長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

『日本語の作文技術』メモ

『日本語の作文技術』(本多勝一、朝日文庫、1982年)
を読み終えました。

なんと今年まで44刷と版を重ねている
ベストセラー。
わかりやすい文章のための原理的で
テクニカルな解説部分は
「緻密」「こだわり」を随所に感じました。
さすが新聞記者さんであります。

さらに、本書後半の
「無神経な文章」「リズムと文体」「作文『技術』の次に」は
いろいろな意味で参考になった。
もっと早く読むべき本でした。

以下、自分のためのメモ。

「これまで努力してきて、ある程度それが
実現したと思っているのは、文章をわかり
やすくすることである。これは才能という
よりも技術の問題だ。技術は学習と伝達が
可能なものである」(P11)

「、(テン)や。(マル)や「(カギ)のような
符号は、わかりやすい文章を書く上で
たいへん重要な役割を占めている。とくに
この場合、論理的に正確な文章という意味
でのわかりやすさと深い関係をもつ」(P73)

「テンというものの基本的な意味は、思想の
最小単位を示すものだと私は定義したい。
マルで切れる文章は、これらの最小単位を
組み合わせた最初の『思想のまとまり』で
ある」(P89)

「漢字とカナを併用するとわかりやすいのは、
視覚としての言葉の『まとまり』が絵画化され
るためなのだ。・・・もともと漢字は絵から出発
した象形文字を基礎としている以上、それ
自体が意味をあらわす表意文字(より正確
には単語文字)だから、ローマ字やカナに
比べて視覚的なわかりやすさは抜群だ」(P128)

「段落は、ここで思想がひとつ提示されたこ
とを意味している」(P190)

「改行は必然性をもったものであり、勝手に
変更が許されぬ点、マルやテンと少しも
変わらない」(P192)

「紋切型を平気で使う神経になってしまうと、
そのことによる事実の誤りにも気付かなく
なる」(P203)

「紋切型にたよるということは、ことの本質を
見のがす重大な弱点にもつながる」(P205)

「しかし、そういった読者との『甘え』の関係
に期待できない私たちは、素手でたちむか
わなければならない。読んでいただくため
には、全力を傾注して読者を文章の中へ
引きずりこむ必要がある」(P246)

「読者に抵抗感を与えないで、見すかされる
ようなキザな方法をとらないで、なんでも
ないようなフリをして、なんでもないフリをして
いるということさえ気付かれないようにして、
スイと読みすすむことができるような書き
出し。しかも実際には強引に引きずりこむ
魔手を秘めた書き出し。そんな書き出しが
理想だと思う。なかなかむずかしいことだけ
れど」(P256~257)

「職業がら私も多くの新聞記者と接し、その
書くものを読んできて思うに、読ませる文章
を書く記者は、ほとんど例外なく、たいへん
よく取材し、かつ作文技術のすぐれた人だ。
自分自身の体験で考えてみても、どこか
説得力に欠けた部分があるとき、必ずと
いってよいほどそれは取材不足の部分で
あった。具体的材料が足りないと、どうしても
筆力でカバーしようとする。そうすると具体的
事実によらず、観念や理論や説教がナマの
かたちで出てきやすく、それらが先行すれば
するほど説得力を欠き、ウサン臭いものに
なってゆく」(P266~267)

「どんな大論文であれ、どんな大報告であれ
(小論文や小報告や雑文ではなおさら)、具体
的なことを基礎とし、『自分の目』による具体的
な細部と結びついたものでなければ、ほんと
うに説得力ある文章は書けないだろう」(P271~272)

「ルポ=ライターが行くまでもなく、そこに
いる人こそ最も深く事実を知っているので
すから、その人々がペンを持てば一番いい。
そのためには、ほんのちょっとした技術
さえ知っていればいいのです」(P324)