長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

「学びあう場のつくり方」(長野集会レジュメ)

(とりあえず、長野集会での講演レジュメをアップします)


一。学習運動と私
 
1。新しい視野の獲得―私のあゆみとも重ねあわせて

   「“労働者としての医師の働き方”という、たんに“医師とし
   てどうなりたいか”という考えではない考え方ができて新
   鮮でした」(医学生さん感想)

  ◇労働者が「労働者のことば」をにぎること。

   *どんな言葉を持っているか。世界の認識が違ってくる。

   *長久が20歳のとき、岡山労働学校に通っていていち
    ばん印象に残ったのは「搾取」の話だった。搾取は学
    ばないと見えない。学ぶと世界を見る自分の目が変わる!

    「学習は、その知識、概念が持っている意味や価値を丁
    寧に解明し、既習の知識や認識の体系に対する揺さぶり
    や組み替えをもたらしつつ、まさにそのネットワークの
    組み替えをともなって進むとき、すなわち認識が組み替
    わるとか、いままでの考えが変わるとか、わからなかっ
    たものが見えるようになるとか、自分の感性や感情ある
    いは価値観が組み替えられるなどの内的な構造の変化、
    主体の組み替えをともなって進むとき、印象的かつ感動
    的なものとして実現される」
      (佐貫浩『学力と新自由主義』大月書店、2009年)

   *たとえば「労働者」という自分自身を表す言葉。

   *「団結する」「連帯する」という言葉を、労働者は自分
    たちの生き方としても使う。もちろん労働者だけの専売
    特許ではないけれど、労働者が人間らしく生きるために
    欠かせない言葉。そういう道が見えてくる。選択肢がふ
    える。自由になる。

    「世界をあるがままのゆたかさでとらえうるような、そ
    んな目を私たちはもちたい。ゆがんだ眼鏡は、世界をゆ
    がんで見せる。私たちは、ちゃんとした眼鏡がほしい。
    哲学への要求がそこからはじまる。・・・ちゃんとした
    眼鏡をかけたことのある人は知っていよう、はじめてそ
    れをかけたときのことを。それまで、木の葉はぼうっと
    かすんで見えていた。木とはそんなものだと思っていた。
    が、眼鏡をかけたとたんに、木の葉の一枚一枚が、した
    たる緑とあざやかな輪郭をもって目にとびこんできた。
    世界がそのあるがままの新鮮さで私たちに迫ってくる、
    そんな眼鏡を求めて、私たちは哲学にむかうのである」
      (高田求『人間の未来への哲学』青木書店、1977年)

 2。学習教育運動の学習内容はどのようなものか
  ◇当面するたたかいの課題、情勢をきりひらくための学習
   *政治・経済情勢、憲法、安全保障、雇用問題、税制、
    社会保障、国際関係・・・
  ◇労働組合の組織強化のための学習(担い手育成)
   *労働組合の基礎的学習、労働法や権利学習
  ◇働くこと、生きること、人間らしさなど、根源的な問い
   かけにこたえる学習
   *いわゆる、そもそも論。社会とは。人間とは。労働者とは。人権とは。
  ◇科学的社会主義の基礎的理論(系統的・全体的に学びたい)
   *マルクスとエンゲルスが基礎づけ、発展してきた社会変革の
    ための思想と理論
   ・哲学―考える力。そもそもを問う。事実をたしかめる姿勢。
    現象から本質へ。結果から原因へ。部分から全体へ。変化の
    法則性。過程としてとらえる。木も森も。
   ・経済学―商品、貨幣、労働力、賃金、資本、搾取。搾取強化。
    富の蓄積と貧困。資本主義の歴史。その矛盾。労働者階級の
    力への認識。
   ・階級闘争の理論(社会発展の理論)―社会を動かす原動力。
    組織の力。労働運動。政治に強くなる。変革の道すじ。処方
    せんとその方法を具体的に。

  ◇歴史的につくられてきた学習運動の具体的形態
   *『学習の友』、勤労者通信大学、労働学校、講座やセミナー、
    学習サークルなど。
   *大事なことは、いずれも集団学習を組織しながら運動を
    広げるということ

    「自分の可能性をおさえつけ、自分に自信をなくさせてき
    たものの正体をあきらかにすること。それによって自分の
    可能性、自分の力、自分の価値を発見し、それを思いきり
    伸ばす素地をやしなうこと。それがほんとうの学習です」
     (勤労者通信大学編『あなたの疑問に答える 哲学教室』
                     学習の友社、1973年)

二。学習運動と個人の尊厳
 
1。「人間の尊厳」と「個人の尊厳」

    「日本国憲法は『個人の尊厳』にコミットした。これに対
    し、ドイツ基本法は『人間の尊厳』にコミットしている。
    人間の尊厳という場合、人間以外のものとの対比を含意す
    るから、人間の尊厳を侵してはならないという基本法の命
    令は、人間を非人間的に扱ってはならないこと、人間とし
    てふさわしい扱いをすべきことを意味する。ナチスによる
    非人間的な扱いの経験が背景にある。これに対し、個人の
    尊厳は、個人と全体(社会・集団)との関係を頭に置いた
    観念であり、全体を構成する個々人に価値の根源をみる思
    想を表現している。この言葉が、特に結婚・家族に関する
    原則を定めた24条で用いられたのは、偶然ではない。戦前
    には、社会における最も基礎的な集団である家族関係が、
    個人より集団(家族)を重視する価値観を基礎に形成され
    ていた。この反省が背景となっているのである。このよう
    に、個人の尊厳と人間の尊厳とは、直接的な問題意識を異
    にする。とはいえ、個人の尊厳は、個人を全体の犠牲にす
    ることを禁ずるのみならず、非人間的に扱うことも当然に
    禁じていると解するべきであるし、また、人間の尊厳も、
    個々の人間を全体の犠牲にすることを禁じているはずであ
    るから、その意味で両者の価値観に基本的な差異があるわ
    けではない」
   (高橋和之『立憲主義と日本国憲法 第3版』有斐閣、2013年)

  ◇個人の尊厳・人間の尊厳を乱暴にふみにじる安倍政権
   *違う意見や考えの人間とは交わらないし排除する、弾圧と抑圧、
    嘘と隠蔽・・・
   *民主主義の場づくり
     ―安倍政権がつくりだした「分断社会」への対峙方法として

 2。個人の尊厳を生かした草の根の場づくりを
  ◇「個人」とは何か―人権の担い手・使い手としての人という意味
  ◇最近講師でいった、ある職場の研修会での経験・・・
   *一方的で、受け身。「全体」のなかで「個」が生きていない。
    数という抽象に。

  ◇身近な人間関係のなかで、憲法的価値を育て、取り戻す

   *あなたがこの場にいることに、価値や意味がある

   *対話や交流が生まれる場を草の根でつくる。他者との対話を
    通じて、私たちは自分の考えを相対化できるし、一致すると
    ころも見つけ出すことができる。自分や仲間の育ちをうなが
    すのも、「私の意見を表明する」という過程を通じて。

  ◇学びあう場(学習会)のなかでも
   *講師や主催者に学習会はおまかせではなく、参加者一人ひと
    りが学びの場づくりに参加してもらう仕掛けをつくる。受け
    身やお客さんでなく、参画してもらう。
   *自らの頭で考え、対話し、新しい視野をひらき、仲間とつな
    がっていく。それが個人の尊厳がうたわれている状況のもと
    での、ふさわしい学習会のあり方。なにより、そのほうが楽
    しい。楽しいは、継続の力に。
   *とくに若い人は、そうした場の積み重ねが民主主義的な
    トレーニングにもなる。

  ◇学習運動の学びの場も、憲法的価値が実感できるようなスタイルに


三。個人の尊厳と学びあう場のつくり方-具体的に考えてみる
 
1。今年1月に開催された「労働学校交流会2018in倉敷」での
   レジュメより
  ◇労働学校の具体的活動―総合力が問われる。技術交流が大事。

   (1月にブログに載せたのでここは省略します)

 2。学びあう人たち(集団)の関係性の質が、学びの質に影響をおよぼす
  ◇学習会導入部の大事さ(どんな人が来ているの? 交流時間をつくる)

  ◇1人ひとりに参加してもらう(長久の実践例)

 3。考えてみよう
  ◇たとえば学習会で、講師の話を受けてのグループ感想交流。
   *参加者は21人。さて、何人グループに分ける?
   (人数のほかにも考える要素はたくさんありますが、あえて除外)

    ①11人+10人の、2グループ
    ②7人+7人+7人の、3グループ
    ③6人+5人+5人+5人の、4グループ
    ④5人+4人+4人+4人+4人の、5グループ

  ◇空間配置(イスと机をどう並べるか)。
   講師との距離。会場の明るさ清潔さ。

  ◇いい感想文用紙って?

  ◇学習会のタイムスケジュールを考えてみよう!
   ≪設定≫
   *○○学習協が主催する「憲法cafe」
   *対象:労働組合や地域の若い人たち
   *目的:憲法を考えてもらうきっかけに。
   *20名集まったと仮定。職種バラバラ。
   *時間は木曜日の18:30~20:30。
   *講師は、わかりやすい話で定評のある
    若手女性弁護士に頼むことができた。

   ■小手先の問題ではない。根底にある思想の具現化。

 3。私たちの力が育ちあう、学びの場をつくろう!
  ◇いつの時代でも、私たちは岐路にある。問われている。
   未来を引きよせたい。
  ◇あきらめないことは、あきらめることより、ずっと大変
   *つながりあうこと。1つひとつの集まりの場を、高まりあいの場に。
  ◇憲法的価値を身につけた活動家になろう!
   *憲法21条には、集会・結社・言論・出版・その他いっさいの
    表現の自由がうたわれている。集まる、話しあう、書きあう、
    伝えあいを継続する。
   *1人ひとりが人間らしく生きていくうえで不可欠な自由である
    と同時に、集団や社会に民主主義を浸透させ、私たちの力を育
    てあうために欠かせない人権。
   *民主主義を、それぞれの日常の場にしみ込ませていく努力が
    必要。そうした問題意識、思想と技術をもった活動家になろう。

さいごに