長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

ぶらり、時間散歩 (第6回)

『学習の友』の時間エッセイ6回目です(4月号掲載)。


第6回「時間のためのチームワーク論」

 
「残業」という時間問題にかこつけて、先日書店
で見つけた本を紹介します。『プレイングマネージ
ャー 「残業ゼロ」の仕事術』(小室淑恵、ダイヤモ
ンド社、二〇一八年)です。小室さんの著作は、
『労働時間革命』(毎日新聞出版社)以来二冊目。
 活動家のみなさんは、ビジネスコーナーに並んで
いるこの手の本を、「自己啓発本」「狭い方法論」
と敬遠することもあるかもしれません。でも、食わ
ず嫌いはやめましょう。学べるものからは貪欲に学
びたいものです。
 タイトルだけ見ると残業をなくすための「個人的
スキルアップ」を説いた本に思えますが、著者がい
ちばん強調しているのは、職場での関係の質の向上、
その根本要因としての「心理的安全性」です。「心
理的安全性とは、『このチームなら、自分の意見を
笑われない、拒絶されない、叱られない』と思える
安心感のこと」(64P)。つまり安心して意見をい
いあえる関係性のなかでこそ、仕事の「生産性」が
あがり、残業ゼロの職場をつくれるのだと。
 本書をつらぬく内容はチームワーク論です。職場
の中心を担うキーマン(プレイングマネージャー)、
労働組合でいえば組合の書記長や専従にあたる人は、
自分の仕事や活動スタイルを見直す問題提起を随所
に見いだすはずです。対話の技法(あるいはしゃべ
らない意味)や、仕事の「属人化」からの脱却の道
すじ。リーダーがすべき大事な仕事とは何か。「緊
急ではないが重要な仕事」の比重をあげるために、
自分の仕事を客観視する工夫、などなど。
 著者は、ワーク・ライフ・バランスを実現するた
めに、1000社以上のコンサルティングを手掛け
てきた会社の代表。たんなる手の問題ではない、深
い課題を提起し、その具体的手法を紹介しています。
 もちろん、残業をなくすためには、法的規制や労
働組合による活動が欠かせません。同時に、私たち
がそれぞれの職場や活動のなかで、具体的な関係性
のありよう、とくに「チームとしての力量を高める
技術」をみがき、育て上げていくことも大事な課題
だと痛感します。本書はその一助になるはずです。