長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

民主的な職場づくり(レジュメ前半)

先日(24日)、広島の民医連の
初級職員研修会で、
「育つこと、育てること、育ち合うこと~民主的な職場づくり」
というテーマで講義をする機会がありました。

そのレジュメ前半部分です。
(後半は明日掲載)

一。育つ、とはどういうことだろう
 1。変化する、ということ
  ◇野菜が育つ、子どもの成長、人として成熟する・・・
   *あるものが、あるものでありながらそれまでの
状態から変化すること
   *人の場合、「~ができるようになる」以外にも、
    たくさんの「力」をつけること。
    ・洞察力、感性、問題にきづく力、社会性、受容力、聴く力・・・

 2。育つ主体と環境
  ◇種を植えれば芽が出、やがて成長する。
これは必然であり、その主体内部の力。
  ◇しかし、適切な土壌や水分、環境を整えなければ、
枯れてしまう危険も。
   *育つ主体はあくまで自分。自分にその可能性がある。内的な力。
   *あわせて、外的要因も大事。
「たまたま」(偶然)をたくさん準備する。
    →出会い、学び、
めあて(使命や動機、ピカピカ光る背中)、仲間

  【岡山県民医連平和ゼミナールでの経験】

 3。対象(自分、他者、職場、社会、政治など)の変化をとらえるための心得
  ◇対象はつねに動いている(動いていないものはない)
   *「どうせ・・・」というものの見方とのたたかい
   *「どうせ」と先取られる結果は、必ず否定的・消極的
    ・「どうせあの人は変わらない」「どうせ自分はこんなもの」
    ・「どうせやってもムダ」「どうせうまくいかない」
「どうせ世の中」
   *「どうしたら」「どのように」の問いをしぼませる
    ・どうせ、と思えば、なにもしなくてよいので、
ある意味ラクになる。
   *「固定」「静止」は、対象・ものごとの「一側面・要素」ではある
    ・一直線の変化や前進などない。停滞・後退をふくみながら、
うねうねと進むのが現実。ときには激しい逆流もふくみつつ、
ものごとは動いて いく。
    ・ものごとを断面的にきりとって、その瞬間において黒白を
つけることはできるが、変化というのは、黒も白もふくみつ
つ続くものであり、そ の中途半端さを「見極める」
「受容する」力を身につけることも大事。
  ◇変化にも法則性がある
   ①量的変化と質的変化。コツコツとした、目立たない変化の
積み重ねによって、目に見える質的変化が準備される。
地道に。地味に。練習。鍛え る。磨く。継続。繰り返し。
目的意識的に量を準備する。学習も、感性も、知識や技術も。
民医連的力も。 【学習会などでの経験】

   ②肯定をふくんだ否定。否定を通じてものごとは発展
していく。ただし、ご破算型、全面否定でない。
ダメだしのしかた。伸ばすために評価す る。
うねうねとした変化を受容する力、見極める力。

   ③矛盾が発展の原動力。ひとつの物事のなかに、
相対立する傾向や要素がぶつかりあっている。
たたかっている。それを矛盾という。ぶつかりあいの
なかで、ものごとは動いていく。相反することが併存
するのが現実。

    *自分のなかに「矛盾」をつくる
     ・「こうありたい自分」と「いまの自分」とのぶつかりあい
     ・「めあて」になる人をつくる。「目標」と
「そのための計画」をつくる。
     ・ストレスは自分を成長させる糧にもなる
    *目標がなければ、矛盾は生じない。矛盾が次の発展の契機に。

「子どもは、そんなに簡単にひとすじなわでいくもの
ではありません。私たちが、いいつけたり注意したり
すれば、すっと変わってくれる、というものではない
のです。(略)子ども自身を成長させるものは、子ども
自身の内部に起こる矛盾です。子どもの成長過程という
のは自分のなかに、何かある目 当てをつかんでその目当
てのためにがんばろうとする自分と、『めんどくせえや』
と元にもどろうとする自分、そういう自分の内部の矛盾・
葛藤の長い過程なのです。新しい自分になろうと努力し
たり、古い自分が顔を出して新しくなろうとする自分を
とりくずしたり、そういうことをくり返す長い過程です。
     子ども自身のなかに、自分自身が二重にうつること、目
当てが生まれ自分の人格が二重うつしになること、これが
子どもたちの成長・発達の 原動力です。私たちの仕事は、
とりもなおさず、この二重写しになることを促してやる
ことなのです。目当てが生まれ自分が二重写しになること
は子ど もたちにとって苦しく、不安なことでもあるわけです。
      そういうふうになれるだろうか、ならなくてはいけない
のだ、なれるだろうか、やっぱりだめだ、そういうことの
くり返しが子どもたちの なかに起こってくるのは当然のこ
となのです。子どもの内部にいまどんな矛盾・葛藤が生まれ、
どのような方向に向かって進もうとしているのか、子ども
たちの“もがき”のように見える姿のなかからも、その核心を
つかむ努力が私たちに必要なのです」
(三上満『眠れぬ夜の教師のために』大月文庫)

  ◇木も森も見る(全体のなかで部分をみる)
   *つながりの把握
*あるものが「ある(いる)」ということは、その存在の
質を規定したり、その存在を支えたり、影響を与えている
「他のもの」があるということ。
   *個人も、職場も、さまざまな課題や問題も、全体性の
なかで把握する努力

   【生活と労働から疾病をとらえる、という民医連のものの見方】

    「通常、医療現場では、患者の病状、疾患別(臓器別
という名称もある)に病棟が編成されている。人間を
切り取って、部分で見ることがごく 普通に行われている。
気をつけていても、それが日常的であればいつの間にか
『パーツ』としてとらえるようになる。経験を重ねれば
重ねるほど、それ は『当たり前』になる」
     (柳田邦男・陣田泰子・佐藤紀子編集
『その先の看護を変える気づき
―学びつづけるナースたち』医学書院)

4。育つ、ということの目的は
  ◇自分のため、職場のため、患者さんや利用者さんのため、
社会のため
   *どれも良し。どれもつながっている。役立ち。喜び。
精神的健康。
  ◇職業的成長、人間的成長、主権者としての成長
・・・成長は多面的で全体的。

 5。育つこと、育てること、育ち合うこと
  ◇育つこと
   *主体は自分。でもつながりのなかで。さまざまな環境のなかで。
   *自然発生的成長(枠組み内での伸び)と、
目的意識的成長(矛盾をつくる)
   *目標と計画。
他者からの適切な評価(自己の成長に関心をもたれること)。
   *自惚れることも大事(ただしそれをあけっぴろげにしない)
    「自分に惚れ、自分に自信をつける。そのことが、
次のステップに猛然と駆け上がるエネルギーとなるのである」
(中沢正夫『ストレス「善 玉」論』岩波現代文庫)

  ◇育てること
   *教えるということは、つまり学ぶこと。工夫し続ける。
量を準備する。動機づけ。
   *他者を育てることで、自分自身がさらに育つ。
喜びや楽しさ。幸福感。
   *育てる人以上に、自分が対象にたいして学び憧れ続けている。
教育欲。
   *聴くこと。質問する。お互いが高まる。
   *最終目標は、相手が自分から離れていくこと。
自分で自分を伸ばす力がつく。

  ◇育ち合うこと
   *構成員全体の多様さが生き、学びあい、
高まりあい、支えあいの状態
   *最高の状態だが、この状態をつくるのはもっとも難しい
(自分以外は他人だから)