長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

「わたし」と社会と母親運動

土曜日(18日)の午後は、岡山駅近くの会場にて
「第64回日本母親大会in高知成功へ! 四国・中国ブロック学習交流集会」。
ブロックでの学びと議論を強め、
来年8月の高知大会(4000人規模)へのステップにする場のようです。
110人ほどの参加。

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ぼくは「『わたし』と社会と母親運動」というテーマで基調講演。
みなさん熱心に聴いていただき、反応もビシビシと。

男性のぼくが、ジェンダー問題なんです、
ジェンダーがカギなんです! と強調しまくるので、
新鮮だったようです。

以下、講演レジュメです。


はじめに:男女平等指数1位のアイスランドという国。
     オーロラ、火山、氷河、温泉・・・。
     1975年10月24日、9割の女性が参加した「女性スト」
     賃金格差は80%台にまで接近。国会議員の48%が女性(2016年)。
     企業役員の4割以上はどちらかの性でなければならない
     (クォーター制度)。
     父親の9割が育児休業を取得。
     経済平和研究所・世界平和指数1位(163か国中)。

     マイケルムーア監督の映画『世界侵略のススメ』。
     アイスランドにも出撃。
     「役員会に女性が3人いたら文化が変わる。1人ではお飾り、
     2人では少数派。3人でグループの力学が変わる」と自信を
     もって語る女性。

一。息苦しさをつらぬくジェンダー問題(どちらの性も)
 
1。雇用の場で
  ◇雇われて働く人の約4割が非正規労働者。うち女性が7割。
   男女賃金格差最大の要因。
  ◇第1子出産時点で、女性労働者の過半数が職場をやめている
   (育児に注力する)。
   *家事・育児・介護・・・。加重に背負わされる女性労働者。
    極端に少ない男性の家事労働時間(強いジェンダーバイアス。
    長時間労働も背景)。安倍「働き方改革」の欺瞞。

 2。家庭生活の場で
  ◇「母性」イデオロギーの浸透は近代社会になって。
   母親の育児責任強調と父親排除。
  ◇「うちの主人は・・・」「嫁がねえ」。言葉に表れるジェンダー。
  ◇経済的格差が、家庭内格差に影響をおよぼす

    「個人主義の確立は、日本で道半ばなのである。そういう
    中で、個人と個人との関係で個人の尊厳という言葉を使っ
    ている24条は、日本社会独特の任務を帯びた規定と解する
    べきだろう」(青井未帆『憲法と政治』岩波新書)

 3。「個人の尊重」「個人の尊厳」というときの「個人」とはなんだろうか
  ◇人権の主体として、自律的生をいきる。
  ◇あなたはどう考えるのか、あなたはどう生きたいのか、
   あなたはどんな社会をのぞむのか
  ◇生命・自由・生活・幸福追求。
   尊厳とは、人間としてふさわしい扱いを受ける権利。
   *「わたしの尊厳」を奪おうとするものへの異議申し立て。
    私の人権。1人ひとりの人権。
   *でもそれはとてもエネルギーが必要。映画『未来を花束にして』。
   ■1月21日。トランプ大統領に抗議する「女性大行進」が全米で
    300か所300万人以上。当事者自身が声をあげる。連帯をつうじ
    て私たちはエンパワーされる(力をつける)。

二。「わたし」が力をつけたとき、「私たち」も「社会」も変わる
 
1。人権感覚を磨くために
  ◇人権・尊厳。見えない。実測・数値化もできない。歴史を学ば
   なければ自覚が育ちにくい。
  ◇自分の生活や働き方の「質」「あり方」を考え問うこと
   ―そうした訓練や環境が必要
   ■1週間以上の旅行をしていない人は貧困?
    ―フランスの「人間らしさ」の基準
   ■日本の年金水準は現在、現役時の収入の35.1%(平均)。
    フランスは55.8%、1番高いオランダは90.5%。オランダ
    では現役時代とほとんど変わらない生活水準。これがあた
    りまえ。日本の政治にやる気がないだけ。とくに女性の年
    金問題は深刻。
  ◇人間は劣悪な環境でも、「慣れる」「順応する」ことができる。
   適応力が高い。
   *人間らしさの基準や限度、人権感覚は気をつけないとスル
    スルと降下する。
   *「折り合い」という名の「がまん」。あきらめ。あえて考えない。
    ゆとりがない。

    「人間はなにごとにも慣れる存在だ、と定義したドストエフ
    スキーがいかに正しかったかを思わずにはいられない。人間
    はなにごとにも慣れることができるというが、それはほんと
    うか、ほんとうならそれはどこまで可能か、と訊かれたら、
    わたしは、ほんとうだ、どこまでも可能だ、と答えるだろう」
          (V・E・フランクル『夜と霧 新版』みすず書房)

 2。安倍政権の政治と向き合うために
  ◇個人の尊厳をめぐっての「せめぎあい」
                ―1億総活躍社会? 女性の活躍?
   ■国民の命と人権、生活を置き去りにする政治
   *貧困と格差の深刻化。富裕層増の一方貯蓄なし世帯は3割。
    生活できない年金水準。社会保障の連続縮小。高すぎる学費。
    奨学金のローン化。保育園入れない。原発再稼動の無責任。
    沖縄の民意を無視し新基地建設強行。自衛隊が海外で武力行
    使可能に。
  ◇2016年参議院選挙1人区。野党共闘でたたかうも中四国は
   自公に全敗(広島は2人区)。

  ◇要求を耕す。そしてそれを束にしていくには運動と組織が不可欠。
   *それぞれの生活状況、将来不安・・・。思いを出しあえる、
    聴く耳がある安心した場を。
   *学びがあること。自分の「常識」を崩す。おかしさに気づく感性。
    声をあげる確信。
   *「民主主義の基盤としての中間団体」
          (三浦まり『私たちの声を議会に』岩波現代全書)

   *「集会・結社の自由を保障する理由は、第一に、それが個人の
    人格の発展に不可欠だということにある。個々人は様々な集会・
    結社に参加・帰属することを通じて自己のアイデンティティー
    を確立し、人格の形成・発展を行う。・・・第二に、集会・結社の
    自由は、政治的力を表明する手段として不可欠である。国民が
    政治過程に参加する場合、集会・結社によってその力を結集す
    ることが可能となるのである」
         (高橋和之『立憲主義と日本国憲法 第3版』有斐閣)

 3。母親運動への期待と注文

さいごに:「わたしはこう思う!」が民主主義の出発点。
     訓練を。発声練習を。その「場」を。