長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

ユマニチュード(人間らしさ)

『ユマニチュード~なぜ、このケアで認知症高齢者と心が通うのか』
     (イヴ・ジネスト、ロゼット・マレスコッティ著、
                               本田美和子日本語監修、誠文堂新光社、2016年)
を読み終える。

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人間の尊厳の問題から、それがケアの理論と技術に
つながっているということに感銘を受ける。

これって、労使関係ふくめ、人権問題が起きやすい
領域にも考え方や姿勢として適応できると思います。
とても大事なものの見方です。


以下、自分のためのメモです。

■ユマニチュードとはフランス語で「人間らしさ」を
意味します。(4P)

■ユマニチュードは、「人間らしさを取り戻す」こと
も含んでいます(5P)

■人らしさとは何でしょう。人間はただ生まれてきた
だけでは人間にはなれません。誰かから必要とされ、
「あなたは人間です」「あなたのことが大事だ」と
尊重されることによって、初めて人間らしさを獲得
し、人間の社会に属することができるのです。(5P)

■ユマニチュードとは、「あなたは私と同じ価値を
持っています」と相手に伝える、一連の一貫した
哲学とそれを実現させる技術です。(7P)

■尊厳とは人間であることを説明する言葉です。人
間がこの世に生まれたとき、その人に何をするで
しょう。私たちは話しかけます。体を洗い、服を
着せます。見つめます。名前を呼びます。
 ナチス・ドイツがつくった強制収容所では、話す
こと、歌うこと、見ることが禁じられました。自分
の名前を忘れさせ、名前の代わりに番号を付け、腕
にその番号を入れ墨し、非人間化の条件を整えまし
た。あなたが人間であることを忘れさせようとした
のです。人間ではない動物であれば殺してもいいと
いうわけです。人間としての条件をなくしたら、ユ
ダヤ人や障害者、同性愛者やマイノリティーを大量
に殺し、焼却することができました。
 高齢者が40人も相部屋に詰められ、ベッドに寝か
され、糞尿まみれの姿で放置されているとき。話か
けることも、アイコンタクトもしないとき。立とう
とする人間を横たわらせようとするとき。触れるど
ころか肉を刻むとき。それはケアをする人々が無意
識下に行っている人間性の否定です。
 老人を対象にした、「無意識下の人間性の否定」
が世界中に起きていて、私もそこで仕事をしていた
のです。(39P)

■「よい扱い」とは、それを自覚し、学ばなければ
体得できないものなのです。(44P)

■人が自律した自由な社会はどんなものでしょう。
強者がすべてを決めて、それに服従すればいい。
「それは間違っている」と思っても意見を言えない。
少なくとも、そういう社会でないのは確かです。恐
怖心をもって強者に平伏し続けることは、ユマニチ
ュードの考え方とは相容れません。
 ユマニチュードの哲学においては、すべての個人
に尊重すべき価値があると考えています。したがっ
て、患者も、看護師・介護士も等しく価値がありま
す。病院や介護施設だから、その価値が損なわれて
もいいはずがないのです。(89P)

■自律の尊重。これはユマニチュードが最も大事に
している価値観です。自律とは本人が自分のために
自由に選び決定する能力です。(109P)

■誰かをもの扱いするとき、そうしている人もまた
人間性を失います。(118P)

■尊重の根本にあるのはなんでしょう? それは、
相手を人間として認めることです。人を人として
認めるためには、まず、私たちは人の特徴が何で
あるかを認識しておく必要があります。(166P)

■「私は人間だ」と感じることができるような要素
を足していくたびに、その人の状態はよくなります。
                  (170P)

■人が人として扱われる。それは尊厳と呼ばれてい
ます。(171P)

■尊厳の感覚は、「自分は人である」という認識を
可能にするもの。(178P)