長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

ぶらり、時間散歩 (第7回)

『学習の友』の時間エッセイ7回目です(5月号掲載)。

 

第7回「介護の時間と自分の時間」

 私はいま介護生活をしています。2年半前、相方
(妻)が難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)を患
いました。筋肉に指令を送る神経が侵される病気で、
原因が分からず、治療方法がありません。全身の筋
肉が衰えていく進行性の病気です。
 いま相方は、24時間人工呼吸器を装着し、24
時間誰かの付き添いが必要です。幸い、話すことと
食べる力の進行は遅いのですが、手足はほとんど動
かせず、要介護度5の障害者です。それでも、好き
だった旅行に多くのサポートを受けながら行ったり、
働いていた民医連の新聞にエッセイを書いたりと、
相方らしい生活を送っています。
 ただ、介護はたいへん。介護保険と障害福祉サー
ビスを併用して社会資源をフル活用し、生活の質を
保つための努力をしています。私も帰宅時間が早く
なりました。学習運動のような仕事は、夜の学習会
や会議がとても多いのですが、今は月に数回程度に
減らしています。
 「介護さえなければ」と思うことも正直あります。
もっとやりたい活動ができる、もっといろんな人に
会える、そういう時間がとれるからです。でも、介
護は自分を殺し、犠牲にしている時間なのかといえ
ば、「そうでもない」と思う自分もいます。
 作家の落合恵子さんが、母親との介護生活を『母
に歌う子守唄』(朝日文庫)という本にまとめてい
ます。伝わってくるのは、たくさんの重荷や葛藤や
後悔を背負いながらも、人と人とのケアという営み
のなかで、仕事や活動などでは得ることのできない
喜び楽しみを感じることができる時間なのだという
こと。落合さんはお母さんを見送ったあと、「お母
さん、もう一度介護させてよ」と共有した時間の愛
おしさを振り返っています。しているときは必死だ
けど、意味のある、かけがえのない時間。よくわか
るような気がします。
 夜も頻繁に起きます。眠たいし、体はキツイ。つ
ねに相方中心に生活がまわる。いろいろな制約がつ
きまとう。時間に追われることもしばしば。自分の
時間とぶつかります。それでも介護は、自分や相方、
まわりの人にとっても、大切な、ともに過ごす時間
なのです。