長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

連載「チラシ・ニュースづくりの基礎知識」(1)

第1回「チラシの役割―送り手と受け手の関係」

 

【最終目的は、心を動かす】

 

 「チラシをみて、ビビッときました」

 

 以前、岡山労働学校の哲学教室に参加した若い女性から、

受講の動機として、チラシをみて心を動かされたこと、「これだ!」

と思って受講したと聞かされました。

 チラシの最終目的は、受け手の「行動」を生み出すことです。

そのためには、受け手の「心を動かす」ことが必要です。「あ、

これ行ってみたい!」「聞いてみたいこの講演!」となるように。

 

 しかし、これがとても難しいのです。

 

 アートディレクターとして有名な佐藤可士和さんは、著書『佐藤

可士和の超整理術』(日経ビジネス文庫)のなかで、「広告なんて

誰も見ていない。これは、僕が会社に入って間もない頃に実感した

ことです」と語られています。

人にメッセージを伝えるプロフェッショナルの佐藤さんがこうい

うのです。さらに佐藤さんはこう語っています。

 

 「広告を発信する側としては、伝えたいことはたくさんあって、

一般の人たちも当然注目してくれるものと思いがちです。ところが、

受け手側というのは、発信者のそんな思いなど、ほとんど意に

介していません。なぜなら、日常生活のなかでは、自分の身の回り

の出来事や問題で精一杯になっているからです。人は自分の心に

バリアを張っていて、無意識のうちに外部情報を遮断しています」

 

 「メッセージを相手に伝えるというのは、本当に難しいことです。

伝わっているはず、と自分では思っていても、実際には伝わって

いないことのほうがはるかに多いもの。全体の半分くらい伝われば

いいほうで、100%わかってもらうのは至難の業とといっていい

でしょう」

 

 私も、まったく同じ思いです。「送り手」と「受け手」には、かなりの

距離と温度差がある。だから、「伝える」ことは、とても難しいのだ、

ということを前提に考える必要があります。

 

【送り手の誠意や熱意がチラシに表れる】

 

 私たちの運動や活動のなかでもっとも身近なメディアのひとつで

ある「チラシ」。毎日、毎日、私たちはいろいろなチラシを目にします。

そこには、「送り手」と「受け手」の関係が生まれます。

 「送り手」は、そこにメッセージこめます。それは、企画やイベントの

告知であったり、ニュース的なものであったりするわけですが、

ポイントは、「送り手」の「誠意」や「熱意」が伝わるかどうか。それは

どこに表れるかというと、チラシのデザインやレイアウト、そしてチラシ

に書かれる言葉です。

 

 私もいろいろなチラシを日々目にしますが、「ほんとうに来てほしいと

思ってつくっているの??」と疑問に思うチラシを目にします。「送り手」の

熱意がまったく伝わってこないのです。

 チラシづくりの前提になるものは、メッセージを伝えたいという送り

手の「誠意」や「熱意」だと思います。それがなければ、「工夫」「熟考」

が生まれません。安易なチラシづくりになってしまいます。それでは、

相手の心を動かすことはできません(もちろん情報の内容が魅力的な

ものであることは前提です)。

 

 チラシにこめられた情報が、どのように届くかは、段階があります。

第1の段階は「知らせる」ということです。まず、興味を引く、目を引く

チラシであること。チラシを読む時間はたった1分程度のことです。

しかし、私たちの日常は広告にあふれていますので、その「1分」の

時間をとってもらうこと自体が難しいのです。「注目してもらう」「読んで

もらう」というのは、まず立ちはだかる高い壁です。

 第2段階は「理解させる」ということです。適切な内容や素材を使い、

賛同や共感・好奇心を「受け手」にもってもらうことです。読んでくれたは

いいけど、「なんだっ」「いつものやつか」と思われれば、それで終わり

です。「へーなんか新鮮」「おもしろそう」と思ってもらえるかどうか、次の

壁です。

 第3段階が「行動させる」です。実際に参加や購買につながることです。

これがチラシの最終目的です。くりかえしますが、行動を生み出すには、

相手の納得と利益につながり、「心に響くもの」がなければなりません。

メッセージが相手に伝わり、さらに相手の行動を生み出す。これはほん

とうに至難の業ですが、チラシの最終目的はここです。

 

 ところで、多くのチラシは、第1段階の「知らせる」ところにもいかない

のです。内容を見ずに「捨てられる」運命のチラシがいかに多いか。

わたしも「あのチラシ見てくれましたか?」と聞いて「いや…見てないなあ」

と言われ、がっくりくることの連続です。いかにチラシを読んでもらうか、

その段階がもっとも難関です。

 

 「どうやったら読んでもらうか」というところをいかに突破するか。その

ための技術が、「チラシデザイン」です。

さらに、「行動を生み出す」ためには、「言葉の力」が必要です。

 

 そうした「読ませる技術」「言葉の力」については、今後の連載で

さらにつっこんで考えていきたいと思います。