長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

8月に読んだ本

8月に読んだ本です。
といっても、曽根が亡くなってからはまだ1冊も読めてません…。
新聞や雑誌は読んでますけど。
以下、すべてTwitterからそのまま転用です(横着ですみません)。


『フェミニズムの政治学』(岡野八代、みすず書房、2012年)
副題は「ケアの倫理をグローバル社会へ」。
専門性の高い内容で一般向けではないが、
考えたことのない視座をいくつももらう。
「軋轢は、ケアに内包している」の指摘は、日々実感している。
だからこそ、ケアが私を鍛えてくれる。


『若者からはじまる民主主義~スウェーデンの若者政策』
            (両角達平、萌文社、2021年8月)
直近国政選挙で若い世代の投票率が85%のスウェーデン。
しかも年々上がっている。そのワケは、本書を読めばわかる。
多様な活動の場、参画の機会、資源投入、若者こそ資源。
ぜひ読んでほしい良書。


『緊急事態宣言の夜に~ボクたちの新型コロナ戦記2020』
            (さだまさし、幻冬舎、2021年2月)

エッセイなのでサクサクと。コロナ禍の音楽活動と、
風に立つライオン基金という支援の取り組みについて。
西日本豪雨災害のときのことも書かれてて、ああ、と思い出した。
さださん、すごいなあ。


『本心』(平野啓一郎、文藝春秋、2021年5月)
『マチネの終わりに』『ある男』、そして本作。
平野さんの小説には、人間と社会、自分自身に向きあおうとする言葉がある。
「わからないからこそ、わかろうとし続ける」。
言葉を無化させてきた政治のなかだからこそ、言葉の探求に安心する。


『マルクスの「生産力」概念を捉え直す~社会変革の新しい道筋のために』
                (聴涛弘、かもがわ出版、2021年3月)
「生産性」という言葉を私たちの言葉として取り戻すための探求。
「マルクス主義者はつねに新しく生じてくる問題を重視しなければならない」
という著者の姿勢が明快。刺激的。


『コロナ対応最前線 仕方ないからあきらめないへ~大阪府の保健師、
保健所職員増やしてキャンペーン』(大阪府関係職員労働組合・小松康則 共編、
日本機関紙出版センター、2021年7月)
28~31Pの「わたしの保健師さん」漫画、何べん読んでも涙が出る。
保健師さんの仕事、知ってほしい。


『NHK100分de名著 アレクシエーヴィチ
    戦争は女の顔をしていない ~声を記録する』
               (沼野恭子、NHK出版、2021年8月)
俄然、原作読みたくなった。番組も。
証言文学という形、「小さな人間」の声を拾い集める姿勢。
アレクシエーヴィチと親交あるロシア文学研究者、沼野さんの解説もよい。


『土と内臓~微生物がつくる世界』
(D・モントゴメリー+A・ビクレー著、片岡夏実訳、築地書館、2016年)
分量あるけど面白かったー。大腸と植物の根は同じ!!
微生物さまの活躍の場を提供することで自分を守る!
著者夫婦の個人的体験も絡み、入りやすい。大腸の住人を大事にしよう。


『「顔」の進化~あなたの顔はどこからきたのか』
          (馬場悠男、講談社ブルーバックス、2021年1月)
全体的に「説明」という感じで読みごたえはイマイチだった…。
進化系の話は大好きなんで、
目からウロコの知見が少なかったのもあるかな。
眼が「脳の出張所」という表現はなるほど、と。


『非正規職員は消耗品ですか? 東北大学における大量雇止めとのたたかい』
          (東北大学職員組合編、学習の友社、2021年5月)
無期転換逃れの悪質な大量契約打ち切り。
教育機関が人をモノ扱いして、いったいなにやってんだ、という感じ。
雇止めされた当事者の声があまり出てこないのは残念。


『明日への銀河鉄道~わが心の宮沢賢治』(三上満、新日本出版社、2002年)
3日ほど前に銀河鉄道の夜を扱った古いTV番組を見て感化され、
19年間自宅の本棚に眠っていた本書を手に取った。
賢治の足跡と模索、苦悶を知る。
そして作品群から未来につながる萌芽とは。まんさん、ありがとう。


『ナイチンゲールの末裔たち~〈看護〉から読みなおす第一次世界大戦』
                   (荒木映子、岩波書店、2014年)
戦争に組み込まれた近代看護。
大戦に従事した女性たちの手記や小説から、
志願動機や戦時看護の実状を読みといていく。
日赤が欧州救護班を組織して派遣していたとは、知らなかった。


『これが私の生きる道~これまでの軌跡 これからの奇跡を信じて』
                    (土山剛靖、2021年7月)
2011年にALSの診断を受けた著者の歩み。今は倉敷の病院におられるそう。
少しだけ動く足の指を使って意思伝達装置「伝の心」を操作し、
本書を書き上げたという。まわりの人の支えが生きる力に。


『旅屋おかえり』(原田ハマ、集英社文庫、2014年)
軽い小説読みたいな~と思い本屋でみつけた旅小説。
最初の旅ロケが青森の黒石、主人公の出身が北海道の礼文島で、
旅屋としての初旅行が秋田の角館! 最後の旅が高知の檮原!!
ぜんぶ行ったことある場所\(^o^)/ 楽しめました。


『お探し物は図書室まで』(青山美智子、ポプラ社、2020年)
とても良かった。5つの物語がゆるくつながりながら、交差する絶妙さ。
そして軸になっているコミュニティハウスと図書室の司書さん。
本と出会い、人とつながり、自分の人生を肯定していく。
すぐにもう1度読みたくなる小説だ。


『在宅無限大~訪問看護師がみた生と死』(村上靖彦、医学書院、2018年)
哲学の研究者が6人の訪問看護師の聞き取りの中から、
在宅医療の意味を探求する。
在宅は個別性高く一般化が難しいと言いつつ一般化の試み(笑)。
人にとっての「住まい」の意味をまた掘り下げることができた。


『臨床の砦』(夏川草介、小学館、2021年4月)
『神様のカルテ』の著者(現役医師)が描く、コロナ医療の最前線。
まだワクチンもないなか第3波に見舞われる現場と
医療従事者の過酷な状況がリアルに伝わる。
これはたくさんの人に読んでほしい。
短期間で小説に昇華させた夏川さん凄すぎ。


『検証・テレワーク~「働き方改革」との関連から考える』
          (牧野富夫編著、学習の友社、2021年6月)
コロナ禍で加速した在宅勤務の課題と問題点を労働組合の立場から検証。
職場からの報告と財界の狙いを整理した牧野さんの総論。
本筋でないけど、「タコツボ職場」の表現が気になった…。


『実力も運のうち~能力主義は正義か?』
    (マイケル・サンデル、鬼澤忍訳、早川書房、2021年4月)
読んだ、というよりは眺めた、感じだけれど。あまり新鮮さはなかった。
「能力主義は共感性をむしばむ」。謙虚さもむしばむ。
まずは、DaiGo氏に読んでいただきたい内容。


『高校生・若者たちと考える過労死・過労自殺~多様な生き方を認める社会を』
(石井拓児・宮城道良著、岡村晴美・勢納八郎協力、学習の友社、2021年7月)
内容はタイトルのとおり。著者らの実践の記録でもある。


『やさしい猫』(中島京子、中央公論新社、2021年8月)
娘、マヤが語りかけていたのは…。ラストで明らかに。2回泣いた。
入国管理局の非人道性が浮き彫りに。
いや、現実はもっと闇が深いのだろう。
この小説を通して入管のこと、日本にいる外国人の置かれた立場、
多くの人に知ってほしい。


『ヴァイタル・サイン』(南杏子、小学館、2021年8月)
南さん(現役医師)の小説はすべて読んできたけど、初の看護師小説。
看護職場のあまりの過酷さに途中から読むのがしんどくなるが…。
ややストーリーの先がみえる展開だったが、それでも一気に読めた。