長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

『独裁体制から民主主義へ』 戦略計画の必要性・・・!

『独裁体制から民主主義へ~権力に対抗するための教科書』
   (ジーン・シャープ著、瀧口範子訳、ちくま学芸文庫、2012年)を読み終える。

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アメリカの非暴力闘争研究者による
独裁政権打倒の戦略と方法論。またその考え方。
なるほどとうなずく内容ばかり。

金曜日、韓国の民主化のたたかいを描いた
映画『1987、ある闘いの真実』に行く予定だけど、
本書の指摘も念頭に観たい。


第6章の「戦略計画の必要性」は、
わが運動界隈に今まさに必要なことであるなと。

「行動を起こす前に戦略的な計画を立てることが
どれだけ大切かを完全に認識している運動家たちは、
実に稀だ。つまり、周到な計画が練られることはほ
とんどないのだ」(78P)

「不運なことに、反体制の民主化運動グループに
属する人々は、戦略的計画の必要性を理解していな
かったり、戦略的に考えることに慣れていない、あ
るいはそう訓練されていないことがよくある」(78P)

「戦略的分析なくして、抵抗勢力側のリーダーは
『次のステップ』が何かを知る由もないだろう。な
ぜなら、勝利を達成するためには、ひとつひとつの
ステップを重ねていかねばならないとしっかり考え
たこともないからだ」(80P)

「戦略的計画を持たないことの結果は、時に強烈
なものとなる。力は消散し、行動は効果を発揮せず、
エネルギーは些末なことに浪費され、利点は活かさ
れず、犠牲は無益なものとなる。戦略的に計画を練
らない民主化勢力は、目標を達成せずに終わるだろ
う」(81P)


訳者の瀧口さんは、
「訳者あとがき」のなかで、こう語っている。

「初めて原著に目を通した時、私は自分の中に非
常に共鳴するものがあるのを不思議に思ったのだが、
それは、シャープ博士の翳りのない明晰さに加えて、
先進国に住むわれわれの日常においても、権力やパ
ワーを含めた『力』とは決して無縁ではいられない、
ということが理由だろう。政治的ばかりでなく社会
的、経済的、また職場で、あるいは家庭内で、われ
われは大小の力の作用の中で暮らしている。家庭内
暴力や学校でのいじめといった問題がある場合はも
ちろんだが、ごく普通に見える生活の中でも、力に
従順してしまった結果、何らかの不服や不愉快、不
幸を味わう結果になったということは数えきれない
くらいある。本書は、そうしたわれわれにも、力の
成り立ちや自分自身に対する意識、そして不条理な
力に対する潜在力を喚起してくれるものであると思
う」(147~148P)