きのう(13日)は11時より岡山市内某所にて
民医連中国四国地協・教育担当者研修交流集会という
長い名前の企画で講師仕事でした。
約40名の参加でした。
中国・四国地方の民医連のみなさんには、
職員研修など、たいへんお世話になっております。
この日は、「人間発達のできる職場づくり」がテーマ。
前半ものの見方の課題、
後半育ちあう職場づくりの問題提起しました。
後半のレジュメのみご紹介します。
四。育ちあう職場づくりのために
1。教育ということ
◇どんな組織でも、人間の集まりである以上、「教育」という
営みがある。教える、育ちあう、学びあう、高まりあう。そ
れなしには組織は生き生きしないし、理念や目標の達成はお
ぼつかない。でも教育それ自体が目的にはならない。すぐに
効果もでない。じっくりの姿勢。
2。育つ主体と環境
◇種を植えれば芽が出、やがて成長する。これは必然であり、
その主体内部の力。
◇しかし、適切な土壌や水分、環境を整えなければ、枯れて
しまう危険も。
*育つ主体は相手。内的な力。民医連職員は民医連職員として
育つ力がある。
*あわせて、外的要因も大事。「きっかけ」「たまたま」(偶然)を
たくさん準備する。
【岡山県民医連「平和ゼミナール」での経験】
◇2013年に第1回の平和ゼミナールが開催された
◇14名参加(うち青年職員12名)→うち事務局5名+長久で企画・準備
◇企画段階から関ってほしいということで、1月ぐらいから参加・サポート
◇第1回のカリキュラム流れ(第2回からは全10回)
①記念講演(情勢ふまえ)②戦争と人権(長久)③課題図書を独習
交流(個人発表)④自衛隊・日本原駐屯地フィールドワーク⑤沖縄
戦ミニ講義、『標的の村』⑥沖縄FW(2泊3日)⑦沖縄FWふりか
えり⑧グループごとに学びを形に⑨個人ごとの卒業発表
◇大事にしたこと
*1回1回の学びの場への問題意識をつくる
(裏カリキュラム=事前課題の重視)
*変化(成長)を起こそう思ったら、目的意識的に量をきちんと準備する
*書くこと、書きあうこと。考えの整理と発見、言葉をにぎる。
書いたものを共有する。
・事前課題、毎回の感想文、卒業文集など、「書かせる」ことに
執着する
*討論をかならずすること―集団学習の長所を最大限生かす
◇ゼミ生の変化―きっかけは、「たまたま」「半強制」でもよい
*社会の現実にぶつからせてあげる。不条理。憤り。おかしさ。
原動力に。
*問題意識を育て、議論する場が必要。集会・結社の自由の
大事さ(憲法21条)。
*同じ思いをもつ人との出会い。高まりあう仲間集団。ふんばる力に。
*ゼミ生の変化にまわりがびっくり。毎年開催に方針変更。
*第1回平和ゼミ生の自主企画で、『標的の村』自主上映会を7月に。
約300名参加。
*ただ事業所によってゼミ生派遣の温度差も…
3。対象(自分、他者、職場、社会、政治など)の変化をとらえる
ための心得
◇変化にも法則性がある(弁証法)
①量的変化と質的変化。コツコツとした、目立たない変化の積み
重ねによって、目に見える質的変化が準備される。地道に。地
味に。練習メニュー。鍛える。磨く。継続。繰り返し。目的意
識的に量を準備する。
②肯定をふくんだ否定。否定を通じてものごとは発展していく。
ダメだし必要。ただし、ご破算型・全面否定でなく。理解しつ
つ、ダメだし。伸ばすために評価する。うねうねとした変化を
受容する力、見極める力。良し悪しあわせ持ちながら変化。
③矛盾が発展の原動力。ひとつの物事のなかに、相対立する傾向
や要素がぶつかりあっている。たたかっている。それを矛盾と
いう。ぶつかりあいのなかで、ものごとは動いていく。相反す
ることが併存するのが現実。
*「矛盾」をもつ―「こうありたい自分」と「いまの自分」との
ぶつかりあい
*「めあて」になる事柄、「めあて」になる人をつくる。自己
成長の目標と計画をもつ。
4。育てる側としての構え
◇主体はその人。でもつながりのなかで。さまざまな環境、
きっかけ、たまたま。
◇理解されること。他者からの適切な評価(自己の成長に関心を
もたれること)。
◇自惚れることも大事(ただしそれをあけっぴろげにしない)
*「自分に惚れ、自分に自信をつける。そのことが、次のステップ
に猛然と駆け上がるエネルギーとなるのである」
(中沢正夫『ストレス「善玉」論』岩波現代文庫)
◇目の前の人(あるいは職場)の発達課題・成長課題を
―「種にもいろいろあります」
◇教えるということは、つまり学ぶこと。教えるほうも不完全。
模索、工夫し続ける。
*問題意識を聞く。場をつくる。議論する。納得を引き出す。
信頼される。尊敬される。
■『学習する組織-現場に変化のタネをまく』
(高間邦男、光文社新書、2005年)
*著者の高間氏が、NTT東日本の法人営業本部の役員に、イン
タビューしたときのこと。「戦略は何ですか」と聞いたら、
「学習機会をつくる」というのが答えの一つとして返ってた。
「学習機会とは何ですか」とふたたび聞いたところ、その役員は、
「それはピカピカ光る背中を持つ人間の周りをウロウロできる
ことですよ。しかし問題は、ピカピカ光る背中を持つ人間が法
人営業に20人しかいないことかな」と言ったそうです。
著者はその答えに驚かされて、また納得し、こう書いています。
「人は自分の接する社会、つまり周囲の人や本、インターネッ
ト、様々な経験などから主体的に学習する。その中でも他者と
の相互作用から一番多くを学ぶと私は思う」「今の若い人たち
は、子供の時分から学校を出るまでの成長過程で接する人物の
数が、昔よりも少ない傾向にある。・・・その結果、客観主義
による勉強はしてきたが、人々との相互作用で行われる社会構
成的な学習機会が少ないので、社会性が低くなる傾向があるの
ではないだろうか」「問題は、ピカピカ光る背中を持つ人間に
運がよくないとめぐり合えないことである」
*つまりどんな人と一緒に働いているか、出会うか、活動できるか
*他者を育てることで、自分自身がさらに育つ。喜びや楽しさ。
働きかけ⇔理解の前進。
◇若い世代が背負ってきた「時代の圧力」を理解の前提に。世代間
の違いを楽しむ姿勢。
◇育てる人以上に、自分が自分の成長に貪欲か。自己投資しているか。
5。育ちあう場の前提条件は、民主主義(表現の自由が大事)
◇自分の言葉をもって、議論や意思決定に参画すること。
◇しかし、職場のなかにはさまざまな「力」が働いている
(そしてそれはなくせない)
*上司と部下。役職とそうでないひと。先輩と後輩。年齢。知識の
あるなし。経験のあるなし。雇用関係。ジェンダー。医師と看護
師など。
*強者と弱者、声の大きいひと小さいひとがかならずいる、という
ことを認識する
*人間集団の力関係を完全にフラットにすることはできない
(家庭でも職場でも)
*「力」をもっている側の姿勢(民主主義)が問われる。日頃の
コミュニケーション大事。
◇「~しあう」関係性(積み重ねにより培われる)
*学びあう、話しあう、高まりあう、認めあう、気づきあう、
支えあう、助けあう…。
*職場のなかの関係性がよくなると、自己を否定される恐れが
なくなるので、その場が安全になる。様々な異なる意見が提
示される。議論が生まれる。
*民主主義は疲れるけど、「私」「私たち」が変わるプロセス。
職場と社会を変える力に。
◇成長するのは職場のなかだけではない(外へ外へ)。職場のなかの
教育を前提としつつ。
*労働組合は、育ちあいのとても大切な舞台