長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

第10巻、運命の人、人間の証明

最近読み終えた本。
小説は夏休み中に読んだものです。


『宮本顕治著作集第10巻ー宮本百合子の世界』
            (宮本顕治、新日本出版社、2013年)
長い長い中断期間を経て、ついに全10巻読了。
ナナメ読みも多かったですけど。
昨年読んだ上田耕一郎著作集全6巻ふくめ、買ったからには
読むぞ根性を発揮しつつ、偉大な先輩の書く力量に深く学ぶ。


『運命の人(一)』(山崎豊子、文春文庫、2010年)
沖縄の日本返還時の日米密約をスクープした新聞記者をめぐる話。
「事実を取材し、小説的に構築したフィクション」という全4巻。
モッくんが弓成記者を演じたテレビドラマは見たけど、原作は
さすがに精緻。読みごたえあります。


『運命の人(二)』(山崎豊子、文春文庫、2010年)
逮捕された弓成記者に対する警察の人権無視の尋問がリアル。
日米間の機密を覆い隠す国家権力と、報道の自由・知る権利の
ぶつかりあいを軸に裁判闘争へ。おもしろし。


『運命の人(三)』(山崎豊子、文春文庫、2011年)
弓成記者、控訴審で逆転有罪、最高裁は上告棄却。
司法の独立ってのは、日本の場合はあてはまりませんね。
ここまで3巻、沖縄返還をめぐる密約問題にも関わらず、
現地沖縄の声はいっさい出てこず。4巻目はいよいよ舞台が沖縄。


『運命の人(四)』(山崎豊子、文春文庫、2011年)
沖縄に住み着いた弓成。沖縄の人と文化に自分を少しずつ
取り戻していくと同時に、沖縄戦の凄惨と米軍基地問題の
不条理にぶつかる。
「再び取り返しのつかない不幸な事故が起きない前に」
(文庫版あとがき)との作者の思いに涙す。


『人間の証明』(森村誠一、ハルキ文庫、1997年)
森村誠一の代表作のひとつ。人間の醜悪、憎悪を描きながらも、
人間への信頼をさいご浮きぼらせる。読みごたえあり。