長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

ブラックバイト、障害者と戦争、官邸支配、もうひとつの太平洋戦争

最近読んだ本。
きのう(18日)の林友の会の講演のために、
戦中の障害者の体験手記を2冊読みました。


『ブラックバイトー学生が危ない』(今野晴貴、岩波新書、2016年4月)

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ブラックバイトの定義は、
「学生であることを尊重しないアルバイト」。
たとえば、
「テスト期間中にシフトを代わってもらえない」
「辞められない」「就職活動ができない」
「毎日勤務に入り、学業に支障」「ワンオペなどの過度の責任」
など。 

特徴は、学生の「戦力化」、安くて従順な学生、
一度入ると辞められない、
労働者としての権利を認めないケースが目立つ、など。

さまざまな実際のケースが紹介されており、
ブラックバイトの実態、特徴にあらためて「ここまで」と驚く。
雇う側の論理や学生バイトが多い業種の
変容ぶりもわかりやすく学べる。
労働者の貧困、学費や奨学金問題とも地続き。
これらをふまえ、学生側とその周囲の対応方法も。
日本の未来がかかった問題です。


『障害者と戦争ー手記・証言集』(清水寛編著、新日本新書、1987年)

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「障害者を閉めだすような社会は、かつて国連が
指摘したように『弱くてもろい社会』であり、
その『もろさ』こそが戦争を作りだしてしまう」

ヤッカイ者、ごく潰し、非国民・・・。
障害があるというだけで、人間扱いされなかった現実。
国家に役立つものだけが評価される。

役立つかいなかで人間を評価しようとする、
一億総活躍社会の危険と通底。


『官邸支配』(朝倉秀雄、イースト・プレス、2016年5月)

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政治主導VS官僚支配の力学の内実について
一定の理解にはなる。
が、著者自身のエリート意識や大衆蔑視、
決めつけ的悪口や偏見に辟易した。

なにより、政治を語る書であるのに、
国民生活の問題がいっさい出てこない。
彼らの視点がどこにあるのかがある意味わかる。


『もうひとつの太平洋戦争』
 (仁木悦子・障害者の太平洋戦争を記録する会編、立風書房、1981年)

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「軍国主義社会とは、障害者がつまはじきされる
社会である。最も効率的かつ合理的にものごとを
運ぶには、障害者は邪魔者である。太平洋戦争で
一番被害を受けたのは、障害者だった」(15P)

「ヤッカイ者とさげすまれ、人の顔色をうかがい、
日かげ者のように人の目をおそれてくらしてきた
あの年月」(49P)

「焼夷弾は選り好みをしない。強いものも弱い
ものも、むろん障害者も、命を全うしたければ
逃げねばならぬ。ただし逃げられればの話だが―」(102P)

「健全者でさえ数多くの餓死者、栄養失調者が
あふれる飢餓状態の中で、『おまえに食べさせる
のは勿体ない』という、有言、無言の抑圧」(109P)

「戦争というものはつねに、弱い者、小さい者、
無名の者を踏みにじって驀進してゆく。その
非人間的な性格が、たまたまそれに遭遇した障
害者たちの上に、特に象徴的にくっきりと現れた」(287P)