長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

4月に読んだ軽めの本たち

前にちょっと書きましたが、
4月は軽い読み物しか読んでいませんでした。
以下、読んだ順に、ぜんぶ紹介します。
おすすめ度を★の数(5点満点)でつけておきます。

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本の表紙も、面倒くさいのでまとめて。

『詩人の旅 増補新版』(田村隆一、中公文庫、2019年)★★★
その名のとおり、詩人による旅エッセイ。時代は1970年代。
隠岐、若狭、伊那、釧路、奥津、鹿児島、越前、越後、佐久、
浅草、京都、沖縄。当時の人びと、風景が伝わってくる。
それにしても、酒好き、女好きの詩人だ(笑)。


『くれなゐの紐』(須賀しのぶ、光文社文庫、2019年)★★★
大正時代の浅草が舞台。少女ギャング団で生き抜く底辺の少女たちを描く。
いつの時代でも、誰もが何かしらの荷物を背負っている。生き抜かねば。


『本のエンドロール』(安藤祐介、講談社、2018年)★★★★★
大手出版社などの本を刷る印刷会社が舞台のお仕事小説。
主要な登場人物、すべて本好き。
それぞれの個性や仕事観がぶつかりあいながら、
1冊の本ができるまでの舞台裏、人間くさい行程を描く。
本は不滅!本好きにはたまらん!


『孤独の歌声』(天童荒太、新潮文庫、1997年)★★★★
天童作品は初めてだったけど、衝撃の鋭利さ。
きつい描写も多いので、好き嫌い別れるかもだけど。


『寝ぼけ署長』(山本周五郎、新潮文庫、1981年)★★★★★
さすが、さすがの山本周五郎。深くて、ユーモアがあり、
ヒューマニズムあふれる、一風変わった警察小説。
山本周五郎って、本当に貧しい人たちが好きなんだなと思う。
これこそ愛だ。「どんなに貧窮のなかにもそれぞれ生きた生活のある」


『晴れたら空に骨まいて』(川内有緒、講談社文庫、2020年4月)★★★★★
筆者の『パリでメシを食う。』のような本(面白い人がどんどん出てくる)
でありながら、それぞれの喪失との向きあい方に言葉の光が。
父との時間を書下ろした部分もふくめ、
自らの近しい人を思い浮かべながら読んだ。死者とどう生きていくか。
読みやすく、読後感爽快。


『盤上の向日葵』(柚月裕子、中央公論新社、2017年)★★★★
将棋と刑事物が混じりあった長編小説。
展開が見事で、読みごたえがあった。
天童市や浅虫温泉、諏訪など行ったことのある場所が
舞台でイメージも豊かに。将棋好きならさらに楽しめそう。


『悼む人(上)』『悼む人(下)』(天童荒太、文春文庫、2011年)★★★★★
一気にぐいぐい読める。見ず知らずの他人の死の現場におもむき、
悼み、「覚えておく」旅を続ける青年の物語。
変人、病人扱いされながらも、周囲の人を変えていく。
着想がすごい。直木賞作品。
さいごの「謝辞」で著者が述べていた執筆過程の逡巡、
苦悩を読み、本作の重みがさらに実感できた。
他人の死、自分の死、誰かに必要とされ、必要とする。
他人の死を悼み、覚えておくことは、難しい。
難しいからこそ、誠実に向き合いたい。


『凍える牙』(乃南アサ、新潮文庫、2000年)★★★
オオカミ犬と主人公の女刑事の疾走場面が気持ちよい。
あとは、まあまあかな。これが直木賞受賞したのはよくわからんな。


『孤狼の血』(袖月裕子、角川文庫、2017年)★★★★
警察もの、しかも描かれるのはヤクザの世界…。
「盤上の向日葵」を書いた同じ作家とは思えない、すご小説。
広島の呉が舞台。警察と暴力団の癒着ともとれる展開の最後に、
おおお!という結末。おもわずプロローグの場面をもう1度読む。すご。