倉敷医療生協労組での
お昼休みろうどうくみあい入門講座5回目。
「知っておきたい働くルール」のレジュメです。
30分の話です。
一。なぜ働くルール(法律)が必要なのか?
「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
②賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、
法律でこれを定める。
③児童は、これを酷使してはならない」(憲法27条)
→勤労条件の法定主義、という。使用者に法律を守らせる。
→労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法、パート労働法、
労働契約法・・・
→労働条件を決めるときに、使用者は圧倒的に有利な立場。労働者は
ひとりでは労働条件の交渉ができない。労働条件が劣悪だと、生活
が成り立たない。だから「人たるに値する生活」を保障するために
最低限のルールを法律で決める。
→ただしその最低限の法律すら守られない職場も多数。労働組合が
欠かせない。
◇労働基本権をフル活用して「チェック機能」「対等に交渉」
「労働条件の引き上げ」を
*日本国憲法28条の、労働基本権(労働三権)
→「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動を
する権利は、これを保障する」
*団体交渉権・ストライキ権(争議権の中心)は、労働組合にだけ
認められている特別な権利。立場の弱い労働者に「これでがん
ばれ」と手段をあたえる趣旨。
二。労働基準法を中心とした労働法についてのポイント
1。労働基準法の原則を、あらためて確認
◇憲法27条2項の勤労条件の法定主義を受けて、1947年に制定
*使用者が守る義務のある法律(違反した場合には刑罰を科す取締法規)。
労働基準法は最低基準。どんな零細な会社の使用者でも守れる
ようなものという意味。
◇学ぶことは自分のためでもあり、家族・友人・知人を守る知識にもなる。
*ブラック企業(意図的に法律違反の働かせ方を強いる企業)の
餌食にならない
◇労基法は冒頭で、労働条件についての大事な原則を宣言している。
*第1条1項
「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を
充たすべきものでなければならない」←これは使用者に向けての命令。
*第1条2項
「この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働
関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはな
らないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない」
*第2条
「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべき
ものである」
*第3条
「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、
賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしては
ならない」
*第4条
「使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、
男性と差別的取扱いをしてはならない」
2。働くルールを知る(ごく一部)
―権利行使は権利を錆びつかせないために必要
◇賃金の原則
*支払い方法のルール。労働者に直接払うこと。通貨、つまりお金で払う
こと。全額を払うこと。毎月1回以上、一定日払い。(労基法24条)
*賃金額は、おおきくいえば、使用者と労働者の力関係で決まる(職場・
産業・国全体の労使の力関係)。また、最低賃金法は、都道府県ごと
に時間あたりの最低賃金額が決めている。岡山は735円(他の先進国に
比べて低すぎる最低賃金額)。
*一時金(ボーナス)については、法律的なルールはない(退職金も)。
就業規則に記載されることが多い。たたかいによって引き上げる努力を。
◇一方的な労働条件の変更はしてはならない。
*労働者の同意なく、合理的理由もない一方的な就業規則の変更、
賃下げなどは、「不利益変更」ということになり、してはならない
(労働契約法9条)。
◇労働時間の原則
*1日8時間、週40時間以上、労働者を働かせてはならない
(労基法32条)
*1日8時間以上働かせる場合は、特別の協定が必要となる
(労基法36条)。また、延長された時間に対応した2割5分増しの
割増賃金の支払いも必要(37条)。
*労働時間が6時間をこえる場合においては少なくとも45分、8時間を
こえる場合は1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければなら
ない(労基法34条)。
◇休日の原則―長く働き続けるための保障。健康担保。リフレッシュ。
休みは人権。
*毎週1日はかならず休日をあたえなければならない(労基法35条)。
*6か月以上勤務した労働者には有給休暇を与えなければならない
(労基法39条)
*自分の休みたいときに。とくに連休。ただし連続取得の制度が
日本にはない。
*有給休暇で休んだ日に何をするかは自由(理由の申告する必要なし)。
使用者は、労働者が申し出た日に有給休暇を与えなければならない。
使用者には時季変更権があるが、特殊な事情の場合のみ(労基法
39条)。有給消化100%は最低限の権利であって、使用者はそれを
保障するための人員配置をしなければならない。
*生理休暇は、どんな働き方でもとれる(労基法68条)。医師の
証明は不要で、申し出のあった日数とれる(時間単位でも可能)。
有給・無給は会社によってちがう。
◇労働安全衛生について
―労働者が心身ともに健康で働ける職場をつくる使用者義務
*具体的には、安全な仕事環境の確保の観点から、労働安全衛生法が
安全教育の必要性や健康診断を受ける権利(使用者には義務)に
ついて規定。また、仕事上のケガや病気にたいしては、労働者災害
補償保険法(労災保険法)が対応している。
*労災かどうかを判断するのは会社ではなく労働基準監督署(労働法が
職場で守られているか監督する行政機関)。
*過労死・過労自殺、メンタル不全をなくす。職場でのハラスメントを
許さない。
◇妊娠・出産(母性保護)、育児・介護とジェンダー・男女平等に
ついての権利も。
3。まだまだ大事な学びのテーマがありますが・・・
◇ILO(国際労働機関)などがつくりだしている国際労働基準も
知っておきたい。
◇職場の「働くルール」(労働組合が勝ち取ってきた)もよく学び
活用しよう。
◇働くルールには歴史が凝縮。先輩労働者のたたかいを受け継ぎ、
前進させよう。