介護、作業療法、調査する、森林アメニティ、断り方、原爆裁判
最近読み終えた本。
■『介護のススメ! 希望と創造の老人ケア入門』
(三好春樹、ちくまプリマ―新書、2016年)
若干違和感のあるところもあったけど、現場の実践知を面白く読める。
まだ介護保険もなく、無資格の「寮母」が高齢者のケアをしていた
時代からの経験も語られる。老人の嫌がることはしない介護論。
介護には工夫が必要、だからこそケアには醍醐味がある。
■『作業療法の曖昧さを引き受けるということ』
(齋藤佑樹・上江洲聖、医学書院、2023年)
作業療法士の仕事、患者に対するアプローチを漫画もふまえて描く。
作業には、人をエンパワメントする力がある。
人間観が確か。患者への姿勢はコーチングとも似通っている。
「作業療法士が対象者の状況を知ることと同じくらい、
『対象者が自分自身を知ること』が大切」「『治してあげる』
のではなく、『一緒に考える』『一緒に解決する』姿勢を大切
にしよう」(48P)
悩むこと、答えがない状態を引き受けることに
価値を置く姿勢が素晴らしい。
「どんなに考えても決して対象者を理解することは
できないこと、そして対象者はどんなに時間が経過
しても障害を受容することはできないこと、これらの
不確実な要素をそのまま受け入れ、『(対象者を)
理解できない』『(障害を)受容できない』という
前提を受け入れながらも理解しようとし続けることが
大切です。そのような宙吊り状態に耐える力(ネガティブ・
ケイパビリティ)が作業療法士をはじめとする
『対象者に「寄り添う」専門職』には求められます」(106P)
■『調査する人生』(岸政彦、岩波書店、2024年)
打越正行、齋藤直子、丸山里美、石岡丈昇、
上間陽子、朴沙羅の6名と著者の対談集。
全体的に社会学に親しみのある人向け。
打越さんの『ヤンキーと地元』は信じられない
フィールドワークのすえに生まれたほんとに素晴らしい本だし
(残念ながら打越さんは早逝されました涙)、
上間さんや岸さんの著作にも親しんできたので
(朴さんのヘルシンキ本も2冊読んだ)、興味深く読めました。
みなさん知識量もすごいし、胆力があるなあと。
これからも良書を期待。
■『事例にみる森林アメニティ~私たちの健康と森林~』
(上原厳・高山範理・竹内啓恵、林業改良普及双書、2022年)
森林アメニティとは、「森林のもたらす恵み」であり、
「休養」「保養」「癒し」「リフレッシュ」など、
幅広く健康に良い影響をあたえるものごとのこと。
森林のなかにいると、心が開かれていくのは実感としてわかるけど、
事例と根拠をもとに言語化して整理されると、納得感が高まる。
地域の身近な森林の恵みを探しにいきたい。
■『なぜか印象がよくなるすごい断り方』
(津田卓也、サンマーク出版、2020年)
断れないのは、性格ではなく、具体的な方法を知らないだけ。
断り方の基本をていねいに解説。クレーム対応の多い仕事の人とか、
すごく学びが多いと思う。
自分もかなり実践していること多く、納得する。
断ることで逆に人間関係や良くなったり、人生の優先順位が
明確になるとの指摘も、そのとおりだと思う。
まあ、活動していると断られることも多いので、
やや複雑な思いもあるが笑。
■『「原爆裁判」を現代に活かす~核兵器も戦争もない世界を創るために』
(大久保賢一、日本評論社、2024年)
「寅に翼」でも取り上げられた原爆裁判の経過や内容を学べる。
原爆投下を国際法違反とした内容、そして被爆者救済を怠っている
「政治の貧困」を指摘した、裁判官の人間性をみる。
