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長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

生きること・働くことのとらえ直しを文化人類学から

90期岡山労働学校「こんな人に会っちゃった教室」が、
4月14日に開校しました(全9回のカリキュラム)。

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14日(木)の第1講義には、単発参加ふくめ30名が参加し、
中谷文美さん(岡山大学大学院社会文化科学研究科教授)の講義
生きることと働くこと~『組み合わせ』の考え方と技法」を
学び、感想交流しました。

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      中谷文美さん

 中谷さんは、ご自身のあゆみを簡単にふりかえられ、
大学卒業後、東南アジアに関わることの多かったNPO
での仕事から、イギリスの大学院に行き、文化人類学
という「道具」をつうじてもう一度東南アジアに関わっ
ていきたいと思われたそうです。インドネシアのバリ島
に2年近く住み込んでバリの人たち、とくに女性の生活
をまるごととらえるという調査を行っていきました。
 インドネシアはかつてオランダの植民地だったことも
あり、オランダにたくさんの文献や資料があり、中谷さ
んもオランダに滞在し生活するなかで、オランダの女性
たちの「生き方・働き方」にも興味をもち、昨年『オラ
ンダ流 ワーク・ライフ・バランス』(世界思想社)とい
う本を出されました。
 バリ島やオランダを研究するなかで、文化人類学の視
点から「仕事とはなにか」「仕事でないものはなにか」
を考察。日本では、仕事=賃金労働となっていて、たと
えば家事は仕事ではないという意識が非常に強いが、何
を仕事とみなし、どれを仕事でないものとみなすかは、
文化や社会、時代によって異なるものであることを指摘。
他の社会を知ることで、今自分があたりまえに思ってい
る「どう生きるのか」「働くとはなにか」の考え方が相
対化でき、「ほかの選択もある」ことに気づく力にもな
るのではないかと述べられました。

 最初の調査地である「バリ島」では、さまざまな儀礼
のための供物づくりが女性たちの重要な「仕事」となっ
ており、じっさいに収入を得るための経済活動である
「機織り」とのバランス、かねあいのジレンマを女性た
ちはかかえていることが写真も紹介しながら説明されま
した。またバリでの「家事・育児」については、女性だ
けがするものとはなっておらず、男性も家事をかなりす
るし、子育ては「みんなでするもの」となっていて、そ
こはかなり日本とは違うということです。
 オランダではどうか。まず大前提として、長時間労働
者の割合が日本とオランダでは圧倒的にちがい、オラン
ダでは一部の職種を除いて基本的に残業はないこと、法
定の労働時間は週36時間で、1日9時間労働で4日勤
務(つまり週休3日)という人も1割ほどいるとのこと
でした。オランダ女性については、以前は結婚したら退
職して専業主婦になるのがあたり前でしたが、いまはほ
とんどの人が結婚・子育てをしていても仕事を続ける社
会になっているそうです。
 オランダ人の働き方のなによりの特徴は、男性も女性
も、パートタイム勤務の割合が国際的にみても非常に高
いことです。ただしオランダのパートタイムは、短時間
正社員という意味であり、フルタイムと時間あたりの賃
金や待遇はまったく同じということは押さえておくこと
が大事です。中谷さんがインタビューしたオランダ人夫
婦の事例も紹介しながら、それぞれのライフステージに
あわせて柔軟に「働き方」「子育て」「その他の大事な
こと」の組み合わせを変更している姿をかいまみること
ができました。保育園への認識も日本とはかなりちがい
ます。働き方の柔軟な変更を可能にしているのが、個人
の選択の自由を保障する制度や、ケア活動が軽視されな
い社会的土壌だと指摘されました。
 最近オランダ政府も、女性の労働量拡大への政策をす
すめていて、保育所利用料の減額、学童保育の拡充など
も行っているが「生き方を政府に指図されたくはない」
という意識はとても強いそうです。
 仕事は人生そのものではなく、それぞれが生活のなか
で大切にしているほかに何かと組み合わせる要素のひと
つであり、「組み合わせ」を主体的に選択していること
が、「いまの生活に満足している」というオランダ人が
多いことの基礎になっていると述べられました。

 

以下、参加者の感想の一部です。

■仕事とは何か、他国を通してみることで、今の日本や
自分の働き方を見直す機会となりました。仕事は人生
そのものではない。ほかの大切な何かと組み合わせる
要素のひとつ、というのは本当にその通りだなと思い
ました。個人の選択の自由と、それを支える制度もう
らやましいなと思いました。あとは、ジェンダーによ
る働き方の違いが、気になりました。どこの国でも、
違いはあるのだなと、それが有利不利ではなく、違い、
組み合わせとしてとらえられたらいいのだなと思いま
した。

■オランダの子育てが日本と全く違うことに驚き、素直
にうらやましいと思いました。自分の理想を求めて労
働条件を選択していく働き方は軽やかな生き方で、ス
トレスが日本より少ないんだろうなぁと思いました。
『仕事って何?』の考え方も面白かったです。家事は
余暇?の話からつきつめていくところが興味深かった
です。

■興味深い話でした。もっと時間をかけて聴いてみたい。

■今日の中谷さんのお話はとても新鮮だったし、時々
は触れていたい世界観でした。内容はもちろん、中谷
さんもステキでした。好きではじめた仕事だし、やり
がいもあり、自分の生活観と近いものがあり、もちろ
ん生活もあるので続けているけど、年齢のことだった
り、仕事内容もいろいろ変わり、ちょうど自分のこれ
からを考えていかないと・・・という時だったので、
とてもよかったです。自分が学んだことだけで終わら
ず、まわりの人たちにも伝えていきたい内容でした。

■育休きりあげ復帰直前です。本当は育休1年とりた
かった・・・本当は時短使いたかった…でも、待機児童
や収入のことを考えると、「一択」させられちゃうん
ですよね。ついしかたないと思いそうになりますが、
こうやって「別の世界」を知って、しょうがなくない
んじゃない? と思えてよかったです。もっとききた
かった・・・。

■久しぶりに労働学校に来れてよかったです。誘って
いただきありがとうございます。私は仕事だけでな
く(家事・育児はあまりがんばってないですが)、
PTAや地域のことに時間を使う生き方をしたいと
思って、バランスをとりたいと心がけてはいるつも
りです。今日のオランダの女性の家事・育児に時間
を費やすべきとの考え方が興味深かったです。

■ダブルワークで1日9時間、週5日働いてます。そ
れでも月にもらえる給料はだんなより少ない・・・。こ
んなにがんばってるのに、という思い、帰ったら家事
を手伝わない娘やだんな・・・。オランダ行きたい、と
思いました。

■日本とオランダを比べると、仕事や家事などの認識
がだいぶ違うなと・・・。日本の男性が家事をする機会
は昔に比べれば増えてきているけど、やっぱり「家
事は女性」という考えは残っている。ワークライフ
バランスって大事だと思うけど、働きやすい、暮ら
しやすい社会があってのことだと思います。

■他の国の生活を知ることは、自分の今の生活がどう
なのかを考えるきっかけになると思うので、今回の
講義も勉強になりました。日本では生活が大変でな
かなか他へ目を向ける余裕がない人も多いかと思い
ますが、知ることで自分の生き方を選ぶ選択肢が増
えるのではないかと思えました。

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感想交流のようすです。

前日まで参加者がなかなか増えずドギマギしましたが、
好スタートがきれました。
5月末まで、1講義1講義、成功できるようがんばります。