長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

紹介―『オランダ流 ワーク・ライフ・バランス』(中谷文美)

 90期岡山労働学校第1講義の講師、中谷文美(あやみ)さんの著作。
読み進むにつれ、その誠実な研究方法や興味深い内容に膝を打ちつ
づけた。岡山大学の先生なので、「もしかしたら、講師に来てもらえるか
も」と淡い期待を抱き、直接メールを送ったところ、快諾をいただいた。
私も講義ははじめてお聴きする。

 本書の特徴は題名のとおり、オランダにおける「働くこと」と「その他の
大切なこと」、とくに家事労働との“組み合わせ”の技法を追跡している
ことである。「人生のラッシュアワー」とは、子育てをする時期をさす。生
活における嵐のような時期に、オランダ人やオランダ社会が「仕事」と
のバランスをとるため、どのように仕組みを変え工夫を積み重ねてきた
のか、またその根底にある考え方について示されている。オランダに長
期間住み、たくさんの人にインタビューしたものが研究のベースとなって
おり、説得的だ。

 オランダは「パート王国」といわれるほど、短時間労働者の割合が高い。
だが日本の「パート」とは大きく違い、たんに「フルタイムよりは短く働く」
というだけで、正規職員とは均等待遇である。そうした仕組みであること
を前提にしつつ、オランダ流「人生と仕事をどちらも大事にする方法」は、
私たち日本社会への大きな問題提起となる。ぜひ中谷さんの講義を直
接聞いていただきたい。中谷さん自身の歩みや研究への動機も知るこ
とができる。来週、14日の木曜夜である。

 

『オランダ流 ワーク・ライフ・バランス
   ~「人生のラッシュアワー」を生き抜く人々の技法~』
(中谷文美、世界思想社、2015年)

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