長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

憲法の心に耳をすます~連載4回目

毎月、山口県の医療生協健文会の機関紙「健康のひろば」に
連載している憲法の話、4回目です。

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 これまでの3回で、憲法の自己紹介である3つの条文を
紹介してきました。憲法は私たちの人権をまもるために存
在し、権力担当者に「これを守って仕事をしろ」と命令し
ている最高法規です。

最大の人権侵害は戦争
 
こうした日本国憲法の特徴は、近代社会になってつくら
れた各国の憲法におおむね共通するものです。そのうえに
たち、日本国憲法は徹底した平和主義を採用しています。
憲法前文の平和的生存権、戦争放棄をかかげた9条、さら
に憲法のどこを読んでも軍事や有事に関する規定がありま
せん。これはとてもめずらしいことなのです。
 なぜここまで徹底した平和主義を日本の憲法が採用した
かというと、いうまでもなく、日本が引き起こした侵略戦
争の歴史があります。1931年の満州事変から1945
年の敗戦にいたる15年間、日本の軍隊はアジア各地への
侵略をすすめ、アジアで2000万人以上の命が奪われま
した。その一人ひとりに、名前があり、家族があり、生活
がありました。とんでもない喪失と悲嘆です。日本でも
310万人の命が失われました。自由も、個人の尊厳も、
「お国のため」という理由で踏みにじられました。最大の
人権侵害は国家が引き起こす戦争である。このことを日本
人は加害の面でも被害の面でも、いやというほど味わった
のです。

「日本国民は」で始まる9条
 
憲法は、人権の条文をみても、9条を読んでも、字面だ
けでは、その重みは分かりません。歴史を学ぶことが必要
です。一つひとつの条文に、人びとの苦闘の歴史がつまっ
ています。憲法9条は、数え切れないくらいの悲しみを背
負って誕生したのです。もう2度とこのような痛みを味わ
うことのないよう、政府に戦争できなくさせる。その具体
化が9条です。
 憲法の103ある条文のなかで、「日本国民は」で始ま
る条文は9条だけです。主語が明確なのです。9条は、私
たちの決意を、アジアと世界、戦争でなくなった死者たち、
未来の人びとに届ける言葉なのです。