長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

安倍政権で教育はどうなる

きのう(1日)の午後は、
倉敷の子育てと教育を考える会の総会で講演。

 

「安倍政権で教育はどうなる

   ~憲法の視点で教育を考える」というテーマ。

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1時間ほどお話をさせていただきました。

まあ、教育運動に関わったことがないので、

大枠のお話しかできませんでしたが。

 

 

以下、講義の概要です。




一。安倍政権がめざす教育のかたち

 

1。多国籍企業のための人材育成

2月28日安倍首相の施政方針演説より(資料)

          *「強い日本」「世界で一番企業が活躍しやすい国」

        「世界トップレベルの学力を育むため、力ある教師を養成」

   ◇安倍教育方針の背景にあるもの

ー多国籍(無国籍)資本による教育の変質

    ・新自由主義とは、「巨大化した多国籍資本による国家権力の

             再掌握のもとで、国家政策と社会のしくみが、この支配者の

             意図に沿って、強権的に組み替えられるその手法、しくみ、

       制度、理念の総体である」

(『危機のなかの教育ー新自由主義をこえる』

(佐貫浩、新日本出版社、2012年)

    ・国民との矛盾を吸収する装置としての「ナショナリズム」「愛国心」

 

2。自民党の日本国憲法改正草案からみえてくるもの

   ◇その国民観

*自民党の憲法改正草案(2012年4月発表)を読む(資料)

*「尊重義務」「協力義務」規定のデパート

 

 3。教育再生実行会議の提言をみる

  ◇「いじめ問題等への対応について」(第一次提言、2月26日)

   *いじめが生まれるのは道徳教育が不十分なことに原因。

     道徳教育の強化。いじめを続ける児童については、

     「懲戒」「出席停止」「警察と連携」して迅速に対処。

  ◇「教育委員会制度等の在り方について」(第二次提言、4月15日)

   *地方公共団体における教育行政が、首長が任命する「教育長」に

    権限をできるだけ集めて、政治が教育内容にもの言えるようにする。

  ◇「これからの大学教育等の在り方について」(第三次提言、5月28日)

   *グローバル化に対応する人材を育てるのが大学の使命。

予算配分もそのつもりで。「学生を鍛え上げ社会に送り出す教育

機能の強化」「成長を支える高度な人材育成」

 

 

二。日本国憲法と1947年教育基本法を、私たちの羅針盤に

 1。日本国憲法で、私たちはどんな「決意」をしたのか

  ◇アジア・太平洋戦争(1931~1945年)

   *アジアでは2000万人、日本では310万人の命が失われる

  ◇前文には、日本国憲法の理想と、

わたしたちの「決意」が凝縮されている。

  ◇絶対的な教育勅語

   *従順・忠実な臣民の育成が教育の目的とされた

   *武道の必修化は、スポーツとなった

「戦後の武道」ではなく、「戦前の武道」。

 

 2。1947年教育基本法

  ◇教育勅語からの決別が、戦後教育の出発点

 

     「教育基本法の作成過程では、実は、教育勅語をいつも

      関心におきながら議論が進められたという事実があります。

      他の先進国にはあまり例をみない教育基本法が生まれ

      たのは、『教育勅語』が全人民の心得を支配してきたとい

      う歴史的経緯があったからです」

      (大田尭『わたしたちの教育基本法』埼玉新聞社、2003年)

 

  ◇1947年教育基本法は、いまも教育の羅針盤

 

     「大事だと思うのは、日本国憲法の『理想の実現』は、

      根本では教育の力によるんだとあることです。つまり

      憲法は、文面だけだと理想だけど、これを一つ一つ

      現実化していかなくちゃならない。それは教育の力に

      よるんだと宣言している。これはすごいことだと思います」

    
 「老若男女、主権者である国民一人ひとりが、憲法を

 『身につける』必要があった」

     
     「九条を生き抜く人間を育てるのが、この国のこれから

 の教育だと宣言している」

      (小森陽一・大原穣子

     『読んでみませんか教育基本法』新日本出版社、2005年)

 

 3。個人の尊重(自分もひとも尊ぶ)

 

     「『個人の尊厳』と『人格の完成』をはじめ、『真理と

平和の希求』、普遍的かつ個性豊かな『文化の創造』

という諸価値は、歴史的意義とともに、すぐれて同時

代的、現代的な意義を有している」

   (『教育基本法を考えるーその現代的意義』北樹出版、2000年)

 

     「個人を尊ぶということは、すべての個人を尊ぶ、一人

      ひとりをお互いに尊び合うということです。・・・それぞれ

      の違いを受け入れ、みんなの、その人その人の値打ち、

      もち味を互いに大切にしようという民主主義の基本=

      基本的人権尊重の思想であって、関係性の中での個人

      の価値を尊重するということです」

  (大田尭『わたしたちの教育基本法』埼玉新聞社、2003年)

 

さいごに:言葉と憲法。憲法の理念を自分のものに。