長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

32名の参加で93期はスタート!!

昨夜(3日)、
93期岡山労働学校「ものの見方・考え方教室」の第1講義があり、
32名が参加(女性18名・男性14名)。

好スタートをきりました。

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最初に、岡山県学習協の鷲尾会長から主催者あいさつ。
(写真は参加者から提供)

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司会から労働学校の説明があったのち、
第1講義「人間の手について~手がつくりだしたもの」。
今期はすべて長久が講師です。

レジュメは以下になります。

はじめに

一。手をつかって生きている意味
 
1。人間の手はどんな働きをするか
  ◇手はどんなことができるでしょうか。あげていきましょう。

 2。人間の手はどのように生まれ、発達してきたのだろうか
  ◇人類が誕生したのは約600~700万年前・・・アフリカ。
   *ヒトとチンパンチーの共通の祖先から分かれて2本足で生活。
    前足が自由になる。
   *道具を使いながら、目的をもって環境に働きかける。つまり
    それが労働。

  ◇道具の特徴
   *道具は、自分の体(とくに手)の延長として。より硬く、
    するどく、多様な形で。素材も変化。つまりどんどん改良
    されていく。しかし道具はすべて手の構造と機能に依存し
    ている。道具の先は変化するけれど、道具を握る手は変わ
    らない(機械は別)。

    「サルからヒトへの変化を、人類の文化や歴史の第一歩
    としてとらえる視点を大事にする考古学者は、ヒトは道
    具を使い、その道具を自ら作る動物であることに最も大
    きな関心をよせる。道具を用いることによって、人類は
    労働を慣習化し、自分たちの生活を自然に対してより有
    効に活用するための文化を育ててきた。道具の進歩こそ、
    初期人類の進化の基礎だったのである」
         (戸沢充則『道具と人類史』新泉社、2012年)

  ◇人間らしさをつくりだし育てた、「手」
   *脊椎動物の「顔」の役割。外界の探索機能。人間は「手」
    がその役割も担う。「熱い」「硬い」「痛い」「形」など、
    たくさんの情報を脳へ伝える。
   *「道具の使用」「外部探索」の結果、手の神経が発達し、
    それが脳の発達をうながすという関係。また脳の発達が、
    複雑な指令を手に送るように。一体として発達。
   *今日の人間の手は、何百万年という人間の労働の成果の産物。
    文化や芸術も。手がこの世界をつくったと言っても言い過ぎ
    ではない(世界は手の形にあわせてつくられる)。
   *相手に物を渡したり、相手から受けとったりする、つまり
    「他者との媒介」にも。
   *赤ちゃんにみる「手」の発達過程(竹下秀子『赤ちゃんの手
    とまなざし』岩波書店、など参照)。「あおむけ」「おすわり」
    「手遊び」。

二。手をどう使うかは、あなた次第
 
1。手をどう使うのかはその人しだい。
  ◇『わたしの手はおだやかです』(アマンダ・ハーン文、
   マリナ・サゴナ絵、谷川俊太郎訳、にいるぶっくす)

 2。どんなふうに手を使ってきたのか―その人の生き方そのもの
  ◇「わたしから『わたしの手』へ」というメッセージ(手紙)を
   書いてきてください
   *手には「その人」があらわれる
            ―看護学校で、自分の手を語ってもらう試み

   「みんなの発表を聞いて、みんなの『手』について知ると
   いうことは、みんなの『人生』や『生活』を知ることなの
   だなと思った。普段はなかなか知ることが出来ないみんな
   のことを、たくさん知ることができて良かったです」
                  (2018年の学生さん感想)

 3。「手」(皮膚)はすごい―癒しの手にも
  ◇表皮の細胞ケラチノサイト
   *1つひとつに五感があり、ミニ脳がある。
    ・『皮膚はすごい』(傳田光洋、岩波書店、2019年)
   *皮膚が受けとる刺激は、自律神経系、免疫系、内分泌系
    とも深い結びつきがある。皮膚に接触して刺激を与える
    ことは、心と身体の両面に好ましい影響を与える。

  ◇癒しの力をもつ手

    「『癒しの手』は、相手の手をじっと握ったり、抱きし
    めたりする。不安な人を安心させ、落ち込んでいる人を
    元気づけ、悩める人に共感する。薬のように特異的に作
    用するのではなく、言葉のようにストレートに作用する
    わけでもなく、じわじわと体に染み込んでいくような効
    き方だ。だから『癒しの手』に触れられた人は、その手
    の温もりが『身に染みる』のである」
    (山口創『子どもの「脳」は肌にある』光文社新書、2004年)

  ◇『わたしにふれてください』(大和出版)

三。手渡されてきた、自由・人権・平和
 
1。「運ぶ」「手渡す」

   「両手でつくりだしたモノの数々を、やはり両手でつくった
   容器や運搬具を用いて、かなりの距離運ぶことができなけれ
   ば、車も牛馬もなかった時代に、アフリカ大陸から歩いて、
   ヒトが地球上に拡散、移住し、それぞれの地域の自然状況に
   適応した生活を生み出すことは、できなかった」
    (川田順造『<運ぶヒト>の人類学』岩波新書、2014年)

  ◇それは物質的なものだけでなく、思想や文化、自由や人権も、
   「手渡されてきた」
  ◇人間は世代や場所をこえて、学びあうこと、伝えあうこと、
   受けつぎあうことができる。

   「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年
   にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、
   過去幾多の試練に堪え、現在及び将来の国民に対し、侵すこ
   とのできない永久の権利として信託されたものである」(97条)

  ◇100年前~現在~100年後・・・何を手渡していきたいか

 2。手をつなぐ(結ぶ)-連帯や団結は、人の生き方でもある。
  ◇人類は集団で助けあって労働・生活し、進歩してきた。
   多様性こそが人間の強み。
   *人間には、いろんな違いがあって、1人ひとりが個性的で、
    独特な存在。強さや弱さをともにあわせもっている。それ
    ぞれを補いあいながら、社会をつくってきた。
   *手をつなごうとする意志によって、「他人の痛み」を知る
    ことができる

さいごに:『てとてとてとて』(浜田桂子さく、福音館書店)


以上。45分の講義でした(最後はやはり駆け足に)


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その後、5つのグループに分かれて感想交流を15分。


参加者の講義への感想文です(全員分)。

■手について初めて考えました。手が無いと何もできな
いし、全て手が関与しているんだなと改めて思いました。
どんなに画期的な機械ができても、その機械をつくった
のは人間の手なわけで、人間は常に進歩しているのだと
思いました。

■自分の手について考え、ふり返ることができました。
自分の手の可能性を広げていきたいと思います。

■手には多くの機能があることを再確認しました。手に
関するみなさんのエピソードをもっとききたかったと
感じました。多くの気づきを得られました。

■気になる本がいっぱいでした。また見せてください。

■自ら動かないと!と思いました。

■「手について学ぶんだ」。普段、考えることもなけ
れば、意識したこともなかった。学ぶこと、考え続け
ることをこれからですが、続けていきたいです。手と
いう存在にびっくり!

■手ひとつ取っても、いろいろと考えさせられました。

■手を使うことと脳が一体で発達してきたということは、
手をあまり使わない労働が増えるとどうなっていくの
かな・・・と思いました。手は人生。俵万智の短歌を思い
出しました。「生きるとは手をのばすこと 幼子の指が
プーさんの鼻をつかめり」。もっといろんなものに触
れようと思いました。

■手について、考えることがなかったので、ウーンと
悩みながら、参加しました。手は素晴らしい! 自分の
ことだけでなく、他人のこともできる。未来のための
こともできるということがわかりました。

■手と労働の関係というものが、これまでうまくつなが
りませんでしたが、今回の講義を受けて「なるほど」と
思うことがたくさんありました。

■手の役割は思っていた以上に多い。ネコは、顔が前に
くる→おもしろかった。絵本が良かった。絵がきれい。

■改めて手の役割を考えると本当にたくさんあり、考え
たこともないような深い深い話でした。私の手に何が
できるのか。人のために温かい手をこれからもずっと
持ち続けられるよう、と思います。絵本も感動しました。

■考えたことのないテーマ(もの)だったけど、言われ
てみると、そうだなって思うことがあった。きずつけた
りもするし、安心もする。不思議だけど、すごい力がある。

■手にはたくさんの事ができる。それは自分で選択する。
いい事も悪い事も自分で選択する。その手で子ども達に
未来に何を手渡すのか。考えさせられます。

■手の働き、すごいと思った。「いやしの手」―手当て、
親が子どもに「いたいのいたいのとんでけー」ってやる
のが理にかなってるなーって。手から気を出せるのも、
それにあたるのかとも感じた。

■手の講義楽しみにしていたのですが、期待どおり、
やっぱり長久さんの学習会は視野が広がりますね。
「手が世界を作っていると言ってもいい」という言葉
には、自分の手でどんな未来がつくれるかなとワクワク
しました。

■普段、自分の手で何ができるのか、何をしているのか、
じっくりと考えたことはありませんでした。手は本当に
何でもできて、人を傷つけることもあたためることもで
きるのだと改めて学ぶことができました。五感のある、
皮膚。人の手であるということへの驚きと、自分の手が
人にとって様々なあたたかさを与えることができればい
いなと思いました。

■ケラチノサイトに脳があるという話は、手からウロコ
でした。子どもの頃悪さをして怒られた時「この手が悪
い」と言ってた事を思い出しました。あれは本当だった
んですね・・・(笑)。

■手ができることの再確認。道具を使うことによる進化。
ケラチノサイトに五感がある。など知識が広がったと思
います。

■手がいかに生活に接しているかと考えると、その手が
不自由であることは、社会参加・生活に大きな工夫と
理解が必要になる理由になると思いました。赤ちゃんの
生理的早産は人間の最たる能力だと思います。

■手のすごさ、ありがたさを見なおしました。私から
わたしへの手への手紙を書いてみたいなと思いました。

■ふだん、あたりまえに使っている手ですが、手の使い
方は、その人の人生そのものという言葉をきいて、なる
ほどと納得しました。

■私は絵を描く人間ですが、以前から手を描くのは好き
でした。手が好きだ、とも言えるかもしれません。
とくに理由はなかったのですが、今日の講義と感想
交流をきいて、なんとなく、好きな理由が見つかった
ように思います。またあらたな気持ちで「手」描ける
かなと思います。

■労働学校という、何かものものしさを感じる名称の
場に、自分が参加することに楽しみと、少しの不安が
ありました。けれど、長久さんのお話の深さに、これ
はおもしろいぞ!という思いになりました。また
、楽しいお話を聴けたらと思います。

■手で何ができるのかを考えたことがなかったので、
いい経験になりました。その中で一番印象に残った
のは、絵本の「私に触れてください」というところ
です。仕事中に患者さんに触れて声をかけるのと、
触れずに声をかけるのとでは、反応が違うんです。
長久さんが学生に言った言葉「考え続ける看護師
(人)」も、僕の中ではすごく大切にしたいと思え
ました。これからの人生も考え続けていきたいと思
います。

■手のことをあなどっていました。他者を癒したり、
文化も作ってきた手。たくさんの可能性がつまって
いるんだなと思いました。

■皮膚に五感があるという話は、びっくりもしたけど、
やっぱりという感じもした。感想交流の時に、それ
ぞれの人たちの仕事などにまつわる手のはたらきの
話をきくことができて、今回の講義の内容が、より
実感を持ってせまってきたので、とてもおもしろかっ
た。手のことが、より好きになり、興味がわいてきた。

■“手”にはたくさんのことが出来るんだということを、
あらためて考えました。そこから仕事が生まれていっ
たんだということで、手って大事だなと思いました。

■手について、こんなに考えたことなかったので、
おもしろかったです。特に、手が「その人の生き方
そのもの」だという言葉が心に残りました。たしか
に、仕事によっていろんな手になっていたり、手相
などもあったり、もっと、まわりの人の「手」に
注目していきたいと思った。

■手についての動作がこんなにあることにビックリ
しました。人それぞれ思いついたものに普段の生活
や日常がうかがえるような気がしました。

■これまで“手”について考えたことはありませんでし
た。37年間で、一番深く手を見つめた時間でした。
手を使ってきたことについて、人に優しさをあげら
れていただろうか、傷つけてないだろうかと振り返
ることもできました。「次世代に平和を手渡したい」
という言葉の中にも“手”が含まれていて、手のもつ
役割と、リンクしたように感じました。

以上。

(長くなっているので、交流部分は次の記事に書きます)