きのう(28日)の夜は、
第86期岡山労働学校「超入門! 資本論教室」の
第8講義でした。
寒風ふきすさぶ中、17名参加。
テーマは「搾取強化の方法」。
相対的剰余価値の生産・・・。
なかなか理屈として理解するのが難しいですが、
機械の資本主義的使用については
みなさん印象に残ったようです。
まだまだぼくもこのところは
説得的に語る力が未熟です。
未熟なレジュメ(省略部分あり)をさらしておきます。
一。おさらい
◇資本が運動する目的は、より大きい貨幣(価値)の獲得にある
◇搾取とは
◇搾取を強める方法の第1番手―労働時間の延長
【補論ー賃金不払労働時間の現代日本でのあらわれ】
「賃金不払残業でもっともありふれているのは、賃金または
割増賃金の支払われない早出や居残りや休日労働である。し
かし、こうした最狭義の賃金不払残業だけでなく、休憩時間中
の労働、仕事に付随した時間外のQC活動・研修・会議、時間
外の保守・清掃・着替え・朝礼・体操なども、賃金または割増賃
金が支払われなければ賃金不払残業になる。また、『風呂敷
残業』、『フロッピー残業』、『USB残業』などと呼ばれてきた持ち
帰り仕事も、賃金または割増賃金が支払われない賃金不払残
業である」
(森岡孝二『過労死は何を告発しているか』岩波現代文庫、2013年)
*現代日本の「時間泥棒」の手法(同書による森岡孝二さんの指摘)
①タイムカードがなく使用者が労働時間を把握していない。
②労働時間の把握を労働者の自己申告に任せ、残業代の請求を抑える。
③申告しても書き直される。
④いったんタイムカードを押した後で仕事をさせる。
⑤上司が認める範囲内しか残業代が出ない。
⑥固定給あるいは歩合給のみで残業代は付かない。
⑦支給される時間や金額に上限が設けられ、それを超過する
部分はカットされる。
⑧法定内残業(法定労働時間と所定労働時間の差)の部分が
ただ働きになっている。
⑨休憩時間や食事時間の一部が仕事のために削られる。
⑩QC・朝礼・ミューティング・清掃・着替え・社内研修などの時間が
業務外扱いをされる。
⑪喫煙・トイレなどの「私的時間」をパソコンに入力させ労働時間から除外する。
⑫1分単位で記録すべき残業時間を30分単位などにして端数を切り捨てる。
⑬「職務手当」や「営業手当」と引き替えに残業代を払わない
⑭「名ばかり管理職」にして残業代を支払わない
⑮早出や持ち帰り仕事には通常の賃金も割増賃金も支払われない。
⑯事前申告のあった残業に限り残業代を支給する。
⑰裁量労働制や年俸制を「固定賃金」のように運用する。
二。相対的剰余価値の生産(必要労働時間の短縮)
1。生産力の増大による「必要労働時間の短縮」の推進的動機
◇労働力の価値を1万円から7500円に下げるには?
*労働力再生産のための「生活費」の価格が下がればいい。
賃金が4分3になっても、労働者の買う商品が4分の3の
価格になれば問題はない。これまで20万円ないと生活でき
なかったものが、月に15万円でも暮らせるようになれば、
労働力の価値は下がる。
*そのためには、「生活必需品」や身の回りの生活にかかわる
「商品」の価値が総体として下がればいい。価値を小さくする
には、その商品を作り出すのに必要な労働時間が社会的平均
として短くなっていくこと=生産力の増大が必要。
◇相対的剰余価値とは?
―直接に剰余価値を増やす目的とは区別しての概念
*労働時間の延長は、資本家にとって直接に剰余価値を増やす
ものであるから、それに熱中する。
*しかし、相対的剰余価値の生産の場合には、生産力の増大が
労働力の価値の低下を通じて剰余価値を増大させるのは、
関係する生産部門の全体がかかわりあう総結果、いわば回り
回っての結果として起こること。
*では、相対的剰余価値の生産に駆り立てる直接の動機や現実の
しくみはどこにあるのか。
◇最大の推進的動機は、「特別剰余価値」の追求(テキスト118~119P)
2。協業(テキスト120~123P)
「労働の生産力を増大させ、労働の生産力の増大によって
労働力の価値を低下させ、こうしてこの価値の再生産に必要な
労働日部分を短縮するためには、資本は、労働過程の技術的
および社会的諸条件を、したがって生産方法そのものを変革し
なければならない」(『資本論』第10章、新書版550P)
◇労働の社会的生産力
「たいていの生産的諸労働の場合には、単なる社会的接触に
よって、生気(“動物的生気”)の独自な興奮と競争心とが生み
出され、それらが個々人の個別的作業能力を高める」
(『資本論』第11章、新書版568P)
「結合された労働者または労働者全体は、前にもうしろにも
目と手をもっており、ある程度の偏在性をもっているから、
144時間の結合された労働日は、多方面の空間から労働対象
をとらえ、自分たちの仕事により1面的に取りかからなけれ
ばならない多かれ少なかれ個々別々な労働者の12時間の
12労働日よりも、より速く総生産物を仕上げる」
(『資本論』第11章、新書版570P)
「労働者は、他の労働者たちとの計画的協力のなかで、彼の
個人的諸制限を突破して、彼の類的能力を発展させる」
(『資本論』第11章、新書版573P)
*しかし、その社会的生産力は資本のものに
・たくさんの労働者をいちどに雇える力
・個々の労働者は、資本との契約関係を個々に結ぶ
・しかし彼らが生産過程のなかで協業をしていくと、社会的生産力に。
それはすべて資本の管理・指揮のもとに置かれ、生産物も資本の
ものとなる。
3.分業とマニュファクチュア―分業にもとづく協業(テキスト124~126P)
◇分業とは
*一般的分業→社会全体での労働生産物の分割的生産
・農業、工業、繊維・・・
*特殊的分業→分野内での分割的生産
・タイヤ、ハンドル、ガラス、エンジン・・・
*個別的分業
・タイヤ工場のなかでの、労働者の分割的労働
◇労働過程が分割される―「これは私がつくったもの」と言えなくなる
「労働が分割される。同じ手工業者によってさまざまな作業が
時間的に並列させられ、それぞれ異なる手工業者に割り当てら
れ、そして協業者たちによってすべての作業が全部、同時に遂
行される。この偶然的な分割が繰り返され、その独自の利益が
明らかになり、しだいに系統的な分業に骨化していく。その商
品は、さまざまなことをする自立的手工業者の個人的生産物か
ら、めいめいが同一の部分作業だけを引き続き行なう手工業者
たちの結合の社会的生産物に転化する」
(『資本論』第12章、新書版588P)
「細目労働者の熟練技を生み出す」(同前591P)
「労働用具の分化」「労働用具の専門化」(同前593P)
◇労働強度の制約
「マニュファクチュアの全機構は、与えられた労働時間内に
与えられた成果が達成されるという前提に立っている。この
前提のものでのみ、相互に補足し合うさまざまな労働過程が、
中断することなく、同時にかつ空間的に並行して、続行できる
のである。労働相互の、それゆえ労働者相互のこの直接的
依存は、各個人にたいし自分の機能に必要な時間だけを費や
すよう強制するのであり、独立の手工業の場合とは、または
単純な協業の場合とさえも、まったく異なる労働の連続性、
画一性、規則性、秩序、とりわけ労働の強度までもが、生み出
される」 (同前600~601P)
「部分労働者は機械の一部がもつ規則正しさで作業するように
強制される」 (同前608P)
◇労働が細部にわたって分割される・・・単純化につながる
*作業が単純であれば、機械が取って代わることも可能になる・・・!
*マニュファクチュアは、機械性大工業発展の前提
4。機械制大工業-労働強化の加速も
「機械設備においては、労働手段の運動および活動が労働者に
たいして自立化する」(『資本論』第13章、新書版697P)
◇生産様式を圧倒的に変革した―手仕事の際限ない駆逐
◇機械の資本主義的な使用―ここ押さえること大事。
*人びとの幸せのためではない(あくまで2次的)。より大きな剰余
価値を求めての導入と開発。
◇労働者におよぼす直接的影響
*機械化は労働時間延長の新しい手段に
*労働強化の新しい方式として
◇労働者と機械との闘争
*機械は、雇用という労働者の存在を脅かす
「機械設備は、それ自体として見れば労働時間を短縮するが
資本主義的に使用されると労働日を延長する、それ自体として
は労働を軽減するが資本主義的に使用されるとその強度を高
める、それ自体としては自然力にたいする人間の勝利であるが
資本主義的に使用されると自然力によって人間を抑圧する、そ
れ自体としては生産者の富を増加させるが資本主義的に使用
されると生産者を貧困化させる」 (同前764P)
「機械の資本主義的利用以外の利用は、彼にとってはありえな
いことなのである」 (同前764P)
三。利潤第一主義がもたらす資本主義の矛盾
1。生産と消費の矛盾-周期的な恐慌
◇生産力の無制限的発展ー「生産のための生産」「蓄積のための蓄積」
◇しかし、「買う」ほうがそれに追いつかない
売って売って売りまくれ! 買いたくてもカネがない!
◇モノを買う先は、4つしかない
*個人(割合55%)、企業(設備投資)、国・自治体、外国(輸出)
*搾取強化(賃金抑制、労働者使い捨て)をすれば、
個人消費は冷え込む。
*日本の大企業の労働分配率の低さ
*社会の大多数をなし、社会全体をささえる主体である労働者
階級を、「貧困」と「労働苦」にしばりつけつづけ、それが資本の
生存条件となっているところに、資本主義的生産様式の致命
的な問題がある。
◇資本主義の「持病」である恐慌は、周期的に発生してきた
*1825(イギリス)、1837~38(イギリス)、1847(イギリス)、
1857(世界恐慌はここから始まる)、1866、1878、1882、1890、
1900、1907、1920、1929(大恐慌)、1937、1957、1974、1980、
1991、2000年前後、2008年以後
*国家が経済へ介入するという緩和策(ケインズ路線)も、恐慌を
なくすことはできなかった。
2。貧困の拡大と格差の極端化
◇貧富の格差の拡大
*世界の人口のうち、富裕層を形成する20%と、貧困層を形成する
20%とを比較した場合、収入の格差は、1960年で「30対1」だった
ものが、1999年には「74対1」と、2倍以上に広がっている
(2003年、ILO事務局長報告)
*世界の人口の約半分に相当する30億人は、1日あたり2ドル以下
での生活を強いられ、さらにそのうちの10億人は、1日1ドル以下で
生計を立てざるをえない状況(同報告)。
◇世界的な規模での失業者の増大《国際労働機関(ILO)報告》
*1997年1億4000万人→2000年1億6000万人
→2003年1億8000万人。2013年にはじめて2億人を突破。
*失業者(相対的過剰人口)は、絶対的に資本に従属させられる
「過剰労働者人口が、蓄積のーまたは資本主義の基礎上での富の
発展のー必然的な産物であるとすれば、この過剰人口は逆に、
資本主義的蓄積の槓杅(こうかん〔てこ〕)、いやそれどころか資本
主義的生産様式の実存条件となる。それは、あたかも資本が自分
自身の費用によって飼育でもしたかのようにまったく絶対的に資本
に所属する、自由に処分できる、産業予備軍を形成する。それは、
資本の変転する増殖欲求のために、現実的人口増加の制限にか
かわりなくいつでも使える搾取可能な人間材料をつくり出す」
(『資本論』第23章、1087P)
◇投機マネーの膨張ー富の偏在とかく乱
3。強い「反作用」を生み出す
◇資本の野蛮な振る舞いにたいして
*人びとのたたかい、社会による資本の規制を生み出す
◇そうした「反作用」が、資本主義を変革する主体の形成を成熟させていく
以上。
感想文を少し。
◆知り合いに工場で働いている方が言ってたけど、
「しんどい!」「まるで自分も機械だ!」と。今回の
講義は少し難しく感じた部分もあったけど、なるほどー
と思えるところもありました。
◆難しかった・・・! 専門用語が頭でグルグル…。
便利で人を幸せにするために使える機械を剰余価値
のためにしか使えないのは悲しい。資本家も資本に
支配されてるんだなーとあらためて思いました。
◆資本主義のカラクリがよくわかりました。このような
しくみをきちんと理解していないと、活動も長続き
しないと思います。労働者がまず学ぶのは「資本論」
ですネ!
◆機械を導入すると労働者は楽になるどころか一層
忙しい思いをして機械に使われるのは本当に非人間的。
◆自分の8時間労働でどれだけの剰余価値を生み出す
のか、皆わからず、ひたすら働いている。機械化によって
人間の労働は楽になるはず。使い方が「資本主義的」だと、
機械に合わせて働くので労働強化になる。