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長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

『この6つのおかげでヒトは進化した』

読書記録

『この6つのおかげでヒトは進化した
     ーつま先・親指・のど・笑い・涙・キス』
    (チップ・ウォルター著、横山あゆみ訳、早川書房、2007年)
                         を読み終える。

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おもしろかった。ああそうなのか、の発見もたくさん。
でも10年前の本だから、進化過程の研究成果の
更新もあるのだろうな。

いろんなことが見えてくる学びの醍醐味。
「人間臭さをないがしろにすることなく、
その成り立ちをも解きあかそうとしている」(訳者あとがき)
にも共感。

以下、自分用のメモ。

「私たちの行動パターンは、ほかのどんな動物よりも
決まりきっていない。人間はDNAに縛られる度合いが
低く、可逆性が高い状態で生まれてくるようになった。
 人類学者のW・M・クログマンはこう説明している。
『成長期がこれほど長く続くのは、人間ならではの特徴
だ。それがあるからこそ、人間は単なる本能の動物では
なく学習する動物になっている。生まれながらに刷りこ
まれている絶対的な本能の指令に従って行動するのでは
なく、行動を学習するようにプログラムされている』
別の言い方をすれば、ただ単に学習できるだけでなく―
学習するだけならイヌやネズミにもできる―学習し、変
化に対処し、その変化に応じてさらに変化することので
きる生物になった」(70P)

「手が進化したために、なかでも完全な対向性のある親
指が進化したために、私たちの脳は物理的な世界をより
いっそう正確に知覚できるようになった。親指のおかげ
で、環境から与えられるものにただ受け身で反応するだ
けではなくなったからだ。今や自らの意志で環境をつか
み、操作できる。それまでどんな動物もできなかったや
り方で。このことは、人類の進化におけるふたつの重要
な出来事を結びつけていく。たいていの人は、そのふた
つに関連があると思ってはいないだろう。そのふたつと
は、道具作りと言語だ」(93P)

「地球上に何千種といる哺乳類のなかで、ヒトほど顔の
表情が豊かな生物はいない。人間の顔には、左右に22
個ずつ、合計44個の筋肉がある。チンパンジーの2倍
の数だ」(114P)

「児童心理学者(とたいていの親)は、生後わずか8ヵ
月の赤ん坊でも思考のプロセスが非常に複雑なのを知っ
ている。彼らは言いたいこと、表現したいことを明確に
もっている。ただ、のどの形に制約があり、脳の構造や
神経系もまだ未発達なために、言葉を発するのが無理な
だけだ」(124~125P)

「自然は脳の大きさに制限を置いた。だが、私たちの進
化はそこで止まらなかった。単に別の土俵に移って、知
識や情報を自分たちの頭の外にも蓄える方法を見つけた
のである。カール・セーガンはかつてこれを『体外記憶』
と読んだ。別の言い方をすれば、人間の文化である」(222P)

「その原始的な衝動が、私たちのなかで複雑な感情へと
変化を遂げた。愛、憎悪、好意、友情、嫉妬。そのほか、
罪と美徳のありとあらゆる組み合わせが誕生したのであ
る。
 (略)だが、言語という強力な武器をもってしても手
に負えず、表現しつくせない部分がある。それらは、意
識的な自己表現が進化する前から備わっていたものなの
で、言葉では言いあらわしがたい。そのため私たちは、
言葉を獲得したあとでも新しいコミュニケーション法を
編みだす必要があった。(略)その新しいコミュニケー
ション法は、やがて3つの素晴らしい行動へと姿を変え
た。笑うこと、泣くこと、そしてキスをすることである。
どれも言葉を必要としない不思議なコミュニケーション
だ。この3つの行為をするのは人間以外にない。これら
は、ほかの人と離れたくないという人間の思いがいかに
強いかを如実に示している」(226~227P)

「サルたちにもほかの哺乳類にも、涙を流すための管は
あるが、それはもっぱら目の維持のために使われる。涙
が目を潤し、目を癒す。人間にも同じ管があり、眼球を
清潔にして健康に保つ働きをしている。ところが、進化
のどこかの時点で何らかの理由により、サバンナの類人
猿かさらに古い祖先たちの体のなかに、涙を作る涙腺と、
感情をつかさどる脳領域とのあいだに物理的な接続がで
きた。こんな現象は自然界で類を見ない」(266P)