長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

大好評の絵本学習交流会

きのう(29日)の夜は、
有志企画の「絵本学習交流会」でした。
宣伝ちょびっとしかしてなかったのですが、
15名も参加で、びっくり。

ことのなりゆきは、昨年の88期岡山労働学校を
受講してくれた絵本屋さんに勤めるMくん。
労働学校の講義前、受講生による15分間の
ワンポイント講座で、絵本とはなんだろう、
いい絵本とそうでない絵本の違い、について
語ってくれ、これが大好評。

「もっと聞きたい」という声にこたえて、
昨夜の拡大ヴァージョンになったわけであります。
Mくん、じつによく絵本について勉強していて、
絵本の哲学をしっかり身につけているなと感心です。
絵本を語る熱さが、すばらしい(笑)。
参加者みな、くいいるように話をきいていました。

【以下、Mくんのお話のメモです(文責すべて長久)】

自分の仕事のまず第一は、
福音館(ふくいんかん)の月刊誌「こどものとも」
などを定期的に保育園などに届けること。

福音館の月刊誌は、お話絵本と言われ、
1回1話で、1年12冊で12話。

しかし他社の総合絵本と言われる月刊誌は、
お話もあれば(ただし短い)、絵もあれば、
キャラものもある。付録も。

大人からしてみれば総合絵本のほうが
「子どもが喜びそう」と思えるが、
じつは子どもにとっては、総合絵本の中身は
ほとんど記憶に残らない。

絵本とは、子どもの心を育てるもので、
子どもが大きくなっても、
おぼえている絵本とそうでない絵本がある。
その違いをぜひ考えてほしい。
いい絵本というのは、子どもの記憶に残るもの。

たとえば有名な『ぐりとぐら』。
みなさんはどの場面を思い浮かべるか。
たとえばホットケーキの場面。
「におい」を感じ、記憶するという子どもも。

また、絵本は「大人が子どもに読むもの」であり、
それが絵本の本質のひとつ。
読んでもらった楽しさ。その記憶が大事だと。

絵本は、子どもの想像する力を引き出すもの。
大人は字を読みがちだが、子どもは絵をみる。
子どもの想像力の余地を広げるために、
絵本にはさまざまな工夫がある。
『ぐりとぐら』でも、ページはすべて白地で、
あえて空白をたくさんつくっている。

五味太郎の『きんぎょがにげた』も、
絵を見て楽しめる絵本。
子どもはちゃんと絵を見ていて、気づく。

『おでかけのまえに』も、
子どもは自分の経験などをふまえて想像しながら読む。
絵本の表紙や裏表紙も中身と連動している。
「おしまい」、という余韻も大事。

『もりのなか』という絵本も評価が高い。
さいごのお父さんの言葉がすごい。
「きっと またこんどまで まっててくれるよ」と。
森の動物たちとの遊びを否定しない。
いつでも遊びにいける。それはお父さんも
そういう体験をしてきたから。

『かいじゅうたちのいるところ』もそう。
フィクションで想像の世界だけど、
子どもたちにとってはそれが真実になる。

すっと話に(その絵本の世界に)入っていける
絵本も、いい本と言われている。

『三びきのこぶた』、結末は各社の本で違う。
オオカミは逃げたか、あるいはオオカミを食べたか。
福音館のものは最後、鍋でオオカミを食べている。
裏表紙ではそれを称えるような絵も。
もともとはイギリスの昔話。
他社の『三びきのこぶた』は、絵も「かわいい」し、
オオカミも恐くない。

まったく言葉のない絵本も。
『やこうれっしゃ』。
登場人物それぞれの物語としても読める。

『ごろごろにゃーん』や『きゅうりさんあぶないよ』、
『もこもこもこ』など、
大人からみれば意味がわかりにくい絵本も。
自分も説明できない。
でも子どもはおもしろがる。絵をみながら。

大人は絵本に意味を求めたがるが、
絵本はそういうものとは少し違う。
レイチェル・カーソンは「感性」の大事さを説いた。
絵本は、大人が意味を求めるよりは、
読み聞かせるなかで、
子どもから楽しさや気づきを教えてもらうもの。

いろんなジャンルの絵本を読んであげてほしい。
科学絵本もある。
『ちょっとだけ』という絵本も、子どもの気持ちを
よく表わしていて、とてもいい絵本。

大人になっても心に残っている絵本を、
1冊でいいのでもってほしいと思う。

【ここから、質問に答えるかたちで】

絵本を選ぶさいには、「成人を向かえている」、
つまり初版から20年たっている絵本は、
まずいい絵本。

童心社、岩波、福音館。
編集の力量がちがう。作家にちゃんと求めている。
簡単に出版されない。長い時間をかけて、
作家と編集者のやりとりのなかで、
何度も書き直しをしながらつくられている絵本。
とくに言葉。

大人は、「知育」のために絵本を選びがち。
お勉強にもなる本ということで。
もちろんそういう絵本もあるが、
絵本は知育のためではない。

絵本を読むのも積み重ね。
0歳児から、1歳児、2歳児と、
読む積み重ねが大事で、
年長組みになると童話も読める力がつく。
いきなりは読めない。


(以上)


2時間あっという間に
時間がすぎた絵本学習交流会でした。

こういう企画は、楽しい。
学習運動も、絵本から学ぶべきところも
あるように思います。うん。