長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

「独創を生み出すには」メモ

以前のブログでメモしたことですが、あらためて

こちらのブログにもメモとして残しておきます。

 

井尻正二さんの『独創の方法』(玉川大学出版部、1976年)

より。

 

読んで思い出しながら、これからも、

学習運動の道で、独創的な仕事をしていきたいと、

あらためて思いました。

 

 

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「独創を生み出すには」をまとめると、こういうことである。

 

①まず実践、である。

 

 「実践を媒介にした科学以前の経験の蓄積が、独創の

 基礎ともなり、底辺ともなるのである。そのために、若い

 年代のときに、豊かな自然や広い社会の経験をつみ、

 この基礎と底辺を拡大するように心がけることが絶対に

 必要である」

 

②すべての基礎は感覚(感性)である。

 

 感性にもいろいろある。

 「感性とは、感覚器官を通して客体を反映し、感覚器官を

 通して反応(作用)する思惟能力である」

 この種の感性は、遺伝的、自然的基礎に由来する。

 こちらは、どちらかといえば、受動的な感性である。

 

 第2に、

 「社会的な、人間的な感性」というものがある。

 こちらは、能動的な感性といえる。

 「社会を構成し、生産労働をする人間に、歴史的に

 きずきあげられてきた感受能力」ということ。

 

 これらの感性は、科学の基礎となり、

 独創の契機となる。

 そして、これらの感性は、「鍛える」ことができる。

 

③しごきに耐える。

 

 「私は独創力も人間的な努力で身につけることが

 できると確信している。そしてその第一は、『しごき

 に耐えること』、すなわち『訓練をいとわないこと』に

 あると思われる」

 

 独創につながる訓練の意義について。

 「科学にしても、芸術にしても、はたまたどんな職業に

 しても、その道の先輩たちがきずいてきた成果を伝承

 することなしには、何事も成立しないし、発展しない、

 ということである。そして、このような先人がもつ知識・

 技術・蓄積などを体得するためには、やはりそれ相当

 の訓練が必要である」

 「このような訓練によって、私たちの思考と反応が条件

 づけられる」

 

④量から質へ。

 

 「自分の専攻するテーマに関係のある資料を、標本で

 も、文献でもなんでもいい徹底的にあさって勉強するこ

 とは、まさに量から質への転化として、独創をよびおこ

 すゆえんである」

 

 「こうした資料の蓄積は、頭の中でも行うことが必要だ

 と思われる。それには、できるだけたくさんの文献を

 読むことと、四六時中、問題のテーマを考え続けること

 -たえず、そのテーマに関心をよせていること-が大

 切になってくる」

 

⑤否定的精神。

 

 「実践の問題にしろ、感性の問題にしろ、しごきの問題

 にしろ、その背後に“なにくそ”という否定的精神がそな

 わっていなければ、その機能を十分に発揮することは

 できないと思う」

 

 「私は否定的精神の『否定』という言葉の意味をつぎの

 ように解している。(ⅰ)まず否定はたんなる破壊やもの

 ごとを無にするような否定ではなく、制限つきの否定であ

 る。(ⅱ)つぎにそれは、プラスの側面を保持する(肯定

 する)という否定でなくてはならない。(ⅲ)そして最後に、

 その否定によって、ものごとがその命脈にそって一段と

 発展するような否定でなくてはならない、ということである」

 

⑥根本は思想である。

 

 「思想というものは、当面するすべての事件や経験を、

 統一的に、体系的に考え、かつ解決していく力の源で

 あって、このような力が逆流すると、新しい組織づくり、

 新しい発掘法の考案、その結果としての新しい発見、

 新しい仮説の発想といったぐあいに、すべての独創に

 結びつくものである」

 

 

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