長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

自民党改憲草案を今、読み解く。

昨夜(23日)は岡山市職員労働組合が事務局で取り組んでいる
平和のための連続学習会にて
「自民党改憲草案を今、読み解く」の講師。

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30名ほどの参加でした。市民の方も参加。
持ち時間60分でガツガツわわわーと語りまくりました。
超絶早口でした。すみません。
でもみなさんついてきて頂いたように思います。
ありがとうございます。

ぼく自民党の改憲案を1枚にまとめた独自資料
つくっていて、それを使うと便利だし全体の内容が
ひと目でわかるので重宝しています。
ほしいかたはメールで送りますのでご連絡ください。

講義内容は、日本国憲法の核心をつかむ、から入り、
自民党改憲草案を読み解く、
そして今私たちが何をしていくことが大事かの
問題提起など。


以下、中心部分のレジュメのみ紹介します。

二。自民党改憲草案を読み解く
 
1。自民党の憲法改正案は21世紀に入って、2回出されている
  ◇2005年の結党50年のとき
   *2012年版の特徴である「立憲主義否定」「緊急事態条項」
    「表現の自由制限」「97条削除」「共助義務」などはない。
    9条1項は変更せず。自衛隊は「自衛軍」に。
  ◇2012年の野党時代のとき(本日検討するもの)
   *気楽につくっていることも加わり、本音が露骨にあらわれている。

 2。現行の日本国憲法から削除された主なもの
  ■「何が書かれているか」と同時に「何が消されたか」を注意深く
   読み解くことが大事

  ◇前文→全面削除し、すべて書きかえられている。
   *「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのない
    やうに決意」という不戦の決意の削除。
   *「ここに主権が国民に存することを宣言し」という国民主権の
    原則を削除。
   *「人類普遍の原理」という前文性格の変質
   *「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、
    平和のうちに生存する権利を有することを確認する」という平和
    的生存権を削除。
   *憲法の「崇高な理想と目的を達成することを誓ふ」という宣言を削除。
  ◇第2章の章題「戦争の放棄」の削除(「安全保障」に)
  ◇9条1項「武力行使は・・・永久に放棄」の「永久に放棄」を削除。
   たんに「用いない」と。
  ◇9条2項「戦力の不保持」「交戦権の否定」削除
  ◇基本的人権
   *13条「個人として尊重」の「個人」が変質し「人」となる。
   *人権と人権の調整概念「公共の福祉」の文言を削除
    →「公益及び公の秩序」概念へ変質。
   *18条の「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない」を削除。
    徴兵制を想定??
   *20条の「いかなる宗教団体も・・・政治上の権力を行使しては
    ならない」を削除。宗教政党への配慮。
   *22条のなかの「公共の福祉に反しない限り」を削除(唯一
    置きかえなし)。営業の自由、企業活動・経済的自由の制限
    規定を完全にとっぱらう。
   *24条「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立」の「のみ」を外す。
  ◇66条2項「内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければ
   ならない」の「文民」を削除。「現役の軍人であってはならない」
   に変更。
  ◇最高法規の根拠規定(基本的人権の不可侵性・歴史性)を定めた
   97条は全面削除

 3。自民党改正草案、内容の主な特徴
  ◇憲法の改正ではなく根本的破壊、「廃憲」というべき内容。
  ◇前文―全体として自民党の憲法観・国家観が露骨に。
   *「長い歴史と固有の文化」「良き伝統」→上から押しつけ。
    歴史や文化や伝統を継承しつくる主体は国民。
   *「天皇を戴く国家」→かれらの国家観の柱のひとつ。最上級の謙譲語。
   *「立法、行政及び司法の三権分立に基づいて統治される」
    →国の主権の所在は権力??
   *「先の大戦」と「大災害」が同列に扱われている。しかも
    「乗り越えて発展」と規定。
   *「国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り」。国防義務。
    彼らにとっての「国」とは何か?
   *「家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する」
    →助け合いの義務化
   *「活力ある経済活動を通じて国を成長させる」→資本の立場が露骨に
   *「良き伝統と我々の国家を末永く子孫に継承する」が憲法制定目的に。
    伝統・国家とは。
  ◇第1章「天皇」
   *1条「日本国の元首」と規定。
   *「国旗及び国歌を尊重しなけれならない」と、日の丸・君が代の
    尊重義務を国民に課す。
  ◇第2章「安全保障」
   *9条2項で、1項の規定は「自衛権の発動を妨げるものではない」
   *「内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持」
   *「国際的に協調して行われる活動」
      →あえて国連という言葉を使わない。
   *「公の秩序」の「維持」を国防軍の活動のひとつと規定。かれらの
    いう「公」とは?
   *「国防軍に審判所を置く」→軍事裁判所設置。
   *「国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し、その資源を
    確保しなければならない」
  ◇第3章「国民の権利及び義務」
   *人権を国家権力が制限する規定「公益及び公の秩序」は4回も
    登場(12・13・21・29条)。
   *15条の普通選挙権の規定で「日本国籍を有する」との文言挿入。
    外国人参政権を否定。
   *18条「社会的又は経済関係に」おいては身体拘束されない。
    政治的には?
   *20条3項「ただし、社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超えない
    ものについては、この限りではない」とし、首相や大臣の靖国神社
    参拝などをやりやすくする規定を挿入。
   *21条の表現の自由の2項で「公益及び公の秩序を害することを
    目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社することは、
    認められない」とし、国家権力による表現・結社の自由の制限を
    もり込む。
   *24条の1項に「家族は互いに助け合わなければならない」との
    家族条項を挿入し、「自助・共助」を基本とした社会保障、生活
    保護の親子扶養義務の憲法化をもくろむ。
   *25条の三で、「在外国民の保護」を理由にした国防軍の活用を
    におわす規定をもり込む。
   *26条3項で教育の目的が「国の未来を切り拓く」ものであるとした。
   *28条では2項を新設し、公務員の労働基本権を制限。
  ◇第4章「国会」
   *54条で内閣総理大臣が解散権をもつと規定。
   *63条で内閣総理大臣および国務大臣は、国会から出席を求め
    られても出なくてもよい場合があると規定。
  ◇第8章「地方自治」
   *92条で「住民は・・・その負担を公平に分担する義務を負う」とし、
    受益者負担義務。
   *93条で国と地方自治体の「役割分担」論。安全保障(戦争法や
    米軍基地問題)や外交(TPPなど)などは、自治体が口を出す
    なと暗に。
   *96条で、「地方自治体の経費は、・・・地方税その他の自主的財源を
    もって充てることを基本とする」→地方交付税に頼るなと宣言。
  ◆第9章「緊急事態」
    ←改憲の「突破口」にとの思惑。突破口にして「廃憲」の一撃必殺。
   *98条「内乱等による社会秩序の混乱」とは誰がどう判断する?
   *99条で、緊急事態が宣言されたときには、内閣が法律と同一の
    効力を有する政令をつくることができるという規定のほか(国会へ
    は事後承認でよい)、地方自治体の長への指示、「措置」で基本的
    人権の制限・抑圧、何人も国の指示に従う義務。
  ◇第10章「改正」
   *「総議員の過半数」と国会発議のハードル引き下げ。「有効投票
    の過半数」と国民投票のハードルも引き下げ。憲法の最高法規性
    を破壊。
  ◇第11章「最高法規」
   *102条で、国民に憲法尊重義務を課す。具体的条文でも「国民
    の義務」の激増。立憲主義の否定。近代憲法の原則を放棄。改憲
    でなく壊憲であり廃憲。

  【問題は、これらの内容はすでに現実になりつつあること。
   自民党政治の憲法化!