先週土曜日(12日)の夜は、岡山市の西大寺へ。
岡山中央福祉会労組の学習会&懇親会でした。
組織的にはさまざまな困難もかかえている労働組合ですが、
この学習会をきっかけにしていこうと取り組まれたもの。
私のほうから労働組合の基本的なお話を50分ほどで。
その後、夕食を食べながらの自己紹介&感想交流でした。
労働組合の大切さ、基本的なことを学ぶことの大切さを
交流できる場になったと思います。
労働組合のそもそもを広げる日々を、これからも。
以下、レジュメです(だいたいいつもと同じですが)。
はじめに
労働組合への最低限の認識をまずつくる。広げる。
「なんとなく」から抜け出す。
一。労働組合のかかげる旗―「人間らしい生活のために」
1。生活がその人らしさをつくる。生活はかけがえのないものであり人権。
中心線は文化。
◇生活は、1人ひとりにとっての「小宇宙」
*衣食住、嗜好、環境、雑貨、買物、家事・育児、教育、老い、
介護、医療、健康
*芸術、教養、音楽、趣味、娯楽、スポーツ、団らん、社会関係、
交友、恋愛、ペット
*余暇、散歩、遊び、旅、ぼんやり、活動、ライフイベント、
季節、風景、動植物・・・
■生活は壊れる危険がある。生活が壊れることは、人間にとって
たいへんな苦痛となる。
■生活を支えるのは「お金」「時間」「健康」「人間関係」
「社会的労働」「政治」「平和」
2。生活にゆとりがあれば、「文化的に生きる」条件が広がる。
◇「ゆとり」とは・・・。
*「当面の必要を満たしたあとに、自由に使うことが出来る
空間・時間や体力、他のことを考えるだけの気力があること」
(三省堂『新明解国語辞典』第7版)
*自由な時間=何をするか選べる時間=その人らしさをつくる。
◇お金の面でのゆとりは・・・。
日本は必要な生活費にやたらとお金がかかる国。
*住宅、教育、医療、保育、介護、移動、通信・・・。
生活必需品にもかかる消費税・・・。
*生活費だけでカツカツ・・・の人が増加。
使い方を「選べる」お金が少ない。
二。雇われて働く=労働条件はどうやって決まるのか
1。生活の質と労働条件は直結。働きやすさも。
だから労働条件にこだわる。交渉する。
◇いくら賃金をもらうか、働く時間はどれぐらいか、自分の希望
する日に休めるか・・・。
◇休憩時間、仕事量、残業代、職場環境、配置転換、安全衛生、
有給休暇、研修機会・・・
◇職場内における正規・非正規の割合・・・。離職率も判断基準のひとつ。
◇職場にハラスメントはないか、差別はないか、ものが言える
雰囲気があるか・・・。
◇妊娠・出産・育児にさいして、安心して休暇を取ることができるか。
◇きちんとした人員がいて、民主的な風土があってこそ、いい仕事も
できる。
■労働基準法第2条「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場に
おいて決定すべきものである」。ただじっさいは、労働条件を決める
力(先に提示できる力)は、使用者が持っている。業務内容、雇用
形態、人事権も使用者に決定力。つまり立場が強い。
■労働者はひとりで労働条件の交渉(条件提示すること)ができるか?
◇ここで、雇われ組の先輩たちのお話(歴史)。
*18世紀のイギリス。産業革命。「雇われて働く人」(労働者)
たちが増大。
*しかし、長時間労働、低賃金、首切り自由、セーフティネットなし、
住環境悪く・・・。
*パブを拠点に徒党の組み方を発展。まずはみんなで助けあい
(共済活動)。
*次に、みんなで仕事拒否(ストライキ)。みんなで交渉する。
労働者は数が多いから、「みんなで」を武器にすれば対等に
交渉可能。雇用主にものが言える!
*恒常的・日常的に「みんなの力」をたばね、強めるために組織
として労働組合(ユニオンUnion)結成。1799年団結禁止法。
でも生活がある(尊厳)。弾圧のりこえ権利としての労働組合
1824年。国の法律として争議権(ストライキ)をふくむ労働
基本権が確立1906年。団結禁止法制定から100年以上。世界中
にたたかいと権利が広がる。
★こうした200年以上にわたる先輩労働者たちの厳しくも熱い
たたかいがあったからこそ、さまざまな権利や働くルール
(労働法)が獲得されてきている。
「新しい世代がしばしば当たり前とのこととして受け取っている
ものは、実は、前の世代の厳しい闘いの成果であることが忘れら
れるものである」(ネルー・インド元首相)
◇日本国憲法28条の、労働基本権(労働三権)
◎「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする
権利は、これを保障する」
*団体交渉権・ストライキ権(争議権)も、特別な権利として
保障されている。
*使用者と労働者は、労働契約でむすばれる私的関係。でも憲法
は一方的に労働者に肩入れ。労働者の尊厳(人間的に扱われる
権利)をまもるための手段を保障。
・「27条・28条は、経済市場において労働者等を勇気づける
(empowerする)ことを要求しているのである」
(青井未帆・山本龍彦『憲法Ⅰ 人権』有斐閣、2016年)
*労働者が「ものが言える」こと-よりよい職場づくりの土台で
あり保障。
2。日本の「雇われ組」の現状と人権感覚について
◇ひと言でいえば、「ゆとり」なし。
◇「おかしい」ことを「おかしい」と感じ、声をあげる力を育てよう
-人権感覚をみがく
*「おかしさ」が恒常的になると、「常識化」する。「どこも
こんなもんだ」「しょうがない」「働けているだけでしあわ
せだ」。がまん、あきらめることで適応することも。「人間
らしさ」「幸せ」の“基準”“限度”は、上下する。上げるのは大
変。下げるのは簡単。
◇自分の生活や人生、働き方の「質」「あり方」を考え問うこと
―訓練や環境が必要
◇国家(政治)が「個人の尊厳」を置き去りにする日本社会のなかで
*介護、福祉のシステム自体が「尊厳」よりも「制度」「利益」に
ゆさぶられている状況。でも目の前の人の尊厳を置き去りに
するわけにはいかない。
*そのしわ寄せ(犠牲)はシステムを支える労働者集団に。でも
私たちはシステムを支える道具ではない。尊厳の担い手である
個人。人間らしく!の声をつなげ、連帯しよう。
*みずからの人権感覚を研ぎ澄ませること(生活や人生を大事にし、
質を問うこと)と、目の前の利用者さんの人権を尊重すること
とは、同じ地平にある。補強・補完関係。
さいごに:学習活動を継続的に。認識を変えるのは大変な作業。ねばり
強く。「理解」が行動につながる。学びの場を保障する。
労働組合自身が覚悟をきめて学習活動に取り組む。