先日(1日)の、全医労岡山地区協議会での
「言葉について」の講義レジュメを紹介します。
一。言葉の役割について
1。コミュニケーション
2。考えるときの道具
◇言葉なしに、考えることはできない
*判断・推測・比較・分析・総合・推理、想像・・・などの
考える力(知性)は、言語によって支えられている。
考える力は、どのような言葉を持っているか(使いこ
なせるか)と一般的には比例する。
◇豊かなことばを獲得できると、ものごとを豊かに考えたり
表現するベースになる。
◇労働者が「労働者のことば」をにぎること。
*どんな言葉を持っているか。世界の認識、行動の選択が違ってくる。
*「労働者」という言葉を自分のうちに消化する。労働者としての
生き方を考える力に。
*労働条件に対する「文句」「反抗」「わがまま」ではなく、
「抗議」「要求」。ストライキは「迷惑」ではなく「正当な
要求を拒む使用者を、困らすことのできる権利」。
*「団結する」「連帯する」という言葉を、労働者は自分たちの
生き方としても使う。もちろん労働者だけの専売特許ではない
けれど、労働者が人間らしく生きるために欠かせない言葉。
そういう道が見えてくる。選択肢がふえる。自由になる。
3。書き言葉について
◇残ることと、広がること
*「文字が残る」ことによって、言葉が自分の身体から離れ、
客観性をもつようになる。書くことによって、みんなで
それを共有することが可能になる。
二。言葉と社会、言葉をめぐるたたかい
1。支配する側の言葉に汚染、慣らされてされていませんか?
◇「自己責任」「抑止力」「全世代型社会保障」「勝ち組負け組」
「多様な働き方」・・・
◇私たちを分断し、競争にかり立て、要求を押さえつける
言葉・表現の氾濫(伝播)。
◇「呪いの言葉」
*「嫌なら辞めればいい」「選ばなければ仕事はある」
「使えないヤツだな」「企業あっての労働者だ」
「店がまわらなくなる」「ダラダラ残業」「女なんだから」
「男なんだから」「お母さんなんだから」
「デモなんかで世の中変わらない」「野党は反対ばかり」
*「『呪いの言葉』は、相手の思考の枠組を縛り、相手を
心理的な葛藤の中に押し込め、問題のある状況に閉じ込め
ておくために、悪意をもって発せられる言葉」
(上西充子『呪いの言葉の解き方』晶文社、2019年)
2。「灯火の言葉」「湧き水の言葉」(上西充子)をつむぎ、育て、
みがいていこう。
「私が『灯火の言葉』という表現でイメージするのは、
心のなかに静かに燃える灯(ひ)だ。体をあたため、気
力を起こさせ、しっかりと立とうとする自分を支える灯。
『呪いの言葉』を投げつけてくる人がいる一方で、そん
な『灯火の言葉』を届けてくれる人もいる」(上西充子、前掲書)
◇自分を肯定してくれる言葉。励ましてくれる言葉。
*みなさんも、他者や本や歌などからそうした言葉を
もらった経験、あると思います。
◇人権の言葉は、すべての人を肯定してくれる「灯火の言葉」となる。
■私たちの活動(労働運動や政治運動)はかならず集団で行っている
*活動の質は、伝えあいの質に規定されている。どれだけ言葉が
届き、まじりあい、灯火の言葉を伝えあえているか。
聴くために話すという姿勢。
*「いつも自分の言う言葉が相手にとってどう響いているか
ということを気をつけてみないといけません」
(辻井喬『憲法に生かす思想の言葉』新日本出版社、2008年)
*「大事なのは、言葉の修辞ではない・・・。『灯火の言葉』は、
言葉遣いに長けた人だけが駆使できるものではない・・・。丁寧
に相手に向き合うこと、丁寧に相手を認めること、そして相
手を認めていることを素直に言葉にすることが、相手に『灯
火の言葉』として届くのだ」(上西充子、前掲書)
*言葉を発せない人の言葉を汲み取る。「助けてと言えない」
「おかしいと言えない」。そうした「発声練習」をする環境
や訓練がなかった人のほうが多い。
◇みずからの身体から湧き出てきて、生き方を肯定する言葉
―「湧き水の言葉」を
*「わたしは」を語る。自分を励まし方向づける言葉。
*自分が、心から感じたこと、うんうんと考え抜いて発した言葉。
さいごに:「実際には、ひとつの出来事だけで、ひとつの言葉だけで、
みずからを縛っていた呪いから解放されるほど、簡単に人
は変われるものじゃない。実際には人は、何度も新たな
『呪いの言葉』に揺さぶられ、揺れ動き、そのたびに周り
の人の言葉や行動に支えられ、自分の中に蓄積した『灯火
の言葉』に支えられ、自分の置かれた状況を俯瞰し、その
状況をとらえるための新たな言葉を探し、そうして少しず
つ、少しずつ、不当な干渉に揺さぶられない自分へと変わ
っていく」(上西充子、前掲書)