長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

ぶらり、時間散歩 (第12回)

『学習の友』の時間エッセイ12回目です(10月号掲載)。
これが、最終回です!


第12回「孤独になる時間を」

 
このエッセイも最終回。ひとまず区切りをむかえま
した。でも私は、時間についてこれからもずっと考え
続けていくと思います。それは自分の生き方を考える
こと、だからです。
 「区切り」を辞書でひくと「物事の切れ目」(三省
堂『新明解国語辞典』)と書かれています。じっさい
には、時間に切れ目はありません。ひと続きの流れで
す。でも時間を認識できる人間は、時間を上手に区切
って、社会的生活を送るための目安にしてきたし、人
生のメリハリや切り替えに「時間」を利用してきまし
た。時と上手につきあっていきたいものです。
 連載最後にお伝えしたいのは、「ひとり時間」を大
事にしよう、ということです。もちろん人間ですから、
さまざまな社会的諸関係のなかで「ともに過ごす時間」
が大事なことは言うまでもありません。でもこれだけ
通信技術が発展し、だれとでもすぐにアクセスできる
社会になればなるほど、「ひとりになる時間」が貴重
になってきているとも思います。
 私は、ひとり旅が好きです。日常のさまざまな役割
や責任から解放されて、なにものでもない自分になれ
るからです。15年前、屋久島に一週間、旅をしまし
た。宿で出会った人と一緒に山を登ったりもしました
が、ひとりで黙々と深遠な屋久島の森を歩くという非
日常の時間。樹齢3千年ともいわれる巨木とも出会い
ました。そのときの感動は、今でも忘れられません。
自分の存在とは何か、ゆったり考えられる時間の贅沢
さを感じました。
 日々、家庭のこと、職場の問題、組合などの活動に
向きあっているみなさんが、「ひとりの時間」をつく
ることが難しいことは、よくわかっているつもりです。
だからこそ日常生活のなかで、意識的にそうした時間
をつくってほしいと思います。
 「進んで孤独になる時間を確保すること。そんな誰
からの干渉もない場所でのみ確認できる自分というも
のがある」(永田和宏『知の体力』新潮新書)と思い
ます。自分との対話、考えたことを書き表すこと、過
去と未来を現在から捉えなおす時間。進んで孤独にな
り、自分の人生の時間を、じっくり考えてみませんか。