長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

憲法学習と若い世代の変化

昨日の「科学者九条の会・岡山」での
講演「憲法学習と若い世代の変化」レジュメの概容です。

はじめに
自己紹介および、長久の憲法の読み方について
①主権者教育・運動の力にどう役立てるか
という角度(人権、生き方)
②生起する社会問題をつねに憲法の
立場でみる(フィルターとしての憲法)
③たたかいの指針や道具としての憲法。
とくに労働運動と憲法。

一。憲法学習会の講師活動
 1。2004年~2014年のあいだに、岡山県学習協に
   講師依頼のあった憲法学習会
  ◇2004年6回
  ◇2005年64回
  ◇2006年7回
  ◇2007年26回
  ◇2008年4回
  ◇2009年8回
  ◇2010年4回
  ◇2011年0回
  ◇2012年8回
  ◇2013年42回
  ◇2014年13回

   *2000年1月:国会に憲法調査会設置
   *2003年3月:イラク戦争開戦
   *2003年11月:総選挙で自民党が選挙公約に「改憲」を提起
   *2004年6月:「九条の会」発足
   *2005年11月:自民党「新憲法草案」発表
   *2006年9月:安倍内閣発足(~2007年8月)
   *2007年5月:国民投票法が成立
   *2009年8月:民主党が総選挙で勝利し政権交替。
   *2012年4月:自民党「日本国憲法改正草案」発表
   *2012年12月:自民党が総選挙で勝利。第2次安倍内閣発足。

  ◇学習会の分類
   (対象によって、切り口・内容・構成など変わってくる)
   【労働組合】
   【民主団体・サークル】
   【九条の会】
   【政党後援会】
   【職員研修・職場学習会】

 2。連続学習会のカリキュラム
  ◇岡山医療生協平和サークルおりづる
    (3回講座。2013年6月~7月)
   ①日本国憲法の歴史―その背負っているもの
    (日本の侵略戦争、憲法の制定過程)
   ②そもそも憲法って何?―その心を学ぶ
    (憲法の構造と目的、自民党の改憲案読む)
   ③人類の宝、憲法9条を世界に
    (憲法の平和主義の考え方、9条が果たしてきた役割)

  ◇もみの木保育園職員学習会
    (全12回。2102年6月~2013年5月)
   ①日本国憲法の誕生以前-明治憲法下での国民は
   ②日本のおこした侵略戦争
   ③日本国憲法の制定過程-ドラマがたくさん
   ④憲法とはなにか-その本質と全体像をつかむ
   ⑤基本的人権-その中心点は「個人の尊重」
   ⑥自由権とは-自分が自分であるために
   ⑦国が責任をもって-社会権のはなし
   ⑧憲法9条の意味と力
   ⑨自民党憲法改正草案を読む
   ⑩憲法の心にみみをすます―まとめの話

 3。参加者、とくに若い世代の多い反応について
  ◇「普段、憲法について学んだり考えたりすることがない」
  ◇「あらためて条文を読んでみて、とても素晴らしい内容だとわかった」
  ◇「学校で習った覚えはあるが、こんなに詳しくは学ばなかった」
  ◇「立憲主義のことは習った記憶がない」
  ◇「政治に関心をもっていきたい」
  ◇「こんなにいい憲法があるのに、現実は生かされていない」
  ◇「憲法9条は守っていかなくてはいけない」

 4。講師活動で大事にしていること
  ◇情勢より前に、まず憲法そのものの
    条文を知ってもらう(何が書いてあるか)
   *憲法全文を1枚の紙におさめる資料を作成
    (自民党改憲草案も同じように作成)

  ◇憲法の全体構造(柱であり目的は3章)を理解してもらう
   *憲法をまるごと理解するなかで主権者としての成長が

  ◇憲法の読み方(読む順番)
       ―「第10章(最高法規)から読みましょう」
   *憲法自身の「自己紹介」となっている、97条・98条・99条

  ◇歴史を知ってもらう
   *日本の近現代史、とくにアジア太平洋戦争の歴史と内容

  ◇憲法は何を私たちに求めているか
    (「不断の努力」の中身とは)
   *憲法の理念を、自分のものとしてつかみなおす
    (とくに第3章の基本的人権)
   *その「憲法のメガネ」で社会や政治をみる力を
    (政治に強くなる)
   *お上にもの申すことができる(16条の請願権)。
     署名、集会、請願、抗議行動…。
   *憲法21条の実践
     ―集まる、組織を強くする、話しあう、書きあう、表現する!

   ◆必ず感想で出てくる「憲法と現実のギャップの『なぜ?』」
    それに答える


二。憲法をテーマにした労働学校
 1。試行錯誤のカリキュラム
  ◇労働学校とは―毎週木曜日の夜開催。年2回開校。
   参加者の6~7割は若い世代。

  ◇2004年5月開校
   67期岡山労働学校「憲法教室」(受講生36名)
   ①「私と憲法」
   ②「受講生による自主ゼミ①―憲法には何が書いてある?」
   ③「ビデオ鑑賞―『私は男女平等を憲法に書いた』」
   ④「What?権利&義務―人権条項を読む」
   ⑤「政党ってなんだ?―憲法からみら政治のはなし」
   ⑥「法の番人はどこに?―日本の司法ABC」
   ⑦「受講生による自主ゼミ②―他の国の憲法とくらべてみよう」
   ⑧「憲法を絵にかいたモチにしない―朝日訴訟から学ぶ」
   ⑨「理想かそれとも現実か?―安保と憲法そのゆくえ」
   ⑩「憲法の理念を世界に―私たちにできること」

  ◇2008年10月開校
   76期岡山労働学校「活憲教室」(受講生21名)
   ①「憲法9条が世界を変える」
   ②「まずはみんなで考えよう-私はこの条文に注目!」
   ③「歴史のなかの日本国憲法-97条の意味」
   ④「憲法の全体像をおさえよう-活憲の視点で」
   ⑤「命の格差とたたかう-25条を活かす」
   ⑥「24条の成り立ちと意味-男女平等の課題を考える」
   ⑦「人間らしく働くために-27条・28条をかかげて」
   ⑧「私たちにできること-不断の努力を考える」

  ◇2012年10月開校
   84期岡山労働学校「自分のことばで憲法教室」(受講生22名)
   ①「なぜいま憲法を学ぶのか」
   ②「憲法の自己紹介ー第10章と全体の構造」
   ③「日本国憲法誕生以前、以後ー歴史のなかの憲法」
   ④「憲法の人間観ー13条・14条のはなし」
   ⑤「自分が自分であるためにー自由権のはなし」
   ⑥「国が責任をもってー社会権のはなし」
   ⑦「健康で文化的な最低限度の生活って???」
   ⑧「平和でなければー9条とまとめのおはなし」
   ⑨「わたしの好きな、この条文ー自分の言葉で」


 2。労働学校の特長を生かして
    ―まるごと学ぶ。討論の積み重ね。仲間との出会い。
  ◇8回~10回の連続学習会だからできること
   *1回の学習会では説明しきれないところを、じっくり学ぶことができる
   *学びの積み重ねと、討論の積み重ねで、理解がより深まる
  ◇知識としての憲法とあわせて、「活憲」の立場で学ぶことを重視
  ◇ともに学ぶ仲間の存在


三。今後の改憲の動きにどう向かっていくか
 1。圧倒的に「入っていない」現状から出発する
  ◇「多数の力でたたかい取った」憲法ではない制約
   *大日本帝国憲法から日本国憲法への突然の飛躍
   *あわせて、改憲政党の自民党が戦後ほとんどの期間、
    政権につくという状況
   *多くの人のなかに、「憲法が染みついていない」現状

  ◇ふれる機会を増やす
   *語る人、学べる場、書籍、広告、ネット
   *「憲法は政治的」という雰囲気があるなかで
  ◇学校教育に期待。教職員運動が決定的。
  ◇労働運動、市民運動を広げること
  ◇それぞれの立場、環境で、それぞれなりの方法で
  ◇九条の会などの「草の根活動」が大事

 2。歴史教育を広げる
  ◇国際公約としての憲法9条。前文の2つの「決意」について。
  ◇歴史修正主義により近隣諸国との関係悪化
   →国民の不安材料に→改憲の足場に
  ◇近現代史も―憲法をもとに、
    戦後日本はどのように歩んできたのか
   *昭和天皇の免罪、沖縄の切捨てと9条はセットということも

 3。憲法とともに生きる主権者を増やす
  ◇基本的人権を知り、メガネにし、使う
  ◇とくに社会権で「たたかう」
   *自己責任論が簡単に入ってしまう現状―生活、教育、労働
   *たたかいのなかで、国家と国民の関係などつかむ


さいごに:ピンチはチャンス
     ―憲法をめぐる大きな綱引きがこれから行われる
     「活憲」の側に綱を引く人を多数にできれば、
     日本社会を変革する確かな力に
     主権者・運動が強くなれば、必ず改憲は阻止できる
     若い世代の動向も大事になってくる