昨夜(13日)は、
平和委員会有志学習会「空爆の歴史―その死と痛み」で講師。
6人参加。
やっぱりゲルニカとか重慶爆撃とか、ドレスデン爆撃とか、
全然知られてないんですよね・・・。
漫画や映画も紹介しながらの講義でした。
次回は8月10日(水)にペリリュー戦について学びます。
だんだん濃い度が増していく学習会・・・。
以下、昨夜の講義の概要です(かなり省略)。
一。空爆による死と痛みをめぐって
「空爆の恐怖や被害は、ミサイルや爆弾が直撃するだけ
ではない。炸裂した爆弾の無数の破片が周囲数百メート
ルにまで無差別に飛び散る。そして、その爆弾の、小さ
な、ほんの小さな破片が、頭に突き刺さり、内臓をえぐ
り出し、四肢を奪い、目を潰す。長さ10センチ足らずの
クラスター爆弾の不発弾は、その炸裂する瞬間をずっと
待ち続ける。だが、そうした爆弾を落とす側は、高度何
千メートルの上空から、無機的な『発射ボタン』1つを
指1本で操作するに過ぎない。そして、そのボタンを押
す人のすぐ背後に、日本は間違いなくいる。人間の巨大
な『破壊への衝動』と『負の欲望』の循環システムが、
こうした小さな破片や爆弾の中に、とてつもない重さと
密度で凝縮されている」
(綿井健陽著『リトルバーズ 戦火のバグダッドから』昌文社、2005年)
1。空爆加害者と空爆被害者の間に横たわる「距離」
◇『反空爆の思想』(吉田敏浩、NHKブックス、2006年)からの整理
①空間的距離・隔たり
―上空数百~数千メートルからの爆撃。顔も見えない。
②心理的距離・隔たり
―空間的距離と相関関係。同じ人間と思えない。
③身体的距離・隔たり
―一方はまったく無傷であり、一方は傷つき、命を奪われる。
④政治的距離・隔たり
―空爆を命令する側の権力と、落とされる庶民との格差。
⑤科学技術的距離・隔たり
―高度な科学技術を用いた兵器と、それと無縁の被害者。
⑥差別意識的距離・隔たり
―落とす側の選民意識
⑦情報的距離・隔たり
―9・11被害者と、アフガンイラクの扱われ方の格差
2。「ピンポイント爆撃」の実相
二。空爆の歴史
1。DVD映像『ピースマシンの旅―東京・ゲルニカ・重慶』
(15分間)の観賞
2。空から爆弾を落とすという出発点
◇気球から爆弾を落とす
―1894年のオーストリア軍によるベニス攻撃が最初
◇歴史上最初の飛行機による爆撃
3。第1次世界大戦(1914年~1918年)
◇大戦初期と終戦段階の4年ほどの間に、飛行機性能・爆弾や
焼夷弾も飛躍的発展
*各国が保有する飛行機台数も数百倍に
(イギリスでは110機→22,677機に)
◇空爆の拡大により、多くの市民に犠牲が出ることが避けられ
ないことが明白に
◇ジョリオ・ドゥーエによる戦略爆撃の体系化(理論化)
◇空爆の規制
4。ゲルニカ爆撃(1937年4月26日)
―焼夷弾を大量に使用した最初の無差別爆撃
5。第2次世界大戦下のヨーロッパ(1939年~1945年)
―空戦の比重の高まり
◇徐々に崩れていった相互自制―報復のエスカレーション
◇大型長距離爆撃機の登場―大戦後期
◇激しくなる連合軍のドイツ各都市への無差別空爆(1942年~1945年)
*ドレスデン爆撃(45年2月13~15日)
・2006年制作の独映画『ドレスデン、運命の日』も参考に
三。加害者として、被害者として―日本の空爆と空襲
1。重慶爆撃への道
◇スペインのゲルニカ爆撃から10週間後の1937年7月7日―日中戦争突入
◇首都南京などを渡洋爆撃
―長崎県大村基地から南京を爆撃(96式陸上攻撃機)
2。重慶爆撃とは(1938年末~1941年末)
200回以上の爆撃、死者約1万2千人
◇都市そのものを対象とした「長期的・意図的・継続的」な爆撃
(世界で最初)
◇中国の武漢を占領したのち、航空基地を建設。
その基地を拠点にした継続的爆撃。
◇新鋭爆撃機(96式)と焼夷弾の結合
◇重慶の中心街が炎につつまれた「5・3、5・4空襲」(1939年)
◇1940年の「101号作戦」
◇重慶爆撃とアメリカ
3。アメリカ軍による爆撃(1945年以前)
◇1944年。中国の都市「成都」からのB29爆撃。
4。アメリカ軍による日本都市の無差別爆撃
◇1944年7月にマリアナ諸島が陥落
◇爆撃機B29と「M69焼夷弾」
◇大都市への無差別爆撃の開始―3月10日東京大空襲
*一夜にして約10万人が焼き殺された東京大空襲
*以後、大都市空襲(東京・横浜・川崎・名古屋・大阪・神戸・尼崎)
◇中小都市空襲(6月17日~8月14日)
*1日にほぼ4都市を目標に16回実行され、計57都市が目標都市
として空襲を受ける。目標とした人口の多い都市のなかから、
より大きな被害を与えられる都市を選んで爆撃していった。
5。原爆投下(8月6日広島、8月9日長崎)
◇原爆投下候補地は空襲目標都市からはずれる。
*広島、長崎、京都、新潟、小倉・・・
◇投下の目的は東西冷戦をにらんだ政治的思惑。
◇原爆投下による終戦という「神話」
四。記録・記憶と継承―戦争を許さない圧倒的世論をつくる
1。「やむをえない犠牲」論をのりこえる
◇戦争が早く終わるので自国兵士の死傷を減らせる論。付属的被害論。
◇1人ひとりの「命」の視点から
◇日本国憲法の立場にたつ―犠牲の論理の否定
2。空襲被害の記録と継承
◇体験を語り伝える、書き伝える。教育機関での継承活動。
◇映像、写真。資料館・記念碑。
◇小説、映画、ドラマ、文化的媒体
*『この世界の片隅に』(こうの史代、双葉社、全3巻)は
呉空襲体験を描いた漫画
*『あとかたの街』(おざわゆき、講談社、全5巻)は
名古屋空襲体験を描いた漫画
◇加害と被害の関係性
*ドイツの空襲被害は最近まで日が当たらなかった(被害記憶の空白)
*逆に日本は重慶爆撃などがまったく知られていない(加害記憶の空白)
*アメリカや連合軍の無差別爆撃は罪に問われていない
3。人を殺すことへの麻痺―無人爆撃機
◇アメリカ本国で操作し、中東の空で爆撃
◇2013年制作の米国映画『ドローン 無人爆撃機』
◇2014年制作の米国映画『ドローン・オブ・ウォー』
4。戦争を許さない世論をつくる―「痛みの記憶」の継承と共有
◇集団的自衛権行使でアメリカの戦争に参戦―暴走する安倍政権
*空爆する側への加担
―「安全な位置にいる加害者」になることを拒否しよう
◇いま、空襲の歴史を学び、その記憶を継承することの意味