長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

5月に読んだ本たち

5月も、基本的に軽い読み物ばかりでした。
でも、仕事にもきっと活きてくる、と思えるものも多く。
以下、読んだ順にぜんぶ紹介します。
おすすめ度を★の数(5点満点)でつけます。

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『共産党入党宣言』(小松泰信、新日本出版社、2020年)★★★
とある講義準備のため。ひっさしぶりに真面目な本!
と思ったら、ぷぷぷと笑いながら読めた。
といっても、とことんの動画も見てたし、だいたい知ってた内容。
でも小松教授のユーモアで含蓄ある言葉に、改めてエネルギーをもらう。

『改定綱領が開いた「新たな視野」』
     (志位和夫、新日本出版社、2020年5月)★★★★
新聞での掲載時も読んでたけど、書籍になってじっくり読むと、
発見が多いですね。とくにジェンダーのところは勉強になった。

『永遠の仔(上)(下)』(天童荒太、幻冬舎、1999年)★★★★
こんなに精神的に疲れる小説を読んだのは久しぶり。
絶望的なラストを予想していたが、かすかに、
ほんとうにかすかに、踏みとどまる終わり方だった。
背負っているものが重すぎる。荷を分かちあうにも重すぎる。
引き込まれたけど、疲れた。

『閉ざされた扉をこじ開ける~排除と貧困に抗うソーシャルアクション』
                 (稲葉剛、朝日新書、2020年3月)★★★★
地べたで日々活動している著者からの報告と提言。
とくに住宅問題を軸にして。
「外側からのまなざし」を日々更新すること。そして実践。
その先にしか排除のない社会は訪れない。

『ことばハンター 国語辞典はこうつくる』
               (飯間浩明、ポプラ社、2019年)★★★★
『三省堂国語辞典』の編集委員をつとめる著者が
こどもに向けて辞書づくりの面白さを語る。
町を歩きながら「知らない言葉」「ん?と思う使われ方の言葉」を
見つけては写真をとる。言葉は日々変化する。生き物だ。

『火花』(又吉直樹、文春文庫、2017年)★★★★
おもしろかった。お笑い芸人の思索というか、なんというか。
こういう小説はじめてだわ。芥川賞とったのもわかる。
巻末の「芥川龍之介への手紙」もよかった。

『読みたいことを、書けばいい。―人生が変わるシンプルな文章術』
           (田中泰延、ダイヤモンド社、2019年)★★★
これまでも文章術本をたくさん読んできたけど、
これはぶっ飛んで「変」であった。いや、おもしろかった。
本文よりもコラムが勉強になった(笑)。
書くスタンスは人それぞれやなあ。

『路(ルウ)』(吉田修一、文春文庫、2015年)★★★★
台湾に日本の新幹線が走る。その建設事業を軸に、
さまざまな年代の人が織りなす人間ドラマ。
台湾は近い。
歴史的にも日本の占領下時代が半世紀もあり、つながりが深い。
街や風景の描写を読むと、台湾に行ってみたくなる。行きたい!!

『週末は、Niksen。―“何もしない時間”が、人生に幸せを呼び込む』
            (山本直子、大和出版、2020年2月)★★★
タイトルに惹かれて購読。ニクセンとは、オランダ語で
“何もしない”という意味。
日々の生活のなかに、何もしない時間を取り入れる。
オランダ在住の著者がニクセン生活を楽しくスケッチ。

『やがて海へと届く』(彩瀬まる、講談社文庫、2019年)★★★
親友が震災で行方不明になってから3年。
その死とどう折り合いをつけていくのかを綴った物語。
解説で、著者自身の体験がこの物語を生むベースになっていることを知る。
考え続けること、言葉にすること。文学の役割はおおきい。

『パリに行ったことないの』(山内マリコ、集英社文庫、2017年)★★★★
さくさく読めて、読後感よし。
それぞれのパリへの想いと機会が結びつき、第2部へのバカンス旅に。
不思議で魅力的で、人間的な物語。

『あしたの君へ』(柚月裕子、文春文庫、2019年)★★★★★
家庭裁判所の調査官補(調査官の研修期間中の名前)の奮闘記。
人生のつまづき、漂流、葛藤、そして争い。
調査官は、それぞれのバックボーンや背負っているもの、
そしてこれからの思いを大事に、寄り添いながら背中を押す役目。
よかった。

『勿忘草の咲く町で~安曇野診療記~』
             (夏川草介、角川書店、2019年)★★★★★
読後の爽やかさは相変わらず。舞台は安曇野。
神様のカルテとのつながりが一瞬出てきて嬉しい。
1年目の研修医と3年目看護師の恋ばなふくめ、
高齢者医療の現状と葛藤、魅力的な登場人物など、読みごたえあり。

『アルプスの谷 アルプスの村』(新田次郎、新潮文庫、1979年)★★★
山岳小説を書く著者の、アルプス紀行。1964年だから半世紀以上前のものだけど、アルプスの多様な顔や人びとの暮らしが伝わってくる。とくにスイスのアルプスが美しいようだ。アルプスの山陵をこの目で一度はみてみたい。

『ムーンナイト・ダイバー』(天童荒太、文藝春秋、2016年)★★★★★
天童作品は、いつも死がそばにある。
生と死のはざまで、もがき苦しみ続ける。
大震災と原発事故という激浪にのまれた、地域と生活、愛する人との記憶。
進入禁止の海域で潜り続けるダイバーが、喪失と生きる意味をつないでいく。