きのう(28日)は、三重県の津市に。
民医連の東海北陸地協・看護後継者育成研修会での講演でした。
テーマは「看護への愛と、関係性の質~ともに考え・学びあう」
国宝のお寺(高田本山)の会館が会場でした。
ときどきお寺の鐘が鳴っていました(笑)。
ナイチンゲールの話から入り、
相方の話、理念や価値観を持っていることの強み、までで前半終了。
後半は伝える側の情熱、育ちあう環境・土壌をどうつくるか、
学生や新人をひとくくりに見ないこと、関係性の質、集団づくり、などなど。
教育や育成の課題は悩みがあって当然。
だから集団で議論すること、
忙しいからこそ意識的に考える時間をつくる、
書くこと、なども。
グループディスカッションから発表までいさせていただき、
さまざまな感想にふむふむとなりました。
それぞれの苦労や悩みがかいまみられました。
1泊2日の研修で夜は懇親会、明日は実践交流という流れだそう。
本もまずまず売れました! ありがとうございました!
しっかし、きのうは寒かったです!
レジュメの後半をご紹介します。
三。教える・伝えあうということ
1。どんな組織でも、人間の集まりである以上、「教育」という営みがある。
◇教える、育ちあう、学びあう、高まりあう・・・
*それなしには職場や組織は生き生きしないし、理念や目標の
達成はおぼつかない。でも教育それ自体が目的にはならない。
誰しも「教育者」「育成者」としてのトレーニングを受けて
いない。すぐに効果もでない。「働きかけながらも待つ」が
教育の基本姿勢。
◇民医連看護の魅力とは? 何をあなたは伝えたいか? 自分の言葉を持つ。
*民医連の社会的役割と、個々人の価値観が一致するとき、
響きあいが生まれる。
*「民医連」「わが職場」にある“宝物”は何か
◇知って理解してもらうと同時に、「感情をゆさぶる」ような
学びや体験を。
2。育つ主体と環境について―ピカピカ光る「人」と「体験」を
◇種を植えれば芽が出、やがて成長する。これは必然であり、
主体内部の力。
◇しかし、適切な土壌や水分、環境を整えなければ、
枯れてしまうリスクも。
*育つ主体は相手。内的な力。看護師は看護師として育つ力がある。
*あわせて外的要因も大事。「きっかけ」「心動かされる事例」
「スイッチが入る機会」を。
*「餌まき」―いろいろな種類の「餌」を用意しておいて、
食いつくのを待つ。その人その人で、どれにひっかかるのかは
予想不能。「やる気になるスイッチ」は多様。
◇育ちあう環境でもっとも大事なのは、関係性の質。
良質なコミュニケーション。
*意識的な対話活動―基本は1対1の対話。聴くこと中心に。
自分の話をじっくりと聴いてくれる人には、相手の話も
聴こうという姿勢になる。信頼関係の基礎。
*何を言ってもいい。自分を出せる。そうした安全安心の場を
重ねていく。若い世代は意見表明や議論のトレーニング機会
が希薄。1歩1歩経験をつみあげる。関係性がよくなると、
自己を否定される恐れがなくなるので、様々な異なる意見が
提示される。議論が生まれる。
◇育てる人以上に、自分が自分の成長に貪欲か。熱をもつ。
*『学習する組織-現場に変化のタネをまく』
(高間邦男、光文社新書、2005年)
*著者の高間氏が、NTT東日本の法人営業本部の役員に、
インタビューしたときのこと。「戦略は何ですか」と聞いたら、
「学習機会をつくる」というのが答えの一つとして返ってた。
「学習機会とは何ですか」とふたたび聞いたところ、その役員は、
「それはピカピカ光る背中を持つ人間の周りをウロウロできる
ことですよ。しかし問題は、ピカピカ光る背中を持つ人間が法人
営業に20人しかいないことかな」と言ったそうです。
著者はその答えに驚かされて、また納得し、こう書いています。
「人は自分の接する社会、つまり周囲の人や本、インターネット、
様々な経験などから主体的に学習する。その中でも他者との相互
作用から一番多くを学ぶと私は思う」「問題は、ピカピカ光る
背中を持つ人間に運がよくないとめぐり合えないことである」
*つまりどんな人と一緒に働いているか、出会うか、活動できるか
◇教えるということは、つまり学ぶこと。教えるほうも不完全。
模索、工夫し続ける。
◇自ら模索や葛藤を抱えながらも、ともに学び体験しようとする情熱を。
3。対象(自分、他者、職場、社会、政治など)の変化をとらえるための心得
◇変化にも法則性がある(弁証法)
①量的変化と質的変化。コツコツとした、目立たない変化の積み
重ねによって、目に見える質的変化が準備される。地道に。
継続。繰り返し。目的意識的に量を準備する。
②肯定をふくんだ否定。否定を通じてものごとは発展していく。
ダメだし必要。ただし、ご破算型・全面否定でなく。理解しつつ、
ダメだし。伸ばすために評価する。うねうねとした変化を
受容する力、見極める力。良し悪しあわせ持ちながら変化。
③矛盾が発展の原動力。ひとつの物事のなかに、相対立する傾向や
要素がぶつかりあっている。たたかっている。それを矛盾という。
ぶつかりあいのなかで、ものごとは動いていく。相反することが
併存するのが現実。
*「矛盾」をもつ
―「こうありたい自分」と「いまの自分」とのぶつかりあい
*「めあて」になる事柄、「めあて」になる人をつくる。
自己成長の目標と計画をもつ。
4。「今の若い人は○○だ」「今年の学生は○○だ」は、呪いの言葉
(思考の固定・制限)
◇人への評価は「個人」が基本。括って人を語ることには注意が必要。
◇育ってきた環境がそれぞれ違う。文化も個別化。
*結局、1人ひとりと語りあうしかない。
*学生さんの多様な生活背景、発達過程、背負っているものは
それぞれ。表面上は見えないことがたくさんある。価値観もそれぞれ。
*もちろん一般的傾向というのはある。育ってきた時代の特性
(経済・政治・社会・思想・文化)。教育環境。親世代の特徴など。
でも人はそれぞれ違う。そして若い世代ほど、1人ひとりの差異が
大きくなっている。対話する。見方よりもアクションが大事。
◇相手を「ともに学びあい高まりあう仲間」ととらえ、その「発達の
土壌」を耕そう
*発達の土壌をつくれているか。土壌を耕す仲間を広げているか。
必要な肥料を準備できているか。
5。1人ひとりをみると同時に、集団の力を活かす
―高まりあいの場と関係性を
「これは、教育集団における学力というものを考えたことの
ある教師には、実践的にまことに自明なことなのであるが、
子どもにやる気をおこさせるものは、なかまや集団の教育力
にまさるものはない。また、ある教師の個人的教育力が実に
大きくみえるばあいにも、その行使のしかたの実際をしさい
にみると、集団を媒介にして、個々の相互教育力を連動させ、
その波動を集団的に相乗させているばあいが少なくない。
学級集団内部においても、異質な個人的能力のかかわりあい
と、その集団内部の社会的承認と評価が、まさに個人の可能
性に自信と意欲と展望を与えるという点が大きい。じっさい、
学習意欲にしろ、行動意欲にしろ、その子を内側から持続的
に励ますものは徹底した民主主義的人間関係に裏うちされた
なかまうちの期待と相互評価であり、こうして発揮される
個人の可能性の伸びは、集団の発達可能性へと連動していく
のが真相であろう」
(志摩陽伍『生活綴方と教育』青木書店、1984年)
◇他者や集団へのアプローチを通じて、「わたし」も変化する。
*自分自身も学び、伸びていくことで、楽しさや喜びを得られる。
人は他者なしに新しい自分をつくれない。
◇ともに「~しあう」関係性を。
さいごに:後継者育成の実践を技術化していく。言語化・体系化。
誰もが実践できるものに。