長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

1対1の対話は、もはやあたりまえではない。

『コミュニティ・オーガナイジング』(鎌田華乃子、英治出版、2020年11月)
を読み終えました。

で、内容をより消化するために、
もう1回精読してから紹介書きます(こんなことは珍しい)。

読みながらワクワクして、
「あの人にもこの人にも読んでもらいたい」と
思えた本は久しぶりです。
社会を変えるための方法や運動技術を理論化・体系化したものが、
コミュニティ・オーガナイジング(CO)。
本書はわかりやすさ、イメージしやすさも抜群で、
COの最適なテキスト、入門書、実践指南書になっています。

本の紹介は後日するとして、今日は私の経験を少しだけ書きます。

CO実践者の基本として、「1対1対話」があります。
変化を起こすために、同志になってほしい人などに
1対1で対話をして自分の思いや相手との一致点を探り、
具体的行動に結びつけていく手法です。

この1対1対話、あたりまえだ、運動の基本でしょ、
と思う人もいるでしょう。私もそうです。
しかし私の場合は、かなり幸運な環境であったが
ために「あたりまえだ」と感じることができるのです。

私が岡山県学習協の専従活動家になったのは1998年、
23歳のときでした。岡山労働学校に参加し始めたのは19歳のときです。
前任の専従者で事務局長だったI原さんに「専従にならないか」と誘われ、
一定期間、一緒に活動してきました。

I原さんは、理論家でもありましたが、
活動家としても非常に力量のある人でした。
学生時代の活動経験はよく聞きました。
立命館大学だったのですが、民青(という青年運動組織)が
立命だけで1800人いて、「2000同盟をつくろう」とやっていたとか。
日常活動もとにかく今から言えば無茶苦茶で、
朝から意思統一して拡大目標を確認、
また昼に結集して中間意思統一、
それで夜も集まって活動してたそうです。つまり活動ばっかりしてた(笑)。

そういう学生運動ばりばりやっていた人にとっては、
1対1対話は基本中の基本。
変化を起こすためには人と会ってじっくり話をしてつながりをつくる、
行動を具体的する、という活動は、
あたりまえにしてきたし、できるのです。
カフェで1時間ぐらいの対話は日常茶飯事でした。

こういうI原さんの活動スタイルを見ていたので、
私も20代の頃から、1対1対話は活動のベースにあるもので、
そう意識せずに自然にやってきました。
たとえば昨年成功した93期岡山労働学校では、
募集期間中に20人ぐらいの人と1対1対話して、
募集成功のための関係構築をしました。
でも、そうした活動の基本を学べたり経験できてきたことは、
かなり幸運な環境だったと思います。

この1対1対話、私の周りに限っての話ですが、
若い人はほとんどできません。
そういうことが大事だという意識も弱いし、なにより経験がない。
学生運動ばりばりして活動トレーニングしてきた年配世代とは、
それはもう決定的に違います。
会議の仕方や人の誘い方、集団づくりの技など、
若い人はしたことがないのでわからないのです。

何が言いたいかというと、そうした若い人にとって、
この『コミュニティ・オーガナイジング』は、
変化を起こす行動にふみだす勇気と方法論をつかめる
内容になっているということです。

「対話が大事」ということはよく言われます。
でも、対話したことのない人にとっては、
対話というのはとても恐いものであり、勇気がいるのです。
だから、本書のように対話の仕方の具体的ポイントまで
理論をベースにわかりやすく解説されているものが必要なのです。