長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

川嶋みどり 『「て・あーて」に学ぶ』

さきほどのソワニエ授業で紹介した本。

『「て・あーて」に学ぶ
―川嶋みどり講演会「今求められる看護の力」によせて』
(美須賀病院看護部、創風社出版、2015年)

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ぼくも著書を愛読してきた看護師・川嶋みどりさんの
講演会とその感想などをまとめた1冊。あらためて、
看護の本質と力について深く学べる。ケアの普遍性。

以下、本書よりメモ。

「つまり大変だけど続けたのではなくって、その大変
だから、その大変さを乗り越えた喜びは、ほかでもな
い私のものだから続けてきたと言えます」(8P)

「ありふれた営みを支援することが看護の主題である
とすると、このような当たり前の至極当然なことを学
問にすること自体がすごく難しいんですね。看護が学
問として遅れてきた理由のひとつでもあります。同時
に、こういうことを学ぶ前に、まず人間としてのごく
普通な感性が求められると思います。・・・日常的な自分
の暮らしも豊かにしておかないと、色んな制約がある
入院患者さんの辛い気持ちに近づけない」(17P)

「人間にとって、生活習慣が維持できなくなったり、
環境の変化、あるいはセルフケアの破綻で戸惑ったり
することは、病気の症状以上の苦痛を伴うわけです。
だから人間が人間らしくあることの基本、尊厳ですよ
ね。尊厳って言葉は難しいかもしれませんけど、そう
いう習慣が保てないことは尊厳を維持できないことで
す。人間が人間らしく生きて、その人らしさを尊重さ
れて生きていく上で欠かせない、もろもろの営みを支
障なく継続できることの価値づけをしましょう。病気
であっても障害をもっていても、高齢であっても、幼
くても、このことをちゃんと保障するのが看護なんで
す。尊厳ある生と人権の保障の前提が『生活』と『生
活行動支援』です」(20P)

「戦後60年の看護の悲劇は、『療養上の世話』、つま
り『生活行動の援助』よりも『診療の補助』に看護師
の関心も手も割かれる度合いが多かったことに尽きる」
(22P)