件ってどうやってきまるの?
         ―ひとりで交渉は無理。みんなで交渉する。
   *労働組合の歴史は?
      ―イギリスから始まり世界中に。200年以上の先輩たちの歴史。
   *労働組合の社会的役割は?
        ―ひとりも見捨てない社会をつくる砦。人権守るなんでも屋。
   *労働法についてどれだけ知っている?
          ―使用者が守らないといけないルールの数々。
   *青年部ってなんのためにあるの?
         ―組合活動の「基礎練習」「発声練習」「楽しさ味わう」
  ◇いま、私たちを取り巻く状況は?―社会と政治に強くなろう

 2。労働組合(の活動)を「好き」「いいな」になることの大事さ
  ◇愛の反対物は無関心。好きになれば問題意識が生まれる。
   関心が持続する。
  ◇楽しい活動。理性的理解(労働組合への正しい認識)と
   感性的実感(気持ちも向く)。
   *たのしいとは、「充足感が味わえるものとして、その状態を積極的
    に受け入れたい、出来ることなら、それを持続したい気持ちだ」
    (三省堂『新明解国語辞典』第7版)
   *労働組合の活動は「たたかう相手」がいる。だからときに「しん
    どい」こともあるし、うまくいかないこともたくさん。人間集団
    だから、どうしてもいろいろなことがある。くやしい思いもする
    かもしれない。
   *「たのしさ」を味わえる活動になるように工夫する、そういう
    活動を追求する。
   *自分が主権者として「成長」できるような場。当事者として声を
    あげる。視野が広がる。交流ができる。いろいろな人に出くわす。


三。仲間がいるからがんばれる―労働組合を自分のこととして考える
 
1。じっくり考える間もなく、どんどん日常は動いていく
  (生活・仕事・社会)
  ◇「ゆとり」「議論の場」も少ない。社会は混沌。「距離を置く」
   「流す」ほうがラク。
  ◇「ちょっとまてよ」「そもそもこれは」「何のために」
                ―立ちどまるには場と仲間が必要

 2。集団の認識で、事実のたばを集め、認識を深めていく
  ◇ひとりひとりの認識には限界があるー狭い認識を正し、広げ、深める
   *話しあう。教えあう。聴きあう。書きあう。仲間がいること。
    集合知への飛躍。
  ◇会議・ディスカッション・情報共有の場を大事に
            ―安心して議論できる空間と関係性。

 3。主権者として育ちあう場をつくろう―流されない力を
  ◇憲法をつかえる主権者に
   *国民の基本的人権を保障するのが憲法の目的(97条)。憲法を
    守って仕事をしなければならないのが権力担当者(99条)。
    権力担当者に「おまかせ」にせず、自由や権利を不断の努力で保
    持する責任があるのが主権者である私たち1人ひとり(12条)。
   *基本的人権の核心は、個人の尊重(13条)。生命・自由・幸福
    追求の権利。ひとりも見捨てない社会。誰も置き去りにしない社会。
   *憲法なんて関係ないという安倍政権によって、置き去り政治が
    すすんでいる。
   *不断の努力の中心は21条。集会・結社・言論・出版・そして
    表現の自由。「~しあう関係」。高まりあい。私たち1人ひとり
    が当事者として社会と政治に意思表示・参画。それが民主主義。
    民主主義は疲れるけど、「私」「私たち」も変わるプロセスでもある。
  ◇ひとりでは成長できない。
   民主主義の実践の場のひとつが労働組合の活動。

さいごに:ノーマ・フィールドさんの言葉から
            (『女性のひろば』2012年6月号より)

    「そうは言っても個人はそんなに強いものじゃないんだよなあ。
    “ひとりひとり”じゃ無理なんだよなあといつも思うのです。1人
    で突出したことをやらなくてはならない、それができない自分
    はダメだと責める。そういうやり方では運動は進まないような
    気がしています」
    「私は子どものころは、勇気は個の中から出てくる、本質的に
    個に根ざしたものだという気がしてきました。でも今は、それ
    は大きな取り違えで、勇気というものは個人のものではなくて、
    もっと社会的なものかもしれないと思うのです。つまり、仲間
    がいるからこそ勇気が出てくるというのがありますよね。そう
    いう意味で運動の大切さを感じます」