長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

茨城セミナー講義概要(5)最終回です

岡山労働学校の実践と教訓
 
ここで、岡山労働学校運動の実践を紹介し、そうした学び
あいの場づくりのヒントとしてもらえればと思います。
 労働学校のことをいちおう定義づけしますと、一定の期間、
連続的に学習を行い、系統的・多面的に学びを深める場です。
とくに基礎理論の学びを大事にする学校です。「聴く」学習
なので、比較的入りやすいのが特徴です。だから若い世代の
労働者がおもな対象になります。職場・職種をこえた交流が
できる貴重な機会。異質なものとの出会いとその効能は成長
には欠かせない要素です。労働学校は、「集まること」の
長所を生かした学習形態にすることが必要です。討論を重視
する。交流もとことんする。土壌を豊かに耕す努力です。
 労働学校は、全国的にみても、募集活動に困難を抱えてい
ます。客観的事実として「職場の多忙化」「労働者の貧困化」
「労働組合活動の困難」があります。労働学校に参加するに
は、「時間」「場所」「体力」「お金」の壁があります。
「労働学校」という名前で、すでにハードルになっている場
合もあります(名前はけっして変えませんが)。ですので、
多くの困難を乗り越えてでも参加しようと思える「意思」を、
どうつくれるかが、勝負です。つまりそれは魅力です。魅力
の柱は、「学びの中身(カリキュラム)」と「仲間集団」だ
と思います。
 募集活動の中心は、運営委員会など若い世代が中心(が望
ましい)です。労働組合などへの募集要請はもちろんしてい
るし、軽視していませんが、実質は運営委員会の「誘いかけ」
が受講動機のほとんどを占めるのではないでしょうか。した
がって、運営委員のなり手をつくりだし、育てていく活動は、
特別重要で、そこに目的意識をもって取り組む必要がありま
す。運営委員会の力量で、教室の成否は大きく左右されます
から。

 岡山労働学校で大事にしていることですが、「学校」とい
うことにこだわる、ということです。「講座」でもなく、
「研修」でもなく。その違いを強調したいです。つまり、知
識を増やすだけでなく、人間として多面的に成長する場であ
るということです。貫かれるのはヒューマニズムです。人間
くさい学校です。社会とのつながりを見つけられる場であり、
「どう生きるのか」という問いに答えられる場。人間らしさ
を取りもどす場でもあるのが労働学校であると思います。
 そこでは、集団のなかでの、学びあい・高めあい・深めあ
い・気づきあい・認めあいが生まれます。岡山は毎期、12~
13回のカリキュラムを準備します。量の積み重ねによる、
学びの深まり・交流の深化を起こすのです。そして参加者を
主人公にするさまざまな工夫です。講義の前15分間、受講
生になんでも好きなことをしゃべってもらうコーナーである
ワンポイント講座、毎週10ページ前後のニュース発行、初
参加の人への気配りと声かけ、終わった後の喫茶店交流(岡
山では「なごみ」と言っています)など、さまざまな運営上の
努力をしています。
 つまり集団学習の魅力を、磨き続けることです。集まれば、
生み出せるものがたくさんあるわけです。ただ「集まる」だ
けではダメで、「集まること」によっての「反応」を起こさ
せる「しかけ」が必要なわけです。集団学習の長所を最大限
生かす運動文化を労働学校では追求しています。
 したがって、労働学校は、講義の質が重要なのはもちろん
のこと、講義の前後も、特別大事ということです。受講生ど
うしの交流をいかにスムーズに活性化させるかは、労働学校
前半の課題です。入学式の持ち方、交流企画をどこに配置す
るか、初めて参加した人が早く慣れてもらうように常に心が
けます。討論の進め方や内容にも注意を払います。これは経
験で培われていくコツのようなものもありますが。それを運
営委員会では確認していきます。ニュースを発行することを
通しての学びあい・気づきあいもあります。修了文集は必ず
つくります。
 こうして、集団学習の長所が発揮されれば、「学ぶこと」
という、第一目的の効果もアップする、というのが実感です。
こうした運動文化をつくりあげるのは、たいへん手間ひまが
かかり、めんどうくさい作業もたくさんあります。でも土壌
を豊かにすればするほど、参加者の育ちあいを促すことがで
きます。学習協自体の総合的力量が問われるのが労働学校運
動であると思います。

学習運動を総合的に展開する
 
さいごに、長久自身が学習教育運動に関わっての喜び、問
題意識です。喜びは、人が変わること。そのことにたずさわ
れる。このひと言で、ほぼ言い尽くせます。そして若い世代
との交流も楽しいものです。学習運動は、若い世代との出会
いの機会がたくさんあり、そこから学ぶことも多いのです。
 問題意識としては、学習運動を、どう総合的に展開してい
くのか、ということを考えていきたいと思います。『学習の
友』や「労働学校」「勤労者通信大学」など、どれかひとつ
が突出して前進・成功する、ということはありえません。総
合的に運動を展開する必要があります。一つひとつの具体的
課題をどう有機的に結びつけて、労働運動の発展にも寄与し、
学習活動を担う人をたくさん生み出すことができるのか。も
ちろん各都道府県の状況や歴史などによって、課題や活動は
それぞれの色がありますが、全国的にゆるやかな「運動のあ
り方」についての共通認識をつくれないものか、と思ってい
ます。
 また、職場や地域で、魅力的な学ぶ集団づくりがすすんで
こそ、われわれの学習運動もすすむわけで、とくに労働運動
のなかでの学習教育活動の前進に寄与する努力をいっそうし
たいと思います。

情勢を切りひらくのは人
 
いま、1人ひとりを大事にしない政治、憲法なんか関係な
いという政治が極限まで進んできているという感じがしてい
ます。ならば私たちは、運動のなかで、1人ひとりを大事に、
育ちあう組織をつくっていこうではありませんか。歴史の岐
路にたつ情勢を切りひらくのは、「人」であり「自発性」
「団結・連帯の力」です。
 いま学習運動も、歴史から問われているのではないでしょ
うか。私たちの運動がおおきく飛躍をするために、私もさら
にがんばりたいと思いますし、全国の力をよりたばねて、学
習運動自身も学びあい育ちあう組織として、いっそうの努力
をお互いにしていきたいと思います。今日はありがとうござ
いました。