長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

幸せになるために(結婚について)レジュメ

日曜日(1日)に講師で参加した
「第16回働くものの学習交流集会inうどん県」
の講義レジュメ(概要)です。

テーマ
「幸せになるために―協力・成長・思いやり」

はじめに
「結婚とは?」を考えることができる時代
100人いれば100通りの答え。そして学校教育では教えてくれない。
国や地域によって結婚のあり方、文化も違う
結婚というものを客観視・相対化できるようになった時代
昔は…「結婚するのが当然」「結婚年齢もほぼ決まっていた」「相手も…」
「恋愛―結婚―幸福」の公式はここ50年ほどの歴史(最近は破たんぎみ)。

一。結婚をする・しない(できない)をめぐる現代日本の諸相
 1。結婚するためには
  ◇相手が必要(出会う、関係を築く)
   *出会いの「場」と、出会い・関係を築く「時間」
   *「両性の合意のみ」(憲法24条)で可能だが、まわりの
    祝福も可能な限りほしい
   *自己肯定感情が低いと言われている若い世代
     -「草食系」の背景に

  ◇恋愛・結婚をめぐっての商品化
   *出会い機会も商品に、デート、プレゼント、結婚費用etc
    →お金もやっぱり必要!
  ◇結婚の延長線上にある「生活」。それを支える収入という「壁」。
   *「愛さえあれば…」は可能か? 
    「養う・養われる」というジェンダー意識?
  ◇日本の雇われ組の現状-ゆとりなし


 2。結婚しないという選択(積極的・消極的)―結婚への価値の相対化
  ◇結婚に幸せを見いだせない?―自由な時間が減る、経済的不安
  ◇日本における「結婚の価値」の低下? とくに女性の意識変化。


  【ブレイクタイム(あくまで遊びです)
            -「理想の結婚相手」を考えてみよう!】
   *あなたが、結婚相手に求める条件とは?
    (持ち点20点で配分してみてください)

   ①性格がよい(  )、②健康である(  )
   ③趣味が一致する(  )、④収入がよい(  )
   ⑤私の考えを理解してくれる(  )、⑥家事が上手(  )
   ⑦私を大切にしてくれる(  )、⑧顔・スタイルがよい(  )
   ⑨わたしの家族とうまくやっていける(  )、⑩将来性がある(  )
   ⑪子どもが好きである(  )、⑫ひとりっこや長男ではない(  )


二。しあわせな結婚とは何か?
 1。「結婚=幸せ」?
  ◇結婚はゴールではない
   *未来への生き方として選択した人間関係
  ◇共同生活の開始(仕事と家事の両立)、
    出産・子育て・教育問題、山あり谷あり
  ◇喜び、悲しみ、怒り、楽しみ。ともに歩む。ともに話しあう。
    主従でない関係。
   *力関係でゆがみをつくらないためには…
   *経済的自立の大事さ(勤労権を掲げた憲法27条の意味)
  ◇ゆとりが必要→協力・成長・思いやりを培うベース

 2。日本における「夫婦」「家族」「子育て」のあり方の
                 ゆがみとジェンダーバイアス
  ◇日本的M字型雇用の問題
   *欧米諸国でも、1970年代頃まではM字を描いていたが、
    現在では台形に近い。
   *現代日本の経済社会に、女性の手から仕事(経済的自立の
    条件)を奪い、女性を家庭に追いやる強力な力が存在している。

    ①「男は仕事、女は家庭」「子育ては母の手で」意識の根強さ
    ②家事労働ハラスメント
          -仕事と家事労働を両立できない(過重負担)

  ◇「母性神話」「3歳児神話」―育児責任の集中による負担と不安

   *そもそも人間の子育ては大変-その理由
   *「育児だけ」の不安と葛藤
             -育児面、個人としてのアイデンティティ
    ・社会からの孤立、「自分」喪失の不安、夫との関係への不満
   *「授かる」から「つくる」へ
         -子どもの価値の相対化(他の価値との比較化)
    ・仕事、趣味、生き方、時間的負担、心身の負担、
     経済的負担・・・さまざまな葛藤。
    ・こうした葛藤は、現在60歳以上の母親ではあまり考え
     られることがなかった
    ・自分のしたいこと、生きがいがあればあるほど、子どもは
     自分と対立する存在にもなる。「母親である自分」以外の
     「自分」をもてなくなる。

   *多重役割を担う「働く母」は忙しいが、精神的には充実度が
    高い傾向(それぞれが適度な量かつ主体的な関わりが前提)。
   *父親をする条件が奪われている男性。子育てする権利。
    人間としての発達。

  ◇家事労働ハラスメント
          -働く裏側には、必ず家事や育児、介護の労働が

    「その分配が過重になるとき、『家事』はその
    担い手を破壊しかねない」
    「家事労働の担い手を賃労働の世界から排除しようとする仕組み」
    「職場は女性への暴力でいっぱいだ」
             (竹信三恵子『家事労働ハラスメント』岩波新書)

  ◇法律、制度自体の問題も
   *夫婦同一性の強制はいまや先進国で唯一となった
   *日本では法律婚は依然として事実婚や同性愛者の
     カップルとは違う有利な扱い
   *配偶者控除などの問題

     「これは妻に支払われるものではなく、夫の給与所得に
     対する控除だからだ。この控除は低福祉社会日本を支え
     る家庭内福祉の担い手としての女性を位置付け、扶養に
     よってそうした担い手を家にとどめている夫に対して支給
     されてきた『補助金』と考えると理解しやすいかもしれない」
                         (竹信三恵子、前掲書)

  ◇男女間賃金格差がうむもの
     ―力関係の違い。離婚の不自由。女性高齢者の貧困問題。

     「ドメスティック・バイオレンスの基礎にあるものは、セクシュ
     アルハラスメントなどと同じく、2人の力関係の違いである。
     力関係の違いがなぜ生まれるのかは、ドメスティック・バイ
     オレンスを個人間の問題に閉じ込めず、かつ、これをなくし
     ていくことを考えるために、重要な視点である」
                  (角田由紀子『性と法律』岩波新書)

  ◇国際社会からも批判
       -国連・女性差別撤廃委員会からのたび重なる勧告

 3。すべての労働者が人間らしく働ける社会は、
             しあわせな結婚生活を支える土台。
  ◇ジェンダー平等はILO(国際労働機関)提唱の
   ディーセントワークをつらぬく柱
  ◇仕事と私生活は区別しつつも関連がある
  ◇労働組合の存在意義-ジェンダー平等の課題も追求しよう
  ◇社会が平和であること、1人ひとりが尊重され差別がないこと。

さいごに:問いをもつことの大切さ。学習の大切さ。
  *自分のなかの違和感、不安感を大事に。仲間と学び考えよう。
  *男女関係のあり方、結婚・家族のあり方の
   社会性・歴史性を見通す力を。


【参考文献(引用したもの以外で)】
『正しいパンツのたたみ方―新しい家庭科勉強方』
               (南野忠晴、岩波ジュニア新書)
『未妊-「産む」と決められない』
               (河合蘭、生活人新書)
『格差社会を生きる-男と女の新ジェンダー論』
                  (杉井静子、かもがわ出版)
『父親になる、父親をする-家族心理学の視点から』
                 (柏木恵子、岩波ブックレット)
『はじめてのジェンダー・スタディーズ』
 (森永康子・神戸女学院大学ジェンダー研究会、北大路書房)