長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

ハピネス、第9巻、ぼくの住まい論

最近読んだ本。

『ハピネス』(桐野夏生、光文社文庫、2016年2月)

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桐野作品にしては、それほど後味悪くなかったね(^_^;)
しかし、専業主婦のママ友世界を
よくこれだけリアルに表現できますね。
作家ってほんとすごいわ。


『宮本顕治著作集 第9巻 1985年~94年』(宮本顕治、新日本出版社、2013年)

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昭和天皇の死去とか、ソ連崩壊をどうみるかとか、
ミヤケンさんにしか語れない部分がやはりあります。
史的唯物論は生きた認識の学問。
路線を正確に保つには集団指導や相互批判をおこたらない努力。
ピカッと光る言葉が。


『ぼくの住まい論』(内田樹、新潮文庫、2015年)

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これまで読んできた内田先生の著作でいちばん面白かったと思う。
合気道の道場を併設した自宅「凱風館」を
建てる過程とコンセプトが軸。
本論の住まい論に加え、空間論、学校論、教育論、職人論、
貨幣論など縦横無尽の語りです。共感のルツボでした。

以下、自分用のメモ。

「教師を長くやってきてわかったことの1つは、『学びの場』は、
そこで学んだ人たちにとって、生涯変わることのない『母港』で
なければならないということです。いつも同じ場所にあって、船
の出入りを見守っている。学校というのはそうでなければいけ
ない」(19P)

「別に帰ってこなくてもいい。『帰れるところがある』と思って
いる人と、そんな場所がない人では、人生の選択肢の数が違う。
当たり前ですけど、『退路のある』人の方がずっと自由になれる。
ずっと冒険的になれる」(20P)

「『人間は弱い』というのがぼくの人間観の根本なんです。だか
ら、最優先の仕事はどうやってその弱い人間の慰め、癒し、支援
する場を安定的に確保するか、です。『家』は何よりもまず
『集団でいちばん弱いメンバー』のためのものであるべきだと
ぼくは思います。幼児や妊婦や病人や老人が、『そこでならほっと
安心できる場所』であるように家は設計されなければいけない。
家は、メンバーのポテンシャルを高めたり、競争に勝つために
鍛えたりするための場じゃない。そういう機会なら外にいくらでも
ある。家というのは、外に出て、傷つき、力尽き、壊れてしまった
メンバーがその傷を癒して、また外へ出て行く元気を回復する
ための備えの場であるべきだとぼくは思っています。『おかえり』
という言葉がいつでも用意されている場であるべきだと思ってい
ます」(20~21P)

「弱ったときでも自尊感情を失うことがないような場所、明日は
がんばろうと気持ちよく眠れるような場所、そういう空間が生活
のベースになるべきだと思うんです」(24P)

「学びのシステムを持たない集団は存続することができません」
(180P)