長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

賃金とはなにかのそもそも論を繰り返し

昨夜(23日)は
県労おかやま(岡山市内の労働組合の共闘センター)の
常任幹事会にて連続学習会3回目でした。

テーマは「賃金とはなにか」。
講義後の議論も現場の悩みや問題意識が
交流できてよかったです。

以下講義のレジュメです。


一。お金がなければ生活できない
 1。資本主義社会で生きている
  ◇生活するためには、たくさんの「商品」を買う必要
   *ほとんどの労働生産物が「商品」としてつくられる社会。
    「つくる」より「かう」。
   *買い物の比重の高さ。「お金」がなければ生きるための
    必要なものが手に入らない。
  ◇お金への依存度が高い日本社会
          -人権保障もお金のあるなしで左右される
   *住居費(水光熱)、教育費、医療費、保育料、介護料、
    通信費、交通費…。
   *ほとんどの商品に消費税・・・。生活必需品に税金をかけるのは
    人権蹂躙国家。
  ◇人間らしい生活=ゆとりのある生活
   *「ゆとり」とは。「当面の必要を満たしたあとに、自由に
    使うことが出来る空間・時間や体力、他のことを考えるだ
    けの気力があること」(三省堂『新明解国語辞典』第7版)
  ◇お金のゆとり:当面の必要を満たしたあとに・・・
   *賃金-税金-社会保険料=手取り(可処分所得)。
   *ここから必要な生活費を・・・。生活にやたらとお金がかかる。
    高い賃金依存率。

 2。お金の手に入れ方をめぐって
  ◇使用者、労働者、自営業、農林漁業
  ◇労働者=雇われる人は自分の労働力を商品として使用者に
   時間決めで提供。賃金を得る。
   *使用者と労働契約。形式は対等平等。しかし使用者の立場の
    ほうが圧倒的に強い。「あなたでなくてもいい」と言える。
    労働条件を先に提示できるのは使用者。
  ◇働き始めても、労働条件を「交渉」できるのは、
   全体の17%(労働組合の組織率低下)。
   *とくに非正規労働者の組織率が低い。使用者の言われるがままの賃金。
  ◇1人ひとりの生活はかけがえのないものだからこそ。賃金をめぐる矛盾。
   *高い賃金を獲得するための競争。賃金問題がいちばん分断を持ち
    込みやすい。「能力が」「成果が」。対立あおられ。感情的不団結。
    民間と公務。正規と非正規。男性と女性。
   *賃金のそもそも論を繰り返し学び、本質をつかむ。「8時間働けば
    人間らしい生活のできる賃金」「そのためにすべての労働者との
    団結と連帯を」となる必要。最低賃金の引き上げ。同一労働同一
    賃金。労働組合の団体交渉および法律を勝ち取る政治的たたかい。

二。賃金の本質と、たたかいの原則
 1。働いた結果に対して支払われるように「見える」
  ◇実際の賃金形態が、賃金の本質を隠す
   *労働者の賃金はたいていの場合、月末払い。つまり後払い。
    私たちが多く体験する商品売買(前払い)と違う。働いた
    結果にたいして支払われるように見える。
   *パート労働者は「時間給」→何時間働いたかによって賃金が決まる。
   *成果主義賃金→どれだけ働いたか、成果があがったかで賃金が決まる。
   *こういう体験を通じて、「労働の成果=賃金」という「常識」が
    つくられる。「労働の価格」のように見える。能力主義・成果主義
    が入り込む根拠に。

  ◇労働者は時間決めで「労働力」を売っている。労働は売れない。
   *生産手段(職場)と労働力が結合して「労働」ができる。
  ◇「労働力を売り続ける」ために。
   *毎日労働力エネルギーを職場にもっていく必要。

   *労働者は財産もない。労働力を売り続けなければ生きて
    いけない宿命。40年前後。
   *具体的な仕事は千差万別だが、エネルギーを支出している点
    では共通(社会的抽象労働)
   *労働力商品の再生産・・・そのために必要な費用はいくら??
   *憲法25条の「健康で文化的な生活」の視点で考える。ゆとりが大事。
   *賃金の本質は、労働力商品の人間らしい(ゆとりある)再生産費!
    →ここをぶれずに押さえることが、賃金闘争の構えをつくる

 2。労働組合の賃上げのたたかい方の基本
  ◇生計費原則にたって、大幅な賃上げ要求を
   *賃金の本質論をふまえ、具体的に考える(生活実感)
  ◇同一労働同一賃金・均等待遇をめざす
  ◇最低賃金の大幅引き上げ。現在の最賃水準は憲法違反。
  ◇成果主義賃金(労働組合の団結破壊)とたたかう
  ◇社会保障や税金からの視点(賃金額だけ見ていては不十分)
   *賃金が増えても、税金の増で「ゆとり」減。
   *社会保険料増でも「ゆとり」減。
   *社会保障や福祉(教育・医療・保育・介護など)の充実で支出減。
    政治が生活に直結。

 3。もはや人権問題としての日本の賃金差別。底上げが日本経済も
   回復させる道。
  ◇働く貧困層の拡大。賃金総額が下がり続けている日本の異常
   (実質賃金の下落傾向つづく)。
  ◇大企業の業績は良いが、労働者の賃金に配分されない(溜め込み・
   投資・株主配当)
  ◇最賃引き上げ・非正規雇用の待遇改善
            -いま最低賃金の底上げが世界的な運動に
  ◇プラスの循環にもっていく
    (GDP6割近い個人消費の一番の元手は労働者の賃金)
   →生活カツカツの人の賃金が上がる→消費が増える→景気が
   上向く・中小企業ふくめた業績の回復→賃金に反映できる
   体力がつく、法人税収・所得税収も増える→消費税に頼らな
   い国家財政もつくれる→社会保障の充実・安心社会へ
  ◇野党共闘の一致点に「最低賃金大幅引き上げ」「同一労働同一賃金」
   「均等待遇」を
  ◇賃金闘争を職場のせまいたたかいに埋没させない。雇われ組全体。
   社会保障も視野に。